小悪魔うさぎの発情期

松丹子

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本編

01

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「やだぁ~もう酔っちゃったぁ」

 理都子はため息混じりに言って、右隣の男にしなだれかかる。
 鍛えられた胸板に手を這わせ、シャツ越しにその肉質を堪能した。

「ん~、たくましー」
「ずるいなぁ村瀬」
「えー、じゃあくまちゃんもしてあげるー」

 左側の男の腕を引き寄せ、豊満な胸で挟み込むようにして見上げると、男の喉仏がゴクリと動いたのが見えた。
 内心の舌なめずりをひた隠し、酔ったふりでご機嫌に笑う。

「はぁー。二人とも、お酒、強いんだねぇ」

 こつりと肩に頭を乗せると、右側の男が手を伸ばしてきた。

「可愛いね、りっちゃん」
「んふふ。ありがとー」

 頭を撫でる手を絡め取るように、指先を絡めて手をつなぐ。

「……そろそろ、家、送ろうか?」

 控えめに気遣う声は、左上から聞こえた。
 理都子はやだやだとかぶりを振る。

「もっと一緒にいたいー」

 右手と左手を、それぞれ違う男の手に這わせて。
 潤んだ瞳で男を見上げる。
 男が互いに視線を交わし、再び理都子を見た。
 その目に明らかな欲情を見て、理都子は内心ほくそ笑む。
 が、表面上はいたいけな女子を装った。
 わずかに目を伏せ、物憂げな顔を作る。

「私ね、飲み会って賑やかで好きなんだけど、ちょっと苦手なところもあるんだぁ」
「苦手なところ?」
「お酒が苦手とか?」
「ううん、そうじゃなくて」

 優しい声で気遣う男たちに、理都子は首を振って答える。

「飲み会の後に一人になると、静かすぎて寂しくなるの」

 丸い目を向けると、男たちは頬を染めて目をさまよわせた。

「……じゃあ、一緒にいてあげるよ」
「ほんとー?」
「うん……オールしちゃう?」
「うーん、それもいいけど……」

 理都子は控えめにうつむいて、

「汗かいちゃったから、シャワー浴びたいな」

 触れた男の鍛えられた腕が、それぞれぴくりと動いて、理都子は勝利を確信した。

 * * *

 鍛えられた身体の男たちが、理都子の身体を愛でる。
 理都子の白い肌に、日に焼けた彼らの肌はよく映えた。
 男たちは消防士だ。大学時代の友人の弟が消防士になった、その先輩だそうだ。
 友人たちは、既に一次会で帰路についた。3対3の飲み会で、男のひとりはそれを送ると言って去った。
 一方の理都子は、二人の男をイタダくことに成功したというわけだ。
 出会ったその日に三人で――
 常識と良識のある女なら、こんな選択はありえないに違いない。

「っぁ」

 理都子の喉から甘い声が漏れる。
 男のひとりが豊かな胸にむしゃぶりつき、もうひとりは理都子の秘部を攻める。

「ぁ、は、ぁん、ぁあ……」

 挙がる声は半ば本気で半ば演技だ。
 高ぶる気持ちはその愛撫のせいだけではなかった。
 それなりに酒を勧め、彼らの理性を揺さぶりに揺さぶった理都子の言動は、もう彼らの思考を溶かしている。
 本能のままに、彼らは理都子の身体を貪っているーー優越感に似た、征服感。

「はぁ、ん……あ、気持ちい……」

 節くれ立った指先が、理都子の奥を暴く。ぐりぐりと攻められて声をあげ、理都子は腰を振る。

「やぁ、も、ちょうだい……」
「エロいなぁ、りっちゃん」
「やん」

 じゅる、ぶちゅ、と水音が響く。その卑猥な音が鼓膜を侵す。
 道理。常識。良識。
 そんなもの、どうでもいいーーと理都子の本能が叫ぶ。

「はぁ、ぁん、もうちょうだいよぉ」
「可愛いよ」

 一方の男が理都子にキスを落とす。唇を甘く噛み、吸い上げる。理都子もそれに応えて両手をその首へ伸ばした。
 その瞬間、

「んぅっ」

 理都子の中心に男のそれが突き刺さる。熱と質量に理都子は空気を吸おうとしたが、唇はあっけなくもう一方の男に塞がれた。

「ん、ん、んん、んんん」
「は、はぁ、は、ぁあ、いい、すげぇいい」

 キスと胸への愛撫を続ける男と、理都子の腿を持ち上げて中心を貫く男。
 理都子の脳が悦びにぐらぐらと揺れる。
 女にはない筋肉の硬さが、ますます理都子を悦ばせる。

(最っ、高……)

 半ば恍惚としてくる感覚。髪の毛からつま先まで、すべてが解放されたような高揚。それは男のどんな粗雑な動きも、甘い痺れに変えてくれる。

「はぁ、ぁあん、あん、や」

 男の突き上げる動きに合わせてゆさゆさと揺れる胸の前に、もう一人の男のそそり立ったそれが翳される。
 上から垂らされた透明な液体が、とろりと男の屹立を伝い、受け止め切れずに胸へと滴った。
 肌を伝う冷たさが、身体にまた甘い痺れをもたらす。
 理都子は男の希望を察して、両腕で胸を引き寄せた。
 男は迷わず、理都子の寄せられた胸に自身を滑り込ませた。

「ぁ、あ、あ、はぁ、あっ、ぅんっ……」

 ぐちゃぐちゃとたつ水音はさらに激しさを増していく。二人の男の息がそれぞれに粗くなり、理都子の耳を卑猥な音で満たしていく。
 求めている。求められている。心の奥底から。いや、身体の底から。
 互いに互いを求め、理都子の柔らかい身体と、彼らの鍛えられた身体が重なり、互いを侵し、溶かしていく。
 このどろどろした世界が、理都子は好きだ。
 生と性。汗と精液にまみれた、この時間こそ、理都子が生きている証ーー

「あっ、あ、あーー」
「っ、やば、あ、くっ、口、かし、」
「い、よ、ぅむっ……」

 男が理都子の後ろ頭をつかみ、自らの熱で理都子の喉を突く。

「おま、くそ、声、聞こえねぇだろっ」
「だ、って、はぁ、ああ、あ、やばい、りっ、うま、すぎっぁーー」

 理都子の口の中に吐精して、一人の男が力を失う。それを押しのけるように横に押し、もう一人の男が理都子の脚を肩まで抱え上げた。

「はぁ、は、ぁ、りっちゃん、エロい、すげぇ、可愛い、よ」
「あり、がと、んっ、ぁあ、くまちゃんも、すご、いぃ……」

 本心なのかお愛想なのか、本人にすら分からない。それでも互いに燃えたぎっているのは間違いなく、理都子は笑いそうになる。

(ーー3Pが初めてだから、燃えてるんでしょ)

 口をつく喘ぎ声をふさぐように、吐精して息を整えていた男がまた理都子の唇を唇でふさぐ。
 互いに理都子を取り合うかのように、男たちは理都子を求める。

(ふふ、可愛い)

 思いながら男に応え、

「あ、あ、は、ぁ、あっーー!」
「く、ふっ、ぅーー」

 理都子の中で、もう一人の男が果てた。
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