朝羽~ときわ~

川瀬 水春

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名を聴いて

夕焼けの日

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次の日の放課後、部活が無いから一緒に帰る予定だった凛花に、帰りに寄りたいところがあると言った。

快くOKしてくれた凛花を連れ、昨日歩いた道を辿る。今日は昨日と違い、美しい茜色の空だ。

「沙耶、神社なんかで何するの?」
神社の前で立ち止まった私に、凛花は怪訝そうな顔をした。当たり前だろう。女子高校生が下校中に寄るような場所ではない。

「昨日傘を借りたから、返しに来たの」
「傘を?神社に?」
益々不審そうな顔になる凛花に、思わず吹き出してしまった。
「うん、そうなの」

ちょっと待っててと告げ、早足で石段を上っていくと、昨日と少しも変わらぬ姿の社があった。
賽銭箱の隣にしゃがみ、出来るだけ丁寧に傘を置いた。
「ありがとうございました。とても助かりました」
誰かが聞いているとは思わないけれど、返すときは絶対にこう言おうと決めていた。
それから、もう一つ。
鞄の一番上に乗せておいた梔子の花を、傘の上に置いた。
「庭で咲いていたから、持ってきたんです」
ふわりと鼻をくすぐる甘い匂いは、何だか家の庭で嗅ぐよりも、良い匂いに感じられた。

「沙耶ー。まだー?」
石段の下から聞こえた声に、凛花を待たせていることを思い出し、慌てて石段を駆け下りた。

「良いことでもあったの?」
待っていた凛花が私の顔を覗き込んできた。
「凄く楽しそうな顔してるよ、沙耶」


その理由を話したら、凛花はどんな顔をするんだろう。
想像したら、また頬が緩んできた。
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