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2章 陰陽騒乱編
13 部活を作りますわ
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「陰陽道研究会⁈」
琥太郎は思わず聞き返す。
「そこ!静かにしなさい。ホームルームを始めますよ」
いつの間にか教卓にいた若菜先生から注意を受け、琥太郎はやむなく話を中断した。
「さすが若菜ちゃん、かっこいー!」
とクラスから謎の歓声が上がる。
「先生をあまりからかわないでください!」
ポニーテールを揺らしながら言う先生は、クラスメイトからいつの間にか愛されキャラとして認定されているようだ。
「若菜先生って、いいよな」
「あの健康そうな感じがいいな」
一部男子生徒の中には本気で恋していそうな者もチラホラいるらしい。
「詳しいことは後で話す」
と賀茂が小声で言ってくる。
「了解」
色々と気になることはあるが、琥太郎はやむなく答えた。
午前の授業も終わり、やっと昼休みだ。琥太郎は大きく伸びをすると、自然とあくびが出てきた。
「おいおい、お前さっきまで寝てたのにまたあくびかよ」
と賀茂がツッコミを入れてくる。
「春はあったかいからなぁ、なんだか眠くなるんだ」
「そんな調子だとゴールデンウィーク明けの中間テストは危険だぞ」
「お前みたいに成績の良いやつは余裕でいいよなあ」
隣の席の賀茂は、授業の小テストなどは常に100点で、間違えているのを見たことがない。小さい頃から陰陽道を叩き込まれた賀茂にとっては、高校の授業は楽に思えるらしい。
「妖の王が赤点じゃあ格好つかないだろ。そんなんじゃ仇打ちどころじゃなくなるぞ」
「仕方ないだろー、お前が勉強してる間に、俺は山で師匠と修行して過ごしてたんだって」
そういえば育ての親代わりの天狗の師匠は元気にしてるかなあなどと呑気に考えていると、相変わらず女子から大人気の柚が今日も囲まれていた。
「柚ちゃん、頭に耳生えてる!」
聞こえてきた声に思わず飲んでいた缶コーヒーを噴き出しそうになる。慌てて目をやると、柚の頭にモフモフとした白い耳が出てきていた。
「あちゃー、柚ちゃん油断したなあ」
と賀茂はポリポリと頭をかいている。
「かわいいー!なにそれ、飾り?」
「いえいえ、私は伏見稲荷神社の神使、守り狐なのですわ。ちょっと油断したら耳が出てしまいましたの」
「えー、なにそれ」
「そーゆー設定なの?」
「触らせてー」
盛り上がるクラスメイトの輪に、急いで琥太郎は乱入する。
「おい、柚!とりあえず耳しまえ!」
「あら、琥太郎くん♡」
「あらじゃないって!とりあえず移動するぞ!」
柚の手を取りクラスの女子の輪から一旦離脱し、教室を出る。
「琥太郎くんと柚ちゃん、相変わらずラブラブだね~」
「くそ、琥太郎め、見せつけやがって!」
クラスの男女で反応に差があるのを賀茂はニヤニヤしながら面白がって眺めていた。
「おい、柚!お前が妖だってことがバレたら、大変なことになるだろ!」
中庭で柚のことを心配して注意する琥太郎だが、柚は全く悪びれる様子もない。
「琥太郎くんと今日も一緒にお弁当食べられて嬉しいのですわ!」
「とりあえずその耳をしまっとけ!」
「なんでですのー?」
「なんでってその、大変なことに……」
「大変なことってなんですのー?」
「大変なことって言うと、ええと……」
思わず口籠もる琥太郎の肩を後ろからやってきた賀茂がポンポンと叩く。
「まあまあ、琥太郎もそんなに厳しくしないでいいんじゃないか。クラスメイトも受け入れてくれてるみたいだし」
「そうかな?」
「あんまり隠しててもストレス溜まるだけだろ。な、柚ちゃん」
「そうですわ!柚はみんなと仲良くしてるだけですもの」
「そ、そう言われてみればそうかもな」
それでもまだ何か言いたそうな琥太郎に対し、賀茂は急に真面目な口調になった。
「それに、柚ちゃんがクラスのみんなと馴染んでるのを見ると、人間と妖がこうやって平和に暮らせる世界もあるってことを再認識できるんだ。俺たち賀茂家がやろうとしてることって無駄じゃないんだなって」
「その通りですの!柚は京都にいた時よりたくさんお友達ができてうれしいのですわ!」
そういってパクパクとお弁当に入ったお稲荷さんを頬張る柚子を見ると、琥太郎はこれ以上何か言う気もなくなってしまった。
「お前らの言うことも一理あるのかもな」
「そーゆーことだ。ところで琥太郎。朝話してた部活を作るって話だがな」
「楽しそうなお話ですわ!柚も混ぜてください!」
ついに油断して出てきた尻尾をフサフサと振りながら柚が話に食いついてくる。
「柚ちゃんにもぜひ入ってほしいんだが、陰陽道研究会、略してオン研を結成しようと思うんだ!」
「柚も入りたいですわー!」
「なあ、賀茂。頭の良いお前のことだから何か考えがあるんだろうが、部活を作るっていうのもいくつかハードルがあるんじゃないか?」
「例えば?」
「顧問はどうするのかって問題があるだろ?」
「それなら大丈夫。若菜先生はまだ新任で顧問の部活が決まっていない。俺から頼んでみるさ」
「あと、人数の問題もあるだろ?部活って何人集めれば良いんだ?」
「ああ、結成に必要な人数は五人だ」
「今ここにいる三人は決定として、後二人はあてがあるのか?」
「そんなの、少し考えれば気づくじゃないか」
と賀茂は不的な笑みを浮かべた。
琥太郎は思わず聞き返す。
「そこ!静かにしなさい。ホームルームを始めますよ」
いつの間にか教卓にいた若菜先生から注意を受け、琥太郎はやむなく話を中断した。
「さすが若菜ちゃん、かっこいー!」
とクラスから謎の歓声が上がる。
「先生をあまりからかわないでください!」
ポニーテールを揺らしながら言う先生は、クラスメイトからいつの間にか愛されキャラとして認定されているようだ。
「若菜先生って、いいよな」
「あの健康そうな感じがいいな」
一部男子生徒の中には本気で恋していそうな者もチラホラいるらしい。
「詳しいことは後で話す」
と賀茂が小声で言ってくる。
「了解」
色々と気になることはあるが、琥太郎はやむなく答えた。
午前の授業も終わり、やっと昼休みだ。琥太郎は大きく伸びをすると、自然とあくびが出てきた。
「おいおい、お前さっきまで寝てたのにまたあくびかよ」
と賀茂がツッコミを入れてくる。
「春はあったかいからなぁ、なんだか眠くなるんだ」
「そんな調子だとゴールデンウィーク明けの中間テストは危険だぞ」
「お前みたいに成績の良いやつは余裕でいいよなあ」
隣の席の賀茂は、授業の小テストなどは常に100点で、間違えているのを見たことがない。小さい頃から陰陽道を叩き込まれた賀茂にとっては、高校の授業は楽に思えるらしい。
「妖の王が赤点じゃあ格好つかないだろ。そんなんじゃ仇打ちどころじゃなくなるぞ」
「仕方ないだろー、お前が勉強してる間に、俺は山で師匠と修行して過ごしてたんだって」
そういえば育ての親代わりの天狗の師匠は元気にしてるかなあなどと呑気に考えていると、相変わらず女子から大人気の柚が今日も囲まれていた。
「柚ちゃん、頭に耳生えてる!」
聞こえてきた声に思わず飲んでいた缶コーヒーを噴き出しそうになる。慌てて目をやると、柚の頭にモフモフとした白い耳が出てきていた。
「あちゃー、柚ちゃん油断したなあ」
と賀茂はポリポリと頭をかいている。
「かわいいー!なにそれ、飾り?」
「いえいえ、私は伏見稲荷神社の神使、守り狐なのですわ。ちょっと油断したら耳が出てしまいましたの」
「えー、なにそれ」
「そーゆー設定なの?」
「触らせてー」
盛り上がるクラスメイトの輪に、急いで琥太郎は乱入する。
「おい、柚!とりあえず耳しまえ!」
「あら、琥太郎くん♡」
「あらじゃないって!とりあえず移動するぞ!」
柚の手を取りクラスの女子の輪から一旦離脱し、教室を出る。
「琥太郎くんと柚ちゃん、相変わらずラブラブだね~」
「くそ、琥太郎め、見せつけやがって!」
クラスの男女で反応に差があるのを賀茂はニヤニヤしながら面白がって眺めていた。
「おい、柚!お前が妖だってことがバレたら、大変なことになるだろ!」
中庭で柚のことを心配して注意する琥太郎だが、柚は全く悪びれる様子もない。
「琥太郎くんと今日も一緒にお弁当食べられて嬉しいのですわ!」
「とりあえずその耳をしまっとけ!」
「なんでですのー?」
「なんでってその、大変なことに……」
「大変なことってなんですのー?」
「大変なことって言うと、ええと……」
思わず口籠もる琥太郎の肩を後ろからやってきた賀茂がポンポンと叩く。
「まあまあ、琥太郎もそんなに厳しくしないでいいんじゃないか。クラスメイトも受け入れてくれてるみたいだし」
「そうかな?」
「あんまり隠しててもストレス溜まるだけだろ。な、柚ちゃん」
「そうですわ!柚はみんなと仲良くしてるだけですもの」
「そ、そう言われてみればそうかもな」
それでもまだ何か言いたそうな琥太郎に対し、賀茂は急に真面目な口調になった。
「それに、柚ちゃんがクラスのみんなと馴染んでるのを見ると、人間と妖がこうやって平和に暮らせる世界もあるってことを再認識できるんだ。俺たち賀茂家がやろうとしてることって無駄じゃないんだなって」
「その通りですの!柚は京都にいた時よりたくさんお友達ができてうれしいのですわ!」
そういってパクパクとお弁当に入ったお稲荷さんを頬張る柚子を見ると、琥太郎はこれ以上何か言う気もなくなってしまった。
「お前らの言うことも一理あるのかもな」
「そーゆーことだ。ところで琥太郎。朝話してた部活を作るって話だがな」
「楽しそうなお話ですわ!柚も混ぜてください!」
ついに油断して出てきた尻尾をフサフサと振りながら柚が話に食いついてくる。
「柚ちゃんにもぜひ入ってほしいんだが、陰陽道研究会、略してオン研を結成しようと思うんだ!」
「柚も入りたいですわー!」
「なあ、賀茂。頭の良いお前のことだから何か考えがあるんだろうが、部活を作るっていうのもいくつかハードルがあるんじゃないか?」
「例えば?」
「顧問はどうするのかって問題があるだろ?」
「それなら大丈夫。若菜先生はまだ新任で顧問の部活が決まっていない。俺から頼んでみるさ」
「あと、人数の問題もあるだろ?部活って何人集めれば良いんだ?」
「ああ、結成に必要な人数は五人だ」
「今ここにいる三人は決定として、後二人はあてがあるのか?」
「そんなの、少し考えれば気づくじゃないか」
と賀茂は不的な笑みを浮かべた。
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