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1章 入学編

07 猫耳妹はお兄ちゃんがお好き?

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 琥太郎は家のソファに連れ帰った茶猫を寝かせて休ませた。そこに息を切らして急いでキャットフードを買ってきた柚が帰ってくる。

「呪いを取れるか試してみますわ」

 猫に手をかざすと、傷口から溢れる黒い呪いの周りに小さな光の粒が集まり出す。琥太郎はとりあえず近くにあった皿にキャットフードをよそった。

「良かった、呪いが少しずつとれてきましたわ」

 最初は元気がなさそうな様子であったが、柚の浄化によって少しずつ動けるようになってきたようだ。

「餌、食べられそうか?」
と琥太郎が皿を差し出すと、お腹が減っていたようでモリモリと食べ始めた。

「元気そうで何よりですわ」

「ああ、本当だな」

「それにしても、あんなに傷口から呪いがでるなんて」

「あの傷口から見て、何か強力な妖にやられたと見て間違いないだろう。この呪いも、その妖の目印だろうな」

「そうだとしたら危険ですわ、この子に怪我を負わせた妖が追ってくる可能性がありますの。呪いも完全には浄化しきれていませんわ」

 その言葉を聞いて琥太郎はニヤリと笑った。

「それは好都合だ。こいつを襲った妖は見当がつく。そいつには俺も用があるからな」

「琥太郎くん、何か知っておりますの?」

「いや、それよりもこいつ、尻尾が増えてないか?」

「え?」
 驚いた柚が夢中で餌を食べる猫に目をやると、確かにいつのまにか尻尾が2本に増えている。

「こいつ猫又じゃないか」

「あら!この子も妖でしたのね」

「傷のせいで妖力が落ちて、普通の猫に戻ってたのか」

 猫又は餌を食べ終えると、満足そうにゴロゴロと喉を鳴らした。

「よく食べたな、少し元気でたか?」
と琥太郎が頭を撫でると、猫又は伸びをしてからその場で宙返りをした。

「うお、なんだ⁈」
 琥太郎が思わず手をひくと、そこにいたのは猫耳姿で小学生くらいの背丈のツインテールの少女であった。

「助けてくれてありがとニャ、お兄ちゃん♡」

 少女は琥太郎に抱きついて、胸元にスリスリと頬擦りした。

「お、お兄ちゃん?」

 混乱する琥太郎に少女は上目遣いで自己紹介した。

「はじめまして、お兄ちゃん。あたしは美乃梨。父は妖の王、坂田将太朗。つまりお兄ちゃんとは異母兄弟ってわけニャ」

「な、なんだって?父さんに俺以外の子供がいたのか?」

「王なんだから、側室くらいいるニャ。心配しなくて大丈夫、お兄ちゃんは正室の子だから!」

「いやいや、そういう問題じゃなくて」

 横でプクッと頰を膨らませた柚が会話に割って入る。

「ちょっと!琥太郎さんから離れてくださる?」

「にゃによ、せっかく兄妹が感動の対面してるのに。ねえねえお兄ちゃん、あんな狐女より美乃梨のほうが好きでしょ?」

「むむー、もう怒りましたわ!琥太郎さんは柚の許嫁なんですからね!」

「ふん、勝手に自分で言ってるだけニャ。これから美乃梨とお兄ちゃんで兄妹水入らずの話があるんだから、どっかに行っててニャ!」

 バチバチと睨み合う2人に気圧されて琥太郎は困ってしまう。

「ごめん、柚。少し美乃梨と話させてくれないか」

「仕方ないですわね。少しだけですわよ」

「やったー!美乃梨の勝ちー!お兄ちゃん大好きニャ!」
とはしゃぐ美乃梨に、琥太郎は問いかける。

「美乃梨。つまり君は俺の妹で間違いないんだな?」

「そうだよ、お兄ちゃん。ずっとお兄ちゃんのことを探していたニャ。残された坂田の血はあたしたち2人だけ。妖の王の一族の復権を目指すために、助けあわなきゃいけないのニャ」

 握ってきた美乃梨の手を、琥太郎は強く握り返す。

「俺にはまだ家族がいたのか。あの日俺はもう1人になったと思ってた。弱すぎた俺はあの日誰も守れなかった。美乃梨。俺は例え死んでも君を守るよ」

 美乃梨はその言葉を聞き頬を赤らめ、琥太郎の胸元に額を寄せた。

「お兄ちゃん!美乃梨、怖かったニャ。坂田の血は狙われる存在。身を潜めて生きてきたけど、お兄ちゃんが東京にいるって聞いて、居ても立っても居られなくなって……。奴に襲われた時はもう会えないかと思ったニャ。会えて本当に嬉しいニャン」

「命を懸けて会いにきてくれたんだな。ありがとう、美乃梨。もう怖くない。向かってくるやつは全員俺が倒すから」

 琥太郎が美乃梨の頭を優しくポンポンと叩くと、美乃梨は嬉しそうにまた喉をゴロゴロ鳴らした。

「そろそろイチャイチャを見せつけるのは終わりますかしら?」

「怖いニャー、怖い女は嫌いだよね、お兄ちゃん」

「そんな冗談に付き合ってる場合じゃありませんわ。美乃梨、あなたの呪いを目印に妖が追ってきますわよ」

 琥太郎は妖刀安綱を手に取りながら、
「美乃梨が襲われたのは、虎の姿の妖だろう?」
と尋ねる。

「お兄ちゃん、あいつのこと知ってるニャ?」

「ああ、翠流の式神、七鬼衆のうちの一匹だ」

「まさかそれって、10年前にパパを殺した……」

「その通り。さあ、復讐の時間だ」

 琥太郎が玄関のドアを開けると同時に巨大な虎が襲いかかってきた。琥太郎は居合の要領で鞘から安綱を振り抜く。虎の牙と安綱が激しくぶつかり火花が散った。



 





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