6 / 37
1章 入学編
05 一緒にお風呂に入りませんか?
しおりを挟む
「な、なんだって?」
思わず聞き返す琥太郎に、
「ここが今日から琥太郎くんと柚の愛の巣ですわ♡」
とニコニコと柚は微笑みかける。
「いやいやいや、ちょっと待て!」
「まあまあ、とりあえずお家に入りましょ」
柚はフサフサの尻尾をご機嫌に振りながら、家の中に入って行ってしまった。
「わぁー、広くて良いお家ですわ!」
と柚の嬉しそうな声が聞こえる。焦る琥太郎は急いでポケットからスマホを取り出すと、電話をかけた。
「なんじゃ、琥太郎か。学校は終わったかの」
「学校は良いんだけど、それよりどうなってるんだよ!」
「おう、家の方か。なかなか良い賃貸を見つけたじゃろう。家電とか日用品は烏天狗に運ばせといたからの。足りないもんがあったら言っとくれ」
「いやいや、師匠!それより伏見稲荷の柚の話だよ!」
「ああ、柚ちゃんか。言い忘れとったが主の幼馴染なんじゃろ?はて、許嫁だったかの?伏見の狐たちから連絡もらって、一緒に住むことにしておいたから、安心せい」
電話口から聞こえるガハハという笑い声に琥太郎はため息をつく。親代わりに琥太郎を育てた天狗の次郎坊は、琥太郎の剣の師匠でもある。
「なんじゃ、不満そうにして。お主も妖の王を目指す身じゃろう。おなごの一人くらいにカリカリしてはとても王の器とは言えんぞ。エスコートするのも修行のうちじゃ」
「なっ、それくらい何とも思ってないって!また何かあったら電話する!」
思わず琥太郎は電話を切ってしまった。次郎坊にはどうしても頭が上がらない。とりあえず琥太郎も家に入ってみることにした。
「見てください、琥太郎くん!とっても良い家ですわよ!」
「ああ、かなり広々としているな」
「琥太郎くん、お腹すいたでしょう?冷蔵庫にあるものでとりあえず作っておきますわ。ゆっくりしててください」
「ありがとう、柚。お言葉に甘えるよ。たぶん烏天狗が色々食材を入れてくれてると思うんだ」
「お風呂を今沸かしておりますわ。汗もかいたでしょうし、流してくると良いですわ」
柚子が台所で包丁を使う音が小気味良く響く。包丁捌きがなかなか様になっていて、料理はかなりの腕前のようだ。次郎坊と山で修行していた時はとりあえず食材をなんでも鍋に突っ込んでいた琥太郎からすると、料理を作ってくれるのはありがたい。妖刀安綱の手入れをしつつ、琥太郎は風呂が沸くのを待った。
「ふぅ。やっと一息ついたな」
風呂に入ると、思っていた以上に体が疲弊していることに気づく。初めての高校生活の緊張に加え、酒呑童子との戦いが蓄積しているようだ。初日から妖を討伐できたので、上々のペースだ。琥太郎は制服で隠れていた右肩の包帯をゆっくりと解く。生々しい火傷の傷跡が腕に広がっていた。
「今日1日でかなり広がったな。酒呑童子の呪いか」
10年前両親が殺害された時に館で負った火傷は、今でも琥太郎の右腕に残っている。妖を斬る代償として、右肩の火傷に呪いが蓄積していた。ズキリとした痛みを感じ顔をしかめる。
「これじゃあ妖を全員斬り終わるのが先か、俺の腕が肩からもげるのが先かだな」
苦笑する琥太郎は風呂から出ると、体を洗おうとした。
「料理がひと段落しましたの。琥太郎くん、お背中お流ししますわ」
「え?」
ちょうど体を洗おうとしていた琥太郎と、いきなり入ってきた柚が鉢合わせしてしまった。慌てて琥太郎は柚に背をむける。
「そ、そんな……。琥太郎くん、大胆ですわ」
頬を染め、顔に手を当てながら、指の隙間からチラチラと柚はこちらを覗いている。お風呂用に銀色の長い髪を御団子にくくっているのがかわいらしい。
「琥太郎くん、良い体ですわ。柚が洗って差し上げます♪」
「柚、さすがにそれはまずいって!」
「これくらいできなければ正室は務まりませんわ。まずはシャンプーからですわね」
有無を言わさず柚は琥太郎の髪にシャワーをしてから、シャンプーを優しく馴染ませた。頭皮をマッサージするように洗われるのはとても気持ちが良い。
「お背中も洗いますわね。痒いところはございませんか?」
よく泡立たせたボディタオルで背中をこすられると、心地よいような、くすぐったいような感覚が全身に広がった。
「うふふ、琥太郎くんとっても気持ちよさそう。目がとろんとしてますわ」
「そ、そんなことないって」
「恥ずかしがらないで柚に体を預けても良いですわよ。あら、肩のところに呪いが溜まってますわね」
柚が琥太郎の火傷痕の前に手をかざすと、光が集まり出した。肩のあたりがカイロを当てられたようにポカポカと温かい。
「柚、呪いを取れるのか?」
「ええ、伏見稲荷の神使ですもの。浄化は得意ですわ」
「ありがとう、痛みが引いていくよ」
「お役に立てて嬉しいですわ」
柚は嬉しげにニコニコ笑う。
「では、お次は前の方もお洗いしますね」
「いや、そっちは自分でやるから!」
「残念ですわ。それなら、柚は湯船に浸からせてもらいます」
気まずい表情で体を洗う琥太郎の横で、柚は心地良さそうに湯船で伸びをした。
思わず聞き返す琥太郎に、
「ここが今日から琥太郎くんと柚の愛の巣ですわ♡」
とニコニコと柚は微笑みかける。
「いやいやいや、ちょっと待て!」
「まあまあ、とりあえずお家に入りましょ」
柚はフサフサの尻尾をご機嫌に振りながら、家の中に入って行ってしまった。
「わぁー、広くて良いお家ですわ!」
と柚の嬉しそうな声が聞こえる。焦る琥太郎は急いでポケットからスマホを取り出すと、電話をかけた。
「なんじゃ、琥太郎か。学校は終わったかの」
「学校は良いんだけど、それよりどうなってるんだよ!」
「おう、家の方か。なかなか良い賃貸を見つけたじゃろう。家電とか日用品は烏天狗に運ばせといたからの。足りないもんがあったら言っとくれ」
「いやいや、師匠!それより伏見稲荷の柚の話だよ!」
「ああ、柚ちゃんか。言い忘れとったが主の幼馴染なんじゃろ?はて、許嫁だったかの?伏見の狐たちから連絡もらって、一緒に住むことにしておいたから、安心せい」
電話口から聞こえるガハハという笑い声に琥太郎はため息をつく。親代わりに琥太郎を育てた天狗の次郎坊は、琥太郎の剣の師匠でもある。
「なんじゃ、不満そうにして。お主も妖の王を目指す身じゃろう。おなごの一人くらいにカリカリしてはとても王の器とは言えんぞ。エスコートするのも修行のうちじゃ」
「なっ、それくらい何とも思ってないって!また何かあったら電話する!」
思わず琥太郎は電話を切ってしまった。次郎坊にはどうしても頭が上がらない。とりあえず琥太郎も家に入ってみることにした。
「見てください、琥太郎くん!とっても良い家ですわよ!」
「ああ、かなり広々としているな」
「琥太郎くん、お腹すいたでしょう?冷蔵庫にあるものでとりあえず作っておきますわ。ゆっくりしててください」
「ありがとう、柚。お言葉に甘えるよ。たぶん烏天狗が色々食材を入れてくれてると思うんだ」
「お風呂を今沸かしておりますわ。汗もかいたでしょうし、流してくると良いですわ」
柚子が台所で包丁を使う音が小気味良く響く。包丁捌きがなかなか様になっていて、料理はかなりの腕前のようだ。次郎坊と山で修行していた時はとりあえず食材をなんでも鍋に突っ込んでいた琥太郎からすると、料理を作ってくれるのはありがたい。妖刀安綱の手入れをしつつ、琥太郎は風呂が沸くのを待った。
「ふぅ。やっと一息ついたな」
風呂に入ると、思っていた以上に体が疲弊していることに気づく。初めての高校生活の緊張に加え、酒呑童子との戦いが蓄積しているようだ。初日から妖を討伐できたので、上々のペースだ。琥太郎は制服で隠れていた右肩の包帯をゆっくりと解く。生々しい火傷の傷跡が腕に広がっていた。
「今日1日でかなり広がったな。酒呑童子の呪いか」
10年前両親が殺害された時に館で負った火傷は、今でも琥太郎の右腕に残っている。妖を斬る代償として、右肩の火傷に呪いが蓄積していた。ズキリとした痛みを感じ顔をしかめる。
「これじゃあ妖を全員斬り終わるのが先か、俺の腕が肩からもげるのが先かだな」
苦笑する琥太郎は風呂から出ると、体を洗おうとした。
「料理がひと段落しましたの。琥太郎くん、お背中お流ししますわ」
「え?」
ちょうど体を洗おうとしていた琥太郎と、いきなり入ってきた柚が鉢合わせしてしまった。慌てて琥太郎は柚に背をむける。
「そ、そんな……。琥太郎くん、大胆ですわ」
頬を染め、顔に手を当てながら、指の隙間からチラチラと柚はこちらを覗いている。お風呂用に銀色の長い髪を御団子にくくっているのがかわいらしい。
「琥太郎くん、良い体ですわ。柚が洗って差し上げます♪」
「柚、さすがにそれはまずいって!」
「これくらいできなければ正室は務まりませんわ。まずはシャンプーからですわね」
有無を言わさず柚は琥太郎の髪にシャワーをしてから、シャンプーを優しく馴染ませた。頭皮をマッサージするように洗われるのはとても気持ちが良い。
「お背中も洗いますわね。痒いところはございませんか?」
よく泡立たせたボディタオルで背中をこすられると、心地よいような、くすぐったいような感覚が全身に広がった。
「うふふ、琥太郎くんとっても気持ちよさそう。目がとろんとしてますわ」
「そ、そんなことないって」
「恥ずかしがらないで柚に体を預けても良いですわよ。あら、肩のところに呪いが溜まってますわね」
柚が琥太郎の火傷痕の前に手をかざすと、光が集まり出した。肩のあたりがカイロを当てられたようにポカポカと温かい。
「柚、呪いを取れるのか?」
「ええ、伏見稲荷の神使ですもの。浄化は得意ですわ」
「ありがとう、痛みが引いていくよ」
「お役に立てて嬉しいですわ」
柚は嬉しげにニコニコ笑う。
「では、お次は前の方もお洗いしますね」
「いや、そっちは自分でやるから!」
「残念ですわ。それなら、柚は湯船に浸からせてもらいます」
気まずい表情で体を洗う琥太郎の横で、柚は心地良さそうに湯船で伸びをした。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
あやかし警察おとり捜査課
紫音
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。
しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。
反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる