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2章
61:本戦 第2試合
しおりを挟む「クウガ選手、出番です。移動をお願いします」
次の試合まではかなりの時間があったのでルルを召喚し、屋台を巡って少し腹ごしらえをしてルルのブラッシングをしながら時間を潰して待っていた。それなりの時間が経った所でようやく第1回戦が終了したようだ。ルルを帰して、会場の熱気やざわめきが感じられる通路を進む
俺が通路から現れると、歓声がドッと湧く。先程から感じられていた熱気も上がったように感じた
「さあ!続いて現れたのは~、前年度に決勝まで駒を進ませたアイゼン選手を破り、第2回戦へとやってきたクウガ選手だー!」
ワァァァァァ!
どうやらアイゼン先輩を倒したことが影響したようだ。先程の第1回戦の時よりも歓声が、主に黄色の歓声、増えていた
「そして!反対の通路から対戦者が現れたー!1回戦で自分よりも上の2-Aクラスの選手を倒し、勝ち上がったこの人!メルク!」
小さくて可愛い~、などの大きさについての歓声に罵声で返しながら歩みをこちらに進めるのはティリアン先輩と同じ小人族の男。肩に届く位の茶色の髪、瞳は鋭く、その顔には自信と自負が溢れている。その手には身の丈にあった槍を持っている
その様子からプライドが高くて、堪え性が低そうだ
相手が槍ならこっちは連結剣で行こうかな。連結剣となる剣を抜き、柄を合わせる。一風変わった武器を手にした俺を見て客席からも疑問やら好奇心やらの感情が伝わってきて、メルク先輩からは舐めているのかと睨みつけられる。多分だが1試合目で俺が剣で戦っていたのを見ていたからだろう
舞台の上、俺と相対する場所に立ちこちらを睨みつけてくるメルク先輩。こういう相手には笑ってあげると効果的だ
俺が身長のせいで上から見下ろす感じでフッと笑うとカチンときたようで更に顔付きが険しくなる先輩。思った通り堪え性が低い様子。一応自制しているようだから無謀にも突っ込んでくることはないと思うけど
ブロック4の選手も出揃い
「それでは、第2回戦!第2試合!……始め!」
試合が開始された
対戦相手は俺の予想を裏切って
「おらぁ!なめてんじゃねぇぞ!」
と言いながら無謀にも突っ込んできた
挑発に驚くほど素直に乗ってきた。いや、ただ単に直情的なだけかもしれない
怒りの為かかなり隙だらけだ。やはり見てて思うのは小人族は小さ「今小せえとか思っただろ!」
うおっ!
小さいと思ったら、先輩はそれを超敏感に感じ取り俺に向けて怒声を放つと先輩の駆ける速さが上がり、あろうことか隙までもが無くなった!
急激に変わったその様子に驚かされたが、スキルか何かだろう。速さに関しては、速くなったと言っても全然対応できる範囲内だ
開いていた間を瞬時に食い潰し、目の前に移動した先輩が繰り出した鳩尾への突きを連結剣で下から弾き、そのまま反撃の斬撃を放った
反撃は躱され、先輩はすかさず離れた
「お前、普通に見えてやがんな」
確かに俺には見えているしあの程度の速さはどうということはない。それよりも先程から先輩は凄んだり怒ったりしているが、その身長から頑張って怒ったりしている幼い子にしか見えない
もし、さっきのが引き金となるスキルならもう少し挑発してみよう
「ええ、あれくらいなら全然怖くありませんよ。おチビさん」
と言うと変化は劇的だった
先輩の体から魔力が溢れ出てきたのだ
「てめぇ、完璧に俺のこと舐めてるな?いいぜ、俺のことチビって言ったことを後悔させてやる!」
先輩の激情に反応するかのように溢れ出てきた魔力が先輩の体の中へと収束すると、今度は体から炎が溢れ出してきた。魔術などを纏うのとは違う感じ。これもスキルなのだろうか
炎を体から出し続ける先輩は速さが上昇していた先程よりも早い速度で、今度は真正面からではなく途中に動きを入れて左横から攻めてきた
その速度は期待以上。これは楽しくなりそうだ
炎は槍をも覆い、炎を纏った槍が俺へと向けて連続で放たれた
それに対して、連結剣で迎え撃ち全てを弾く。しかし、弾かれても直ぐに手元に槍を戻して攻撃が放たれるので反撃は出来ていない。偶に突き出される槍から炎の球が飛んでくるも、ソウマが以前似たようなことをやってきたので対処は可能だった
メルク先輩によって連続で突き出される槍を俺が弾くだけの時間が続く
右太ももを狙った突きを横から当てて弾く、続いて繰り出された喉への攻撃に連結剣を回転させながら横から迎え撃つ、脇腹へと攻撃が迫ると上から叩き落とす。連接剣をクルクルと回しながら敵の攻撃を迎撃していく
突きを弾く弾く弾く弾く。そんな攻防が繰り返されると次第に先輩に疲れが出始める。速さや魔力が上がっても体力までは上がっていないみたいだ。もしかすると、速さなどが上昇したことで疲労もその分溜まってしまうのかもしれない。まあ、あの炎の維持にも相応に消費するのだろう。俺には効果ないが
そして、疲れて槍の戻しが少し遅れたところで俺は弾きながら前に出て攻守を逆転させる
槍を弾いたのとは逆の方で下からの斬撃を放つ。先輩はかろうじて槍を引き戻すのが間に合い、防御に成功する
飛ばされないように踏ん張ったことで先輩は攻撃に移れない。また、俺が今放った斬撃は斬るのではなく、衝撃を相手に伝えるように放った為それなりにダメージが入ったはずだ。そんな所へ容赦せずに追撃を加える
回転させる事に加え、両端が剣になっている事で手数の多い俺の攻撃を何とかしのぐ先輩。その顔には焦りの色が濃く出ている
上下左右から攻め立てられ防戦一方となり、衝撃がガードする槍を抜けて伝わり、避けきれなかった攻撃で切り傷が増えていき、スキルの使用で体力が削られていく
そろそろ終わらせるべきかな
俺はガードの上から今までの攻撃よりも力を入れて先輩を吹き飛ばした。今までの蓄積の所為だろう、槍が手元を離れ違う方に飛んでいく。先輩の体は宙を泳ぎ飛んでいくも場外にまでは飛んでいきそうにないし、意識も飛んでいないので着地するだろう。
そこで俺は連結剣を右手で持ち、少し持ち手を寄らせて後ろに引き絞る。狙いを定め連結剣を回転させながら投擲した
投擲された連結剣はもの凄い速さで回転し、左側から弧を描くようにメルク先輩へと迫り、上半身と下半身を2つに斬り裂き、右側から俺へと戻った
切断されたメルク先輩は結界の効果で瞬時に転送される
試合の決着に会場のボルテージが高まり、より一層歓声が大きくなる
すると、舞台の外へと出された先輩から怒声が浴びせられた
「お前、覚えてろよ!次会ったらギャフンと言わせてやるからな!」
と言い残して先輩は去ってしまった
しまったな~、やりすぎたかも
得意でもないことはぶっつけでやるもんじゃないね
先輩が去っていった通路を見て、そんな教訓と苦笑いが浮かぶのだった
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