Heroic〜龍の力を宿す者〜

Ruto

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2章

47:入学試験

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入学試験の日がやって来た。俺とソウマはサリーユとオルテさんに挨拶をして学園へと向かった。オルテさんはサリーユさんの旦那さんで、俺達がかなりの量の料理を美味そうに食ってくれるという事で向こうからサービスと共に話しかけてきてくれたのだ。別にサービスに釣られたわけじゃないからな!オルテさんは幼い頃から料理を彼のお父さんに教えて貰い、更に自分でも修練をしっかりと積んだのだそうだ。まあ、仲良くなって他にも2人の馴れ初めとか色々と聞かされた。あと、8歳の息子さんもいてその子とも仲良くなった。その子、ソラくんは店のお手伝いをしている。先程はそのお手伝いの為声を掛けられなかった。まあ、同じ都市にいるわけだから会う機会はあるだろう。

学園の場所は既に下見して場所がわかっているので道に迷うことなく向かう。俺達の前や後ろには同い年くらいの人達が緊張や興奮など、様々な表情の人が俺達と同じ方向、学園へと向かっている。

そんな周りの流れに流される様に移動して学園に到着した

「入学試験を受ける方は此方の受付で名前と出身を言って番号札を受け取ってくださーい」

学園の正門前では案内役の人がそう周りに大きな声で教えてくれていた。正門の横では長机に10人の受付の人おり、入学者が列を作っていた。

「やっぱり凄い人数だね~」

「うげー、時間かかりそうじゃん」

「まあ、待つしかないよ」

ソウマと共に列に静かに並んで待つ。ルルは頭に乗せていないし、ライル、メイル、ラキアも居ないのにかなりの視線が向けられる。何でだ?

「ねえ、ソウマ」

「何だ?」

「何でか知らないけど凄い見られてない?」

そうソウマへと聞いたのだが、当の本人は呆れた感じで肩を竦めていた。意味がわからん

「意味がわからんってか?教えてやるよ。俺とお前は容姿はかなり良い方だからな。それで見られてんだろうよ。それにお前の髪が長いってのもあるかもな」

自分の容姿を良いなんてよく言えるよねー。やっぱり髪は切った方が

『駄目ですよ』

ですよね~。はははっ

順番が来るまで待つ。途中、他の列でアホ貴族が騒ぎを起こしたりなどがあったが、関わらなくて良いものにわざわざ関わるつもりはないので良かった良かった。

「次の方~」

お、やっとか。俺の前のソウマが呼ばれる

「お名前と出身をお願いします」

「ソウマ コウヅキ。王都だ」

受付の人は少し眼を見開いたものの時間を無駄にする様なことは無く名簿にチェックを加え番号札を渡す。

「次の方~」

俺だね

「お名前と出身をお願いします」

「クウガです。出身はミネラです」

俺の時は値踏みする様な視線。まあ、僅かな瞬間だったので隠したつもりだったのだろう。バレバレではあったが。

「ではこちらが番号札です。玄関口にある案内を確認して移動して下さい」

「わかりました」

次の方~という受付の声を後ろに聞きながら待っていたソウマと一緒に玄関へと向かい、案内を確認した。

案内の内容を纏めると

・4箇所ある演習場に番号で指定された場所へ向か
   い模擬戦をする

試験は選択する科によって異なり、俺達は武科なので模擬戦。魔科なら的に自分の出来る最高の魔術、又は魔法をぶつける。商科なら筆記。技科ならば物を実際に作ったりといった感じだ

雑談を交わしながら歩き演習場に到着した。俺達が指定されていたのは第2演習場。演習場はかなりの大きさだ。学園にある演習場は少し特別だ。演習場には結界が常に展開されており致死のダメージを受けても死なず、そういった攻撃をくらえば結界外に飛ばされるらしい。しかも中で負った傷ならば外に出れば治るそうだ。こういった結界のある建物は多くはないが普通にある。王都の闘技場だったり、毎年カリアスター帝国で開催される闘技大会の会場など割とあるらしい。カリアスター帝国はこの国で1番大きな領土を持つ国で、そこで開かれる闘技大会は多くの人が集まる。褒賞がもの凄いらしくて、強者がいっぱい参加するのだ。まだ参加した事はないがいつかは参加してみたいと思うね。

それはさて置き、既に試験は始まっている。演習場は半分でやっている事が別れている。片方では魔科の生徒が的に攻撃を、もう一方では20人の試験官と次々と模擬戦が行われている。

演習場に入って直ぐの場所にいた案内の人に番号を伝え並ぶ列を教えてもらい列に並ぶ。ソウマとは別の列になってしまったので終わったら外で落ち合うという事にしてそれぞれの列に向かった。

この試験では試験官と模擬戦を行い実力を見るというものらしい。試験官はこの学校の教師で元ランクAやSの冒険者やこの国の騎士団に在籍していた人などが相手をしてくれるらしい。

遠目に見えるその戦いはほとんどの者が試験官に軽くあしらわれると言った感じで、時々攻撃が当たったりして歓声が上がる。一際大きい歓声が上がれば試験官を倒していたりする。

試験官の人達を見た感じだとスキルとかは使わなくてもいけそうだ。刃引きがしてある剣とは言え万が一があったらいけないので無手で挑もうか。

模擬戦を眺めながら順番を待つ。時折それなりの強さを持ったやつが見られるけど俺やソウマほどではない。これは傲慢とかそういうの抜きでの客観的に見てそう判断した。

それから時間が経ち、漸く俺の番がやってきた。

「次はお前か!よろしくな!」

体型は中肉中背だけど筋肉が引き締まっており、雰囲気からもそれなりの場数は踏んでいるみたいだ。武器は槍か。間合いは不利だが問題はないな

「よろしくお願いします」

頭を下げ挨拶をする

「おうよ!武器は使うならそこに在るの使っていくれや」

そう言いながら横の記録を取っている人がいる場所を指し示す

「いえ、無手で行きます」

「りょーかいだ。そんじゃ先手は譲ってやる事に成ってるからかかってきな」

きやすい感じから真剣な表情へと変え、告げる

「では、お言葉に甘えまして」

意識を切り替える。戦闘への意識へと。

一瞬の間を置き、地面を蹴って駆け出し間にあった距離を詰める。

試験官は驚きに眼を見開くも直ぐに切り替える

俺は右拳を顔面へ向けて放つ。試験官は表情を歪めながらも横に移動することで避ける。

「うおっ!」

避けられた右拳を戻しながら今度は左拳で鳩尾に向かってアッパーを繰り出す。試験官は後ろに飛び退ることで回避する。追おうとしたが槍を振るわれたので、追撃を止めて一旦距離が開く

「お前さん、想像以上だな。特待生だろう?」

「ええ、特待生です」

「かぁー、今年はとんでもねぇのが来たもんだ。身体強化とか使っとらんだろ?」

「使ってませんね。あ、別に舐めているとかではありませんよ」

「そんくらい分かってるよ。かなり悔しいがお前さんのが格上だ」

苦笑しながらもそう言う。できた人だなと思う

「まあ、身体強化使ってこないんだったら簡単に負けてやる気は無いがな」

そう言って今度は豪快に笑う

「そうですか。ではもう1つギアを上げましょう」

なので笑顔で言ってあげる

「え?まだ上がんの?」

「勿論、さっきのは準備運動。じゃあ、行きますよ?」

「ええっ!ちょっマジかよ!」

慌てる試験官との距離を先程よりもスピードを上げて動き、間合いをゼロにし、左拳を胴体、顔面と2連続で放つ。胴体狙いの拳撃は槍で弾かれ、顔面狙いは屈むことで避けられ、反撃の連続突きが放たれる。が、俺は全てを紙一重で避ける。確かに突きのスピード、戻しの速さ、そして正格さは中々のものだがソウマの様に曲がったりとか変な事は無いので特に問題は無い。

ちょっと焦りが見えたところで突き出された槍を掴み、それを引く事で体勢を前に崩す。伸ばされた右腕を掴み取り肩に担ぐ様にして回転を加えながら下へと潜り込み、師匠直伝の一本背負いを決めた。

地面に叩きつけられ息が吐き出される。そんな試験官の首に手刀にした手を添える

「降参しますか?」

試験官の人ははぁー、と息を吐き地面に寝たまま手を挙げて言った

「降参だ」

それに合わせていつの間にか静かになっていた周りからワァァァァァ!っと歓声が湧く。

試験官さんに手を差し伸べ掴んだところで引っ張りあげる。

「ありがとうごさいました」

「おうよ。いやー、それにしても完敗だわ。これで試験は終わりだ。こっからは合格発表まで時間があっから割り当てられた教室で待機な。まあ特待生だからあんまし関係は無いが、その後に色々説明あっから待っててくれや」

「わかりました」

「んじゃな~」

まだまだ列は続いているので試験官は次の相手に移る。それを横目に俺も外へと向かう。

外では既にソウマが待っていた。

「終わったか」

なんか少し不機嫌だ

「ああ、そっちは早いな。というよりなんかあったか?」

「それがよ、俺の相手の試験官何だけどさ、貴族は偉いのだ!とか何とかの面倒くせぇ奴だったんだよ。で、ムカついたから開始早々に顔面に1発入れてやったらそんだけで沈んじまったんだよ」

あー、イライラした挙句に何も楽しめなかったから不機嫌なのか

「後で模擬戦したげるから機嫌直して。教室で待機らしいから行くよ」

「お、マジで!んじゃ勝ったほうがあの上手い屋台の串焼き10本奢りな!」

「お前も懲りないね」

「勝てばいいのさ!」

機嫌は直ったみたいなんでよかったよかった

機嫌を直したソウマと共に指定された教室に向かい、喋って時間を潰す

1時間くらいすると教師と思われる人がやってきて合格者を発表していく。嬉しさのあまり叫んだりする者、落ちてしまい落ち込んでいる者と様々だ。

「合格者はこの後説明会があるので第1演習場に集まってくれ」

そう言ってさっさと教師は出て行ってしまう。

「ほら、早く説明聞きに行こうぜ」

いよいよ学園生活が目前に迫ってきてテンションが上がっているのだろう。かなりソワソワしてる

「はいはい。それじゃあ、行こうか」

まあ、俺もワクワクしてるから人の事はいえないんだけどね

どんな学園生活が待っている事やら




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