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第二章:サジェット食堂
14話 さくっと!お手軽サンドウィッチ①
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きぃこきぃこと自転車をならし、えっちらおっちらと坂を登って行く。額にじわりと浮かぶ汗を感じるが、拭う気もおこらない。それよりも何よりも、目的地にいちはやく着きたいという気持ちがあったからだ。
数日前、リッタから新しく土地を買ったという報告があった。
私が食堂で働くにあたって、他にチャレンジしたい食材も増え、何よりリッタが私の作る料理が食べたくて我慢が効かなくなったようで。それなら、新しく土地を増やして野菜をつくっちゃえばいいじゃない!という結論にいたったそうだ。
とはいえ、家からの距離もそこそこある上、家ひとつ分ぐらいの大きさなので、やはりあくまでも家庭菜園の範疇をこえないのだが。
そうこうしているうちに、新しい畑についた。生い茂る食材たちの群れの中で、リッタが作業しているのが見える。
「おはよう、リッタ!来たよ!」
わっと手を振りながら、自転車を道脇に止める。リッタが腰を叩きながら笑顔で応じてくれた。
「迷わなかったようでよかった、うわっすごい汗、ほらこれで拭って」
「えへへ、ありがとう。坂がきつくてね」
リッタが首に巻きつけていた手拭いをするするととって渡してくれる。
とんとんと顔に手拭いをあてると、すうっと汗がひいていくのがわかる。
「それにしても、もうこんなにたくさん、すごいね」
「私の力をみくびるんじゃないよ!ほら、このレタスとかみずみずしくて美味しそうだろう、サラダにするのが楽しみだねえ」
にやにやとしながらレタスを撫でながらそう言うリッタを見て、私はふとあることを思いついた。
「レタスを、サラダ以外で美味しく食べられるって知ってた?」
「あら……まさか、チヒロ新しいメニューが思いついたの!」
「ふふふ、これはハマるよ~ウケるよ~」
「チヒロ、目が完璧に商売人よ」
「人間、商売上等!いくらか他にももらってくね!すぐにやりたいから食堂に行ってくる!」
ばたばたと野菜を収穫する私を見るリッタの目が、この上ないほど優しいことにも気付かず、一心不乱に食堂へと足を向けた。
「ただいま!!新しいメニュー、思いついたからちょっと借りますね!!」
ばたーんと大きな音をたて、食堂に入ると、昼寝をしかけていたリチャトさんが椅子から滑り落ちかけていた。
「もうちょっと静かに出入りできないんかね、それにしてもあんた、よくそんなにアイデアがつきないね」
「私を舐めてもらっちゃ困りますよ!あ、ほら、見てください!リッタがこんなに新しく野菜を作ったんですよ」
「なんてまあ、こりゃあまた立派だねえ、無駄にすんじゃないよ、それ」
「当たり前です!!きっと、今から作るものも超売れ売れ間違いなしですっ!」
「まあまあ、自信があることはいいこった。とりあえず、存分に作りな。」
「わーい!ありがとうございます!」
リチャトさんの許可も無事得たところで、むんずむんずと自信満々に厨房にはいる。
どんと野菜の入った籠を見つめ、いちばんの好物を作れる幸せを、まず噛み締めた。
数日前、リッタから新しく土地を買ったという報告があった。
私が食堂で働くにあたって、他にチャレンジしたい食材も増え、何よりリッタが私の作る料理が食べたくて我慢が効かなくなったようで。それなら、新しく土地を増やして野菜をつくっちゃえばいいじゃない!という結論にいたったそうだ。
とはいえ、家からの距離もそこそこある上、家ひとつ分ぐらいの大きさなので、やはりあくまでも家庭菜園の範疇をこえないのだが。
そうこうしているうちに、新しい畑についた。生い茂る食材たちの群れの中で、リッタが作業しているのが見える。
「おはよう、リッタ!来たよ!」
わっと手を振りながら、自転車を道脇に止める。リッタが腰を叩きながら笑顔で応じてくれた。
「迷わなかったようでよかった、うわっすごい汗、ほらこれで拭って」
「えへへ、ありがとう。坂がきつくてね」
リッタが首に巻きつけていた手拭いをするするととって渡してくれる。
とんとんと顔に手拭いをあてると、すうっと汗がひいていくのがわかる。
「それにしても、もうこんなにたくさん、すごいね」
「私の力をみくびるんじゃないよ!ほら、このレタスとかみずみずしくて美味しそうだろう、サラダにするのが楽しみだねえ」
にやにやとしながらレタスを撫でながらそう言うリッタを見て、私はふとあることを思いついた。
「レタスを、サラダ以外で美味しく食べられるって知ってた?」
「あら……まさか、チヒロ新しいメニューが思いついたの!」
「ふふふ、これはハマるよ~ウケるよ~」
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「人間、商売上等!いくらか他にももらってくね!すぐにやりたいから食堂に行ってくる!」
ばたばたと野菜を収穫する私を見るリッタの目が、この上ないほど優しいことにも気付かず、一心不乱に食堂へと足を向けた。
「ただいま!!新しいメニュー、思いついたからちょっと借りますね!!」
ばたーんと大きな音をたて、食堂に入ると、昼寝をしかけていたリチャトさんが椅子から滑り落ちかけていた。
「もうちょっと静かに出入りできないんかね、それにしてもあんた、よくそんなにアイデアがつきないね」
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「まあまあ、自信があることはいいこった。とりあえず、存分に作りな。」
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