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第二章:サジェット食堂
4話 お肉たっぷり!濃厚肉じゃが④
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カララン
先程リチャトさんがオープンの看板を掲げたばかりだというのに、早速お客様が来店された。
私は一応、シェフという形で雇われたが、今まで接客なども全てリチャトさんが行っていたので、その負担を少しでも軽くするために、私もホールに出ることにしたのだ。
「いらっしゃいまーーって、リッタさん!?」
そこには、ニコニコと笑顔を浮かべたリッタさんと、お隣のリウーラさんがいた。
まさかリッタさんたちが来るとは、と思いつつ2人を席に誘導する。
ちなみにだが、ここの国の女性は全員『リ』から名前がはじまるそうだ。リブヘンブルグからとっていて、男性の場合『ヘ』からはじまるのだそう。
そのため、この国で生まれ育っていないということは、名前を聞けばすぐにわかるそうだ。
そんなことを考えながら、リッタさんのテーブルにお水を持って行って、注文を取る。
「ご注文はお決まりですか?」
「あらあそんなかしこまって!娘の初出勤はわくわくするわね~」
「も~リッタったら。チヒロちゃん困ってるわよ?そうね、私はこの新メニューのニクジャガを頂こうかしら」
「はい!これ、私のもともと住んでいたところの家庭料理なんです、注文いただけて嬉しいです~!」
「えっ、ちょっとチヒロが作ったメニュー、もう並んでるの!?私もそれにするわ!」
「わかりました、リッタさんありがとうございます。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「大丈夫よ、楽しみにしてるわね」
2人とも、肉じゃがを注文してくれた!
そのことにウキウキとしながら厨房にオーダーを通す。
リチャトさんは一瞬顔を顰めたものの、皿によそって渡してくれた。
「どうしてそんなに不機嫌なんですか」
「不機嫌なんかじゃないさ!ただね、女性がここに来るのが珍しいんだ」
「そうなんですか?」
「肉は肌荒れを引き起こすからと言って、果実を主食にすることが多いんだ。それじゃあ食が偏るのに」
「そんなの、肉ばっかりでも同じですが……」
「それをあんたに言われて気づいたんだよ。果実はだめなのに肉はいい、そんなことはないもんな」
ニヤッと笑ってほら行ってこいと厨房から追い出される。
リチャトさんは思ったよりも優しく、そしておおらかだ。
その上、考え方に余裕があって素直だ。
この人を味方につけて、野菜を使った料理をひろめていけるかもしれない。
少しずつ、少しずつ野菜文化を広げていこう。
とりあえず、リッタさんで野菜を賄える限界までは。
私がそんなことを考えてるとも思わず、リッタさんたちは世間話に花を咲かせていた。
「お待たせしました。肉じゃがです。」
「あら、美味しそう!野菜も入ってるわね!」
「野菜なんて見たの、いつぶりかしら……それにしても、いい香りね」
「そうでしょう。食べてみてください」
私が声をかけると、2人は同時に肉じゃがを口に入れた。
「おいっしい!!これ、すごい美味しいわよ!」
「わあ、初めて食べた味ね……甘いのにしょっぱい?コクがある感じなのかしら、何かしらこれは……」
「ふふ、簡単に作れてしまうので、まだここで十分に売れるまでレシピは秘密です!このメニューが軌道に乗り始めたら、レシピも販売しますね」
「チヒロちゃん、中々やり手じゃない~!いいわ、レシピでたら買うわ!リッタ、あんた野菜売ってよね」
「気が向いたらね~こんなに美味しいもの、独り占めしたくなっちゃう!」
にこにこと食べ続ける2人を見て、そういえばいただきますの習慣をつけさせるのを忘れていた、と思い出した。
とはいえこの店はリチャトさんの店だ。
勝手なルールはつけてはいけないな。
後で交渉してみよう。
そう思いながら、ぱくぱくと美味しそうに食べるご婦人2人を見つめた。
先程リチャトさんがオープンの看板を掲げたばかりだというのに、早速お客様が来店された。
私は一応、シェフという形で雇われたが、今まで接客なども全てリチャトさんが行っていたので、その負担を少しでも軽くするために、私もホールに出ることにしたのだ。
「いらっしゃいまーーって、リッタさん!?」
そこには、ニコニコと笑顔を浮かべたリッタさんと、お隣のリウーラさんがいた。
まさかリッタさんたちが来るとは、と思いつつ2人を席に誘導する。
ちなみにだが、ここの国の女性は全員『リ』から名前がはじまるそうだ。リブヘンブルグからとっていて、男性の場合『ヘ』からはじまるのだそう。
そのため、この国で生まれ育っていないということは、名前を聞けばすぐにわかるそうだ。
そんなことを考えながら、リッタさんのテーブルにお水を持って行って、注文を取る。
「ご注文はお決まりですか?」
「あらあそんなかしこまって!娘の初出勤はわくわくするわね~」
「も~リッタったら。チヒロちゃん困ってるわよ?そうね、私はこの新メニューのニクジャガを頂こうかしら」
「はい!これ、私のもともと住んでいたところの家庭料理なんです、注文いただけて嬉しいです~!」
「えっ、ちょっとチヒロが作ったメニュー、もう並んでるの!?私もそれにするわ!」
「わかりました、リッタさんありがとうございます。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「大丈夫よ、楽しみにしてるわね」
2人とも、肉じゃがを注文してくれた!
そのことにウキウキとしながら厨房にオーダーを通す。
リチャトさんは一瞬顔を顰めたものの、皿によそって渡してくれた。
「どうしてそんなに不機嫌なんですか」
「不機嫌なんかじゃないさ!ただね、女性がここに来るのが珍しいんだ」
「そうなんですか?」
「肉は肌荒れを引き起こすからと言って、果実を主食にすることが多いんだ。それじゃあ食が偏るのに」
「そんなの、肉ばっかりでも同じですが……」
「それをあんたに言われて気づいたんだよ。果実はだめなのに肉はいい、そんなことはないもんな」
ニヤッと笑ってほら行ってこいと厨房から追い出される。
リチャトさんは思ったよりも優しく、そしておおらかだ。
その上、考え方に余裕があって素直だ。
この人を味方につけて、野菜を使った料理をひろめていけるかもしれない。
少しずつ、少しずつ野菜文化を広げていこう。
とりあえず、リッタさんで野菜を賄える限界までは。
私がそんなことを考えてるとも思わず、リッタさんたちは世間話に花を咲かせていた。
「お待たせしました。肉じゃがです。」
「あら、美味しそう!野菜も入ってるわね!」
「野菜なんて見たの、いつぶりかしら……それにしても、いい香りね」
「そうでしょう。食べてみてください」
私が声をかけると、2人は同時に肉じゃがを口に入れた。
「おいっしい!!これ、すごい美味しいわよ!」
「わあ、初めて食べた味ね……甘いのにしょっぱい?コクがある感じなのかしら、何かしらこれは……」
「ふふ、簡単に作れてしまうので、まだここで十分に売れるまでレシピは秘密です!このメニューが軌道に乗り始めたら、レシピも販売しますね」
「チヒロちゃん、中々やり手じゃない~!いいわ、レシピでたら買うわ!リッタ、あんた野菜売ってよね」
「気が向いたらね~こんなに美味しいもの、独り占めしたくなっちゃう!」
にこにこと食べ続ける2人を見て、そういえばいただきますの習慣をつけさせるのを忘れていた、と思い出した。
とはいえこの店はリチャトさんの店だ。
勝手なルールはつけてはいけないな。
後で交渉してみよう。
そう思いながら、ぱくぱくと美味しそうに食べるご婦人2人を見つめた。
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