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第二章:サジェット食堂
3話 お肉たっぷり!濃厚肉じゃが③
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鍋がゴトゴトと音をたて、オイスターソースの香りで厨房が満たされる。
「……そろそろかな」
よっこいしょと丸椅子から腰を上げ、鍋のもとにいく。
パカっと鍋の蓋を開けると、もくもくと大量の湯気と共にいい香りが顔を直撃する。
湯気が少し晴れてきたら、木のおたまでくるくると鍋の中をかき混ぜる。
恐る恐る、鍋の中を覗いた。
「よし!上手くできた!」
そう小さくつぶやいて、ガッツポーズをする。
オイスターソースで肉じゃがを作るなんて個人的には前代未聞だったが、見た目的には予想より上手くできたと思う。
端に寄せていた味見用の皿とスプーンをとり、少しだけじゃがいもを崩してスープと掬う。
ずずっ
ひと啜り、熱いことも気にせずに一気にいく。
「私やっぱ天才だわ」
従来の肉じゃがを知っている人からすれば、これを肉じゃがということに抵抗を感じるかもしれないが、個人的にはめちゃくちゃイケてる味に仕上がった。
コッテリとしたスープに、ほくほくとしたじゃがいもがそれを和らげてくれる。
野菜の旨味がぎゅっと詰まっているおかげで、オイスターソースの味が少し柔らかくなって、心が温まる味になっている。
これはいけたでしょ。
心の中でふふふと笑いながらさらに盛り付けていく。
「できました。こちら、肉じゃがです」
「できたのかい。ふうん、30分ぐらいか。まあ時間は良しとしよう。ただ、ニクジャガなんて料理、初めて聞いたけどね……」
「私が元々住んでいた所の、家庭料理です。ちょうどこの食堂の雰囲気にも合うかと思いまして」
「そうかい。じゃあ食べさせてもらうよ」
リチャトさんが大きく口を開けて、肉じゃがを飲み込んでいく。
何度も咀嚼を繰り返し、口に入れるを繰り返しているので、あんなに自信があったのに少し不安になってくる。
「あの、お味はいかがですか……」
「……こんなに美味しい料理は、ワッチカに行った時以来だよ!!!君、いやチヒロ!即採用させてちょうだい!」
「わ、わかりました!ありがとうございます!よろしくお願いします!」
少し、リチャトさんの迫力に押されたが、つまりは私の料理が美味しすぎたということだろう。
批判的な目で見ていたくせに、と少しいじけながら黙々と食べるリチャトさんを見つめる。
こうやって、私の料理で自分の考え方が変わっていく人が増えたらいいな、そう思った。
そんなことを考えているうちに、リチャトさんはあっという間に肉じゃがを平らげていた。
「本当に……こんなに美味しい料理を食べたのは久しぶりだよ。あんた一体何者……」
「セントラルに拾われたただの一般人ですよ」
「そんな訳、まあいいさ。これからよろしく頼む。改めて、店主で料理長のリチャトだ。料理長、と言ってもここで料理をしているのはあたしだけだけどね」
なるほど、通りで調理器具が少ないと思った。
そもそも、このサイズの厨房に何人もの人がひしめき合ったら料理がしにくくて仕方ないだろうけど。
「こちらこそ、よろしくお願いします。ところで、この肉じゃが、すぐにお客様にお出しできるように多めに作ったのですが、メニューに付け加えていただけませんでしょうか」
「はっ、受かる前提だったってのかい。肝っ玉が座った娘だよ全く。わかったよ、今日から店に並べてあげよう」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「ただし、うちの分のメニューもきっちり作って売るからね。客足を増やさなきゃならない」
「わかりました!ここの味も教えてください!」
こうして、私のサジェット食堂でのバイト生活は始まった。
「……そろそろかな」
よっこいしょと丸椅子から腰を上げ、鍋のもとにいく。
パカっと鍋の蓋を開けると、もくもくと大量の湯気と共にいい香りが顔を直撃する。
湯気が少し晴れてきたら、木のおたまでくるくると鍋の中をかき混ぜる。
恐る恐る、鍋の中を覗いた。
「よし!上手くできた!」
そう小さくつぶやいて、ガッツポーズをする。
オイスターソースで肉じゃがを作るなんて個人的には前代未聞だったが、見た目的には予想より上手くできたと思う。
端に寄せていた味見用の皿とスプーンをとり、少しだけじゃがいもを崩してスープと掬う。
ずずっ
ひと啜り、熱いことも気にせずに一気にいく。
「私やっぱ天才だわ」
従来の肉じゃがを知っている人からすれば、これを肉じゃがということに抵抗を感じるかもしれないが、個人的にはめちゃくちゃイケてる味に仕上がった。
コッテリとしたスープに、ほくほくとしたじゃがいもがそれを和らげてくれる。
野菜の旨味がぎゅっと詰まっているおかげで、オイスターソースの味が少し柔らかくなって、心が温まる味になっている。
これはいけたでしょ。
心の中でふふふと笑いながらさらに盛り付けていく。
「できました。こちら、肉じゃがです」
「できたのかい。ふうん、30分ぐらいか。まあ時間は良しとしよう。ただ、ニクジャガなんて料理、初めて聞いたけどね……」
「私が元々住んでいた所の、家庭料理です。ちょうどこの食堂の雰囲気にも合うかと思いまして」
「そうかい。じゃあ食べさせてもらうよ」
リチャトさんが大きく口を開けて、肉じゃがを飲み込んでいく。
何度も咀嚼を繰り返し、口に入れるを繰り返しているので、あんなに自信があったのに少し不安になってくる。
「あの、お味はいかがですか……」
「……こんなに美味しい料理は、ワッチカに行った時以来だよ!!!君、いやチヒロ!即採用させてちょうだい!」
「わ、わかりました!ありがとうございます!よろしくお願いします!」
少し、リチャトさんの迫力に押されたが、つまりは私の料理が美味しすぎたということだろう。
批判的な目で見ていたくせに、と少しいじけながら黙々と食べるリチャトさんを見つめる。
こうやって、私の料理で自分の考え方が変わっていく人が増えたらいいな、そう思った。
そんなことを考えているうちに、リチャトさんはあっという間に肉じゃがを平らげていた。
「本当に……こんなに美味しい料理を食べたのは久しぶりだよ。あんた一体何者……」
「セントラルに拾われたただの一般人ですよ」
「そんな訳、まあいいさ。これからよろしく頼む。改めて、店主で料理長のリチャトだ。料理長、と言ってもここで料理をしているのはあたしだけだけどね」
なるほど、通りで調理器具が少ないと思った。
そもそも、このサイズの厨房に何人もの人がひしめき合ったら料理がしにくくて仕方ないだろうけど。
「こちらこそ、よろしくお願いします。ところで、この肉じゃが、すぐにお客様にお出しできるように多めに作ったのですが、メニューに付け加えていただけませんでしょうか」
「はっ、受かる前提だったってのかい。肝っ玉が座った娘だよ全く。わかったよ、今日から店に並べてあげよう」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「ただし、うちの分のメニューもきっちり作って売るからね。客足を増やさなきゃならない」
「わかりました!ここの味も教えてください!」
こうして、私のサジェット食堂でのバイト生活は始まった。
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