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第二章:サジェット食堂
1話 お肉たっぷり!濃厚肉じゃが①
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オムレツも食べ終え、食器も片付けたところでリッタさんが仕事から帰ってきた。
どうやらこの国は女性が働くことも当たり前になっていて、私が戸籍登録をした役場の事務員として働いているという。
「ああ~疲れたわ。今日のおやつは何にしたの?」
「オムレツ、という卵焼きを作りました。塩とバターと卵だけで、材料も少なく済むんですよ」
「おやつって甘いものじゃなくてもいいのね!私も食べてみたかったわ」
「ふふ、またいつでも作りますよ!」
「楽しみにしてるわ~あと、敬語。戻ってるわよ」
私は、リッタさんと呼び変えると同時に、敬語を外すことを約束した。
それでも、一度ついてしまった癖というのは中々取れないものだ。
気をつけよう、と頬をかきながら、オムレツを食べていた時に聞きたかったことを思い出す。
「そうだ、リッタさん。私も仕事始めようと思うんだけど、どこかいいところない?」
「仕事!?そうねえ、確かにしたほうがこの世界のことをしれるわよね」
「それもあるし、この家にお金を入れたいなと思って」
「そんなこと気にしなくてもいいのに!まあ、でもそうね、そっちの方がいいって言うなら否定はしないわ。確か、役場に求人募集があったから、明日見てくるわね」
「ありがとう!お願いします!」
ひとまず、仕事の問題は解決しそうだ。
元の世界でも、バイト以外仕事なんてしたことはないが、予備知識が入っていない分、この世界に染まれると考えれば、逆によかったのかもしれない。
どんな仕事でも、頑張ってみよう。
そう思いながら、与えてもらった自室に戻った。
自室は、初めに寝かせてもらっていた部屋だ。
ちょうど、空き部屋になっていたらしい。リベラルの次の子ができた時にと思って残しておいた部屋だそうだ。
次の子にすれば随分と大きな子供が入ることになってしまったが。
ふと、ベッドの下に何かが見えた。
この家の物だったら、触らない方がいいかもしれないが、芽生えた好奇心は抑えられない。
そろりと手を伸ばして、下にあるものを掴んだ。
ガサリ
重たい音がして、出てきたのは見覚えのある書店の袋だった。
なんでここにこんなものが?
目を凝らせば、書店の袋の奥にもうひとつ何かがあるのが見えた。
ズルリと引き出せば、私が愛用していた鞄が最後に見た時よりも擦り傷が増えて出てきた。
「何これ……」
呆然としていると、後ろのドアがガチャリと開いた。
「チヒロさん、仕事の件なんだけど……って、ああ!それ!そういえば忘れてたわ!それね、チヒロさんが倒れてたすぐそばに落ちていたのよ。もしかしたら、と思って保管してたのよ」
「これ、私の……前の世界で最後に持っていたやつ……」
「それならよかったわ!他の人のだと大事だしね!」
まさか、これも一緒に飛んできていたなんて。
聖女召喚の時に誤って召喚されたというレシピ本しかないと思っていた。
いや、レシピ本だけでも、日本にいたという証があれば心の支えになる、そう思っていたのに。
一度、持っていたものをベッドの上に全て置く。
レシピ本6冊に、やりかけのレポート、ノートパソコン、履歴書の書き方の本、スマホに家の鍵、メイクポーチに……
日本を思い出させる物ばかりが入っていた。
でも、私は向こうではもう死んだ存在。
目の前に並んだ物たちが、もう戻ることはできないのだと物語っているようで、切なくなった。
「大丈夫?やっぱり、元の世界を思い出しちゃう?」
「うん、少し……でも、この世界に来たってことは、もう向こうで私は死んでるから。ここで、命を繋げられているだけでも嬉しい」
「私たちにはわからないぐらいの悲しみがチヒロさんにはあると思うわ。いつでも無理せず、わたしたちを頼ってね」
「うん、ありがとう……それで、話っていうのは?」
「ああもう!私としたことが、忘れてしまってたわ!お仕事なんだけどね、そういえば、近所のサジェット食堂が求人を出していたなと思って!チヒロさん、料理が上手だし、そういう職についた方が、慣れるとは思うのよね」
なるほど、それは私にとって願ってもない話だ。
得意分野の料理で働かせてもらえるなんて。
その上、気になっていた食生活も同時に改善させる事ができるかもしれない。
まるで一石二鳥だ。
ただひとつ、心配に思う事があった。
「ここの食文化についていけますかね……」
「それはそうね……店長のリチャトは食に探究心がある人だから、チヒロさんの料理を振る舞えばイチコロだと思うわよ!」
それはつまり、とりあえずお前の料理で勝負しろ!という事なのだろうか……
どうやらこの国は女性が働くことも当たり前になっていて、私が戸籍登録をした役場の事務員として働いているという。
「ああ~疲れたわ。今日のおやつは何にしたの?」
「オムレツ、という卵焼きを作りました。塩とバターと卵だけで、材料も少なく済むんですよ」
「おやつって甘いものじゃなくてもいいのね!私も食べてみたかったわ」
「ふふ、またいつでも作りますよ!」
「楽しみにしてるわ~あと、敬語。戻ってるわよ」
私は、リッタさんと呼び変えると同時に、敬語を外すことを約束した。
それでも、一度ついてしまった癖というのは中々取れないものだ。
気をつけよう、と頬をかきながら、オムレツを食べていた時に聞きたかったことを思い出す。
「そうだ、リッタさん。私も仕事始めようと思うんだけど、どこかいいところない?」
「仕事!?そうねえ、確かにしたほうがこの世界のことをしれるわよね」
「それもあるし、この家にお金を入れたいなと思って」
「そんなこと気にしなくてもいいのに!まあ、でもそうね、そっちの方がいいって言うなら否定はしないわ。確か、役場に求人募集があったから、明日見てくるわね」
「ありがとう!お願いします!」
ひとまず、仕事の問題は解決しそうだ。
元の世界でも、バイト以外仕事なんてしたことはないが、予備知識が入っていない分、この世界に染まれると考えれば、逆によかったのかもしれない。
どんな仕事でも、頑張ってみよう。
そう思いながら、与えてもらった自室に戻った。
自室は、初めに寝かせてもらっていた部屋だ。
ちょうど、空き部屋になっていたらしい。リベラルの次の子ができた時にと思って残しておいた部屋だそうだ。
次の子にすれば随分と大きな子供が入ることになってしまったが。
ふと、ベッドの下に何かが見えた。
この家の物だったら、触らない方がいいかもしれないが、芽生えた好奇心は抑えられない。
そろりと手を伸ばして、下にあるものを掴んだ。
ガサリ
重たい音がして、出てきたのは見覚えのある書店の袋だった。
なんでここにこんなものが?
目を凝らせば、書店の袋の奥にもうひとつ何かがあるのが見えた。
ズルリと引き出せば、私が愛用していた鞄が最後に見た時よりも擦り傷が増えて出てきた。
「何これ……」
呆然としていると、後ろのドアがガチャリと開いた。
「チヒロさん、仕事の件なんだけど……って、ああ!それ!そういえば忘れてたわ!それね、チヒロさんが倒れてたすぐそばに落ちていたのよ。もしかしたら、と思って保管してたのよ」
「これ、私の……前の世界で最後に持っていたやつ……」
「それならよかったわ!他の人のだと大事だしね!」
まさか、これも一緒に飛んできていたなんて。
聖女召喚の時に誤って召喚されたというレシピ本しかないと思っていた。
いや、レシピ本だけでも、日本にいたという証があれば心の支えになる、そう思っていたのに。
一度、持っていたものをベッドの上に全て置く。
レシピ本6冊に、やりかけのレポート、ノートパソコン、履歴書の書き方の本、スマホに家の鍵、メイクポーチに……
日本を思い出させる物ばかりが入っていた。
でも、私は向こうではもう死んだ存在。
目の前に並んだ物たちが、もう戻ることはできないのだと物語っているようで、切なくなった。
「大丈夫?やっぱり、元の世界を思い出しちゃう?」
「うん、少し……でも、この世界に来たってことは、もう向こうで私は死んでるから。ここで、命を繋げられているだけでも嬉しい」
「私たちにはわからないぐらいの悲しみがチヒロさんにはあると思うわ。いつでも無理せず、わたしたちを頼ってね」
「うん、ありがとう……それで、話っていうのは?」
「ああもう!私としたことが、忘れてしまってたわ!お仕事なんだけどね、そういえば、近所のサジェット食堂が求人を出していたなと思って!チヒロさん、料理が上手だし、そういう職についた方が、慣れるとは思うのよね」
なるほど、それは私にとって願ってもない話だ。
得意分野の料理で働かせてもらえるなんて。
その上、気になっていた食生活も同時に改善させる事ができるかもしれない。
まるで一石二鳥だ。
ただひとつ、心配に思う事があった。
「ここの食文化についていけますかね……」
「それはそうね……店長のリチャトは食に探究心がある人だから、チヒロさんの料理を振る舞えばイチコロだと思うわよ!」
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