14 / 56
第一章:セントラル家
10話 ほかほか!ふわとろオムレツ②
しおりを挟む
あの話の後、色々とリッタさんにこの世界の常識、システムなどを教えてもらった。
『リッタさん』と心の中でも呼ぶようになったのは、家族として、少しでも距離を縮めなければ失礼だと思ったからだ。
いつかは呼び捨てにできるようになってね、そうリッタさんに言われ、目が覚めるような思いになった。
晩御飯もリッタさんと仲良くキッチンに作り、簡単に作れるミネストローネの作り方を教えた。
というのも、いくら野菜を育てているからといっても、主食は肉だったそう。
穀物や野菜をバランスよく摂らないと不健康になって早死にしますよ、と脅すと、野菜を使った料理を教えてほしい!頼まれたのだ。
そしてこの村、『リーズ村』に住む人たちはセントラル家よりもひどい食生活をしていた。
私を、セントラル家の養女として戸籍登録をするために、一度外に出たのだが、そこで入った料理屋の料理はひどいものだった。
肉!肉!肉!肉!肉!!!
メニュー表には、これでもかと肉が盛られたものしかなく、穀物といえば、申し訳程度にオーツ麦の炒め物があった程度だった。
あんまりのひどさに呆れつつ、都会に出たての私だったら、喜んで食べていただろうなと反省する。
そんなことがありつつ、役場に行って戸籍登録を無事済ませ、晴れて私は『チヒロ=セントラル』となった。
なんだか語感的に擽ったいような感じがするが、この名前が、一家の決意の象徴だと思うと、大切にしなければならないなと思った。
これが、この世界に来て目覚めてからの2日間の話だ。
今はリベラルと共に、オムレツを作っていたところだ。
どうやら、プリンを食べてから卵料理にハマったらしく、やたら卵を使った料理を出してほしいとせがむので、リベラルでもお手伝いができるように、簡単なオムレツを選んだ。
ほかほかと湯気があがるオムレツに、キラキラとした視線を向けるリベラル。
今すぐにでも食べたいのか、うずうずと手がフォークに伸びたり、オムレツを突いたりしている。
「こらー。食べる前は何をしないといけなかった?」
「はっ!!手洗いといただきます!」
「じゃあ手洗いはしましたかー?」
「まだっ!!!!するっ!!!」
勢いよくだだだっとリベラルが洗面所に走っていく間に、オムレツに最後の仕上げをする。
ここには、生クリームがなかったため、バターもなかったのだが、遠心分離で牛乳から生クリームを作り、ついでにバターも作ってやったのだ。
ここの主流とされている牛乳は水牛の乳なので、普通のものより乳脂肪が多く、生クリームが作りやすい。
こんな好条件なのに、生クリームがないだなんて勿体無い。
そうしてできたバターは手作りのため、市販の食べ慣れたものより生クリームっぽい味がするが、それでも美味しいんだからバターは罪な食材だ。
バターをポトンとオムレツの上に落とす。
じわあっとオムレツの上で溶けて広がっていくバターを見て、思わず頬がゆるんでしまった。
「チヒローーッ!洗ってきた!!って、それ、さっきのバター?」
「そうだよ、オムレツの上に乗せたり、ホットケーキっていうおやつの上に乗せたりすると倍美味しくなるんだよ!さあ、食べよう!手を合わせて、いただきます!」
「いただきます!!」
すっかりこの2日でいただきますが板についたリベラルは、体型も少し変化した。
コロンとした雰囲気だったのが、少しスッキリして見える。
野菜のおかげなのか、私のおかげなのか。
少し自画自賛しつつ、オムレツを口に運ぶ。
「うん~~っまい!!美味しいよ!チヒロ!卵の味、すごくするし、ふわっふわだね!」
「ふふ、よかった。オムレツも色々種類があってね、中に野菜を混ぜるものもあるんだよ」
「ええ!野菜も入れられるの!~~っ!バターのあるところ、また味が変わって美味しいっ!」
「でしょう!これが、バターの魔力なんだよ……」
「え?バターって魔法でできてるの?」
「ううん、違うよ。虜になってしまうことを、元の世界では魔力とかの言葉で表現していたんだ」
「ふうん、やっぱりチヒロは面白いね!」
にこにことオムレツを頬張るリベラルを見て、温かい気持ちになる。
ずっとこんな時間が続けばいいのに、そう思う反面、何も働かないのもダメだと思う自分がいる。
後でリッタさんに職を紹介してもらおう、そう思いながらまた一口、オムレツを口に入れた。
『リッタさん』と心の中でも呼ぶようになったのは、家族として、少しでも距離を縮めなければ失礼だと思ったからだ。
いつかは呼び捨てにできるようになってね、そうリッタさんに言われ、目が覚めるような思いになった。
晩御飯もリッタさんと仲良くキッチンに作り、簡単に作れるミネストローネの作り方を教えた。
というのも、いくら野菜を育てているからといっても、主食は肉だったそう。
穀物や野菜をバランスよく摂らないと不健康になって早死にしますよ、と脅すと、野菜を使った料理を教えてほしい!頼まれたのだ。
そしてこの村、『リーズ村』に住む人たちはセントラル家よりもひどい食生活をしていた。
私を、セントラル家の養女として戸籍登録をするために、一度外に出たのだが、そこで入った料理屋の料理はひどいものだった。
肉!肉!肉!肉!肉!!!
メニュー表には、これでもかと肉が盛られたものしかなく、穀物といえば、申し訳程度にオーツ麦の炒め物があった程度だった。
あんまりのひどさに呆れつつ、都会に出たての私だったら、喜んで食べていただろうなと反省する。
そんなことがありつつ、役場に行って戸籍登録を無事済ませ、晴れて私は『チヒロ=セントラル』となった。
なんだか語感的に擽ったいような感じがするが、この名前が、一家の決意の象徴だと思うと、大切にしなければならないなと思った。
これが、この世界に来て目覚めてからの2日間の話だ。
今はリベラルと共に、オムレツを作っていたところだ。
どうやら、プリンを食べてから卵料理にハマったらしく、やたら卵を使った料理を出してほしいとせがむので、リベラルでもお手伝いができるように、簡単なオムレツを選んだ。
ほかほかと湯気があがるオムレツに、キラキラとした視線を向けるリベラル。
今すぐにでも食べたいのか、うずうずと手がフォークに伸びたり、オムレツを突いたりしている。
「こらー。食べる前は何をしないといけなかった?」
「はっ!!手洗いといただきます!」
「じゃあ手洗いはしましたかー?」
「まだっ!!!!するっ!!!」
勢いよくだだだっとリベラルが洗面所に走っていく間に、オムレツに最後の仕上げをする。
ここには、生クリームがなかったため、バターもなかったのだが、遠心分離で牛乳から生クリームを作り、ついでにバターも作ってやったのだ。
ここの主流とされている牛乳は水牛の乳なので、普通のものより乳脂肪が多く、生クリームが作りやすい。
こんな好条件なのに、生クリームがないだなんて勿体無い。
そうしてできたバターは手作りのため、市販の食べ慣れたものより生クリームっぽい味がするが、それでも美味しいんだからバターは罪な食材だ。
バターをポトンとオムレツの上に落とす。
じわあっとオムレツの上で溶けて広がっていくバターを見て、思わず頬がゆるんでしまった。
「チヒローーッ!洗ってきた!!って、それ、さっきのバター?」
「そうだよ、オムレツの上に乗せたり、ホットケーキっていうおやつの上に乗せたりすると倍美味しくなるんだよ!さあ、食べよう!手を合わせて、いただきます!」
「いただきます!!」
すっかりこの2日でいただきますが板についたリベラルは、体型も少し変化した。
コロンとした雰囲気だったのが、少しスッキリして見える。
野菜のおかげなのか、私のおかげなのか。
少し自画自賛しつつ、オムレツを口に運ぶ。
「うん~~っまい!!美味しいよ!チヒロ!卵の味、すごくするし、ふわっふわだね!」
「ふふ、よかった。オムレツも色々種類があってね、中に野菜を混ぜるものもあるんだよ」
「ええ!野菜も入れられるの!~~っ!バターのあるところ、また味が変わって美味しいっ!」
「でしょう!これが、バターの魔力なんだよ……」
「え?バターって魔法でできてるの?」
「ううん、違うよ。虜になってしまうことを、元の世界では魔力とかの言葉で表現していたんだ」
「ふうん、やっぱりチヒロは面白いね!」
にこにことオムレツを頬張るリベラルを見て、温かい気持ちになる。
ずっとこんな時間が続けばいいのに、そう思う反面、何も働かないのもダメだと思う自分がいる。
後でリッタさんに職を紹介してもらおう、そう思いながらまた一口、オムレツを口に入れた。
0
お気に入りに追加
329
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

私、平凡ですので……。~求婚してきた将軍さまは、バツ3のイケメンでした~
玉響なつめ
ファンタジー
転生したけど、平凡なセリナ。
平凡に生まれて平凡に生きて、このまま平凡にいくんだろうと思ったある日唐突に求婚された。
それが噂のバツ3将軍。
しかも前の奥さんたちは行方不明ときたもんだ。
求婚されたセリナの困惑とは裏腹に、トントン拍子に話は進む。
果たして彼女は幸せな結婚生活を送れるのか?
※小説家になろう。でも公開しています
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる