異世界に転移したので国民全員の胃袋を掴みます

りゆ

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第一章:セントラル家

1話 さっぱり!ヘルシーサラダ①

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「さて、今日作るのはオンドクルの丸焼きよ!ここのソウルフードね!」
「オンドクル……というのは?」
「そうね、言えば牛と馬を合わせたような感じかしら。リブヘンブルグにしか生息してない魔獣ね!でも、すっごく美味しいの!肉汁が多いのが特徴ね!」
「へえ!それは楽しみですが……どこで焼くんですか?」
「庭よ!普通の牛並みに大きいから、流石にキッチンには入らないわ」

こっちこっちとリッタ夫人に手招きされて、キッチン奥の勝手口から庭にでた。

「わあ!広いですね!え!?家庭菜園まで!?」

目に飛び込んできたのは、オンドクルと思われる奇妙な見た目をした牛を木の棒に括り付けるヘールとリベラル、そしてテニスコート一面ほどの大きさの畑だった。

「ふふ、そうなの。さっき、私は成長魔法がスキルだと言ったでしょう?」
「はい。普通の人より100倍の能力値があるとか」
「正解よ!ちょうどね、リベラルのスキルが水魔法だったから、野菜を育ててみようと思って2年前からはじめたのよね」
「そうなんですね!とっても素敵だと思います!」

そう話していると、私達が出てきたのに気づいたのかリベラルがこっちに走り寄ってきた。

「母さん!チヒロ!どうして出てきたの?」
「チヒロさんがね、料理が得意だっていうの。だからちょっと一緒に菜園に行こうと思ってね」
「えー!!チヒロ、料理魔法がスキルなの?」
「そ、そうじゃないよ!実家がね、料理屋だったの」

あまり実家が弁当屋だということを明かしてこなかったため、改めて言うと気恥ずかしさが出てきた。
なんともいたたまれない気持ちになって、慌てて次の言葉を探す。

「えーっと、菜園に行くんでしたよね?案内お願いします!」
「そうね!ぼやぼやしてると先に丸焼きが出来上がってしまうわね。リベラル、ちゃんと父さんのお手伝いするのよ」
「し、してるもん!もう!はやく行ってきなよ!」

ちょっと慌てたようなリベラルに見送られながら、私たちは菜園へと向かった。

「そんな大したものは育ててないけど……ここが私たちの菜園よ」
「ええ!こんなにみずみずしい野菜を見たの、久しぶりですよ!」
「嬉しいこと言ってくれるわね~!うちでよく使うのはレタスとコーンなんだけど、チヒロさんがよく使うものってここにあるかしら?」
「そうですね……」

ざっと菜園を見回してみる。
遠目から見たより、多くの野菜が育てられているようで、馴染み深い見た目のものが多かった。
それに、気候条件が揃わないと育たない野菜も多く見られる。
全く違う環境でしか育たない野菜たちが共存していることを考えると、これも成長魔法の賜物なのだろうか。

「そうですね、この中だとトマトと大葉を使ったサラダが手軽でいいと思います!」
「まあ!見ただけでわかるのね!さすが料理屋の子だわ!」
「いや……そうでもないですよ!あとは、よくコーンを使うならそれを入れてみてもいいですね!」
「いいわね!そしたら手っ取り早く収穫しちゃいましょう!」

そうして収穫し終えた私たちは、キッチンへと戻るのであった。
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