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序章
3話 異世界にやってきた!?③
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「チヒロさんはなるべく座って休んでいたほうがいいわね」
そう言って優しくリッタ夫人は私の肩に毛布をかけようとしてくれた。
「……あ、私の実家は料理屋だったんです。私も料理が好きなので良ければお手伝いさせてください!」
「あら!?そうなの!それはとっても助かるわ!ただ、あなたが住んでいたところとここでは食生活がだいぶ違うと思うのよね」
「そうなんですか?確かに少しは違うとは思いますが……」
「ここでは野菜が採れないのよね。だから基本的に食事は肉がメインだわ」
「……野菜が採れないとは?」
リッタ夫人から聞かされた内容は衝撃的なものだった。
まず、野菜が採れない理由は水害と魔法による影響だった。
私が今いる国は『リブヘンブルグ』というらしく、卵型に南に広がる形の大きな盆地になっているそうだ。
北側と西側の山は特に険しく、上流に溜まった水が勢いよく流れてしまう。必然的に土砂崩れが多くなり、農地として安定に稼働できる土地が少なくなっていった。
そのため、農地が確保できないからと南側と東側に広げようとしたが、南側は段々と乾いた土地になっていき、東側のみでしか栽培ができないそうなのだ。
しかも、東側は鉱石がよくとれるため、農作物の栽培は二の次になっているらしい。
結果的に市場に出回る野菜の数はごく僅かで、あまり食べられなくなっていったという訳だ。
魔法による影響というのは『成長魔法』を使用した野菜の栽培方法らしい。
魔法により、無理矢理野菜を急速に成長させるのだが、野菜に負担がかかってしまい、あまり美味しくはないそうなのだ。
美味しく作れるのは、成長魔法を『スキル』としている者だけらしい。リッタ夫人もその中の1人だそうだ。
『スキル』は誰しも生まれた時から所持しているもので、その魔法だけ他の人より100倍の能力で使えるものらしい。
未だ魔法が日常的に使用されているということに現実味を持てていないが、これも聖女が関係しているようだ。
先ほども聞いた『魔法の核』は各家庭に分配され、魔力でその塔と『核』とを繋げ、水、熱、光を供給するのだそうだ。
なるほど、だからライフラインと言われているのだ。
なんとも利己的な聖女の使い方に私は辟易としたがリッタ夫人の口ぶり的に特に違和感を持たないようにされている感じがした。
とはいえ、やはり異常なこの世界に順応できるのかと不安に思う。
「……大丈夫?顔色が悪いわ。やっぱりまだ体は本調子じゃないのなら無理に手伝ってもらわなくてもいいのよ」
「いえ!大丈夫です!ただ、少しびっくりしただけで……さあ、お料理をはじめましょう!」
「まあ本人が言うならいいけど……つらくなったらすぐに言うのよ?」
「はい!」
そう言って優しくリッタ夫人は私の肩に毛布をかけようとしてくれた。
「……あ、私の実家は料理屋だったんです。私も料理が好きなので良ければお手伝いさせてください!」
「あら!?そうなの!それはとっても助かるわ!ただ、あなたが住んでいたところとここでは食生活がだいぶ違うと思うのよね」
「そうなんですか?確かに少しは違うとは思いますが……」
「ここでは野菜が採れないのよね。だから基本的に食事は肉がメインだわ」
「……野菜が採れないとは?」
リッタ夫人から聞かされた内容は衝撃的なものだった。
まず、野菜が採れない理由は水害と魔法による影響だった。
私が今いる国は『リブヘンブルグ』というらしく、卵型に南に広がる形の大きな盆地になっているそうだ。
北側と西側の山は特に険しく、上流に溜まった水が勢いよく流れてしまう。必然的に土砂崩れが多くなり、農地として安定に稼働できる土地が少なくなっていった。
そのため、農地が確保できないからと南側と東側に広げようとしたが、南側は段々と乾いた土地になっていき、東側のみでしか栽培ができないそうなのだ。
しかも、東側は鉱石がよくとれるため、農作物の栽培は二の次になっているらしい。
結果的に市場に出回る野菜の数はごく僅かで、あまり食べられなくなっていったという訳だ。
魔法による影響というのは『成長魔法』を使用した野菜の栽培方法らしい。
魔法により、無理矢理野菜を急速に成長させるのだが、野菜に負担がかかってしまい、あまり美味しくはないそうなのだ。
美味しく作れるのは、成長魔法を『スキル』としている者だけらしい。リッタ夫人もその中の1人だそうだ。
『スキル』は誰しも生まれた時から所持しているもので、その魔法だけ他の人より100倍の能力で使えるものらしい。
未だ魔法が日常的に使用されているということに現実味を持てていないが、これも聖女が関係しているようだ。
先ほども聞いた『魔法の核』は各家庭に分配され、魔力でその塔と『核』とを繋げ、水、熱、光を供給するのだそうだ。
なるほど、だからライフラインと言われているのだ。
なんとも利己的な聖女の使い方に私は辟易としたがリッタ夫人の口ぶり的に特に違和感を持たないようにされている感じがした。
とはいえ、やはり異常なこの世界に順応できるのかと不安に思う。
「……大丈夫?顔色が悪いわ。やっぱりまだ体は本調子じゃないのなら無理に手伝ってもらわなくてもいいのよ」
「いえ!大丈夫です!ただ、少しびっくりしただけで……さあ、お料理をはじめましょう!」
「まあ本人が言うならいいけど……つらくなったらすぐに言うのよ?」
「はい!」
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