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序章
間話 ちひろの手記①
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ーーーなんてこともない田舎上がり都心部在住の大学生。
ついさっきまではそうだったんだ。
大学にあがってから私の周りはいつもキラキラしてた。
初めて見る高層ビル、カフェ、デパコス。
周りの友達は街と同じくらいキラキラ輝いていて、毎日ぱっちりメイクだってキメてた。
私も必死に追いつきたくていろんなことを勉強した。
ビューラーの使い方、眉毛の描き方、シャドウののせ方、ラインの引き方。
でもやっぱり中学とか高校からキラキラしたものに囲まれてる子たちには敵わなかった。
あんなに憧れてた都会なのに、息苦しくなっていった。
中学の頃から都会に憧れ始めた。
大学なんてどこだっていいからとにかく都心部に近いところを探した。
はっきり言って、大学の授業はつまらない。
友達関係だって苦しい。
でも、都会に出るため、いやあの田舎から脱出するにはこうしか思いつかなかった。
私の家は祖父から続く弁当屋だ。
弁当屋といっても請け負う範囲は大きい。
村に1つだけある小学校の給食の提供、出前、定食。
もはや弁当屋というより食に関することならうち、という風潮になりつつあった。
これも、じいちゃんと父さんがお人好しだったから故である。
自分の家が赤字になっても、出前の注文が桁外れにきたって、体調を崩したって2人は働き続けた。
私はそれが理解できなかった。
2人の行動も、仕方ないなと笑って許すばあちゃんも母さんも。
次第にあの家が窮屈で嫌いになってきた。
嫌いになってきたら嫌なところなんて山程見えてきた。
手作りにこだわって市販で普通に買えるものも作るところも。
休みだからって勉強してるのに料理を手伝わされることも。
料理だけで家族全員手一杯なのに家庭菜園までやってるところも。
ボロくてガタガタで歩くたびにギィギィ軋む床も。
古びた昭和っぽい家に食堂も。
それだったのに、私は都会に出てきてからも手作りを続けていた。
初めて都会に出てきて、ファーストフードをお持ち帰りした日、私は全て食べたものをもどしてしまった。
あんなに楽しみにしていたファーストフードを胃が受けつけなかったのだ。
私はまだ田舎に囚われ続けないといけないのか、そう思った。
それでもその時は、私は外に食べに行くということに一種のステータスを感じていた。
毎夜コンビニに行ってホットスナックを買う、居酒屋で肉ばかり食べる、それに優越感を感じていた。
そんなことを続けていると次第に胃が荒れ、肌が荒れ、体型が変化した。
いよいよ友人から体型を指摘された時、自分の食生活がおかしいことに気づいた。
私はみんなから羨まれる体型だったはずだ。
ここまで外食を続けると人間は変化してしまうのかと恐ろしさも感じた。
その日から、あんなに田舎にいる時に嫌悪していた手作りを再開した。
料理は存外楽しかった。
たくさんレシピをネットから拾ってきて、アレンジだってした。
夜の一食だけ作っていたのが、昼のお弁当を作るようになった。
朝は抜いていたのを、早起きして作るようになった。
家に来る友達に、彼氏に、振る舞うようになった。みんな笑顔で美味しいと言ってくれた。
『美味しい』
その言葉が人間関係で荒んでいた私の心をじんわりと温めた。
その時気づいたんだ、ああ、家族が望んでいたのは、頑張れていたのはこの言葉だったんだなと。
言葉だけじゃない、心底美味しいと言ってくれる時の表情も好きだったんだなと。
あの日は、ネットのレシピに限界を感じてレシピ本を買いに行った。
料理をするようになって、好きな料理家も伴って増えていった。
たくさんお気に入りのレシピ本を買って店を出た時、
目の前からトラックが突っ込んできたんだ。
ついさっきまではそうだったんだ。
大学にあがってから私の周りはいつもキラキラしてた。
初めて見る高層ビル、カフェ、デパコス。
周りの友達は街と同じくらいキラキラ輝いていて、毎日ぱっちりメイクだってキメてた。
私も必死に追いつきたくていろんなことを勉強した。
ビューラーの使い方、眉毛の描き方、シャドウののせ方、ラインの引き方。
でもやっぱり中学とか高校からキラキラしたものに囲まれてる子たちには敵わなかった。
あんなに憧れてた都会なのに、息苦しくなっていった。
中学の頃から都会に憧れ始めた。
大学なんてどこだっていいからとにかく都心部に近いところを探した。
はっきり言って、大学の授業はつまらない。
友達関係だって苦しい。
でも、都会に出るため、いやあの田舎から脱出するにはこうしか思いつかなかった。
私の家は祖父から続く弁当屋だ。
弁当屋といっても請け負う範囲は大きい。
村に1つだけある小学校の給食の提供、出前、定食。
もはや弁当屋というより食に関することならうち、という風潮になりつつあった。
これも、じいちゃんと父さんがお人好しだったから故である。
自分の家が赤字になっても、出前の注文が桁外れにきたって、体調を崩したって2人は働き続けた。
私はそれが理解できなかった。
2人の行動も、仕方ないなと笑って許すばあちゃんも母さんも。
次第にあの家が窮屈で嫌いになってきた。
嫌いになってきたら嫌なところなんて山程見えてきた。
手作りにこだわって市販で普通に買えるものも作るところも。
休みだからって勉強してるのに料理を手伝わされることも。
料理だけで家族全員手一杯なのに家庭菜園までやってるところも。
ボロくてガタガタで歩くたびにギィギィ軋む床も。
古びた昭和っぽい家に食堂も。
それだったのに、私は都会に出てきてからも手作りを続けていた。
初めて都会に出てきて、ファーストフードをお持ち帰りした日、私は全て食べたものをもどしてしまった。
あんなに楽しみにしていたファーストフードを胃が受けつけなかったのだ。
私はまだ田舎に囚われ続けないといけないのか、そう思った。
それでもその時は、私は外に食べに行くということに一種のステータスを感じていた。
毎夜コンビニに行ってホットスナックを買う、居酒屋で肉ばかり食べる、それに優越感を感じていた。
そんなことを続けていると次第に胃が荒れ、肌が荒れ、体型が変化した。
いよいよ友人から体型を指摘された時、自分の食生活がおかしいことに気づいた。
私はみんなから羨まれる体型だったはずだ。
ここまで外食を続けると人間は変化してしまうのかと恐ろしさも感じた。
その日から、あんなに田舎にいる時に嫌悪していた手作りを再開した。
料理は存外楽しかった。
たくさんレシピをネットから拾ってきて、アレンジだってした。
夜の一食だけ作っていたのが、昼のお弁当を作るようになった。
朝は抜いていたのを、早起きして作るようになった。
家に来る友達に、彼氏に、振る舞うようになった。みんな笑顔で美味しいと言ってくれた。
『美味しい』
その言葉が人間関係で荒んでいた私の心をじんわりと温めた。
その時気づいたんだ、ああ、家族が望んでいたのは、頑張れていたのはこの言葉だったんだなと。
言葉だけじゃない、心底美味しいと言ってくれる時の表情も好きだったんだなと。
あの日は、ネットのレシピに限界を感じてレシピ本を買いに行った。
料理をするようになって、好きな料理家も伴って増えていった。
たくさんお気に入りのレシピ本を買って店を出た時、
目の前からトラックが突っ込んできたんだ。
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