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序章
1話 異世界にやってきた!?①
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じゅわああっっ!!
豪快な音とともにもくもくと湯気は上がり、卵とバターの香りがが充満する。
じゅわじゅわと音をたてながらフライパンの中で卵液がゆらりと揺れる。
少し外側が硬くなり、内側に巻いてきたら本領発揮だ。
くるくると中心から優しく箸で混ぜる。
ある程度半熟になったところで端からゆっくり卵を自分側に寄せればここから腕の見せ所。
とんとんとんっと優しく柄のところを叩き、フライパンを揺らす。
卵がラグビー型にまとまれば最後は盛り付けだ。
皿のところまでフライパンを持っていき、そして卵を慎重に皿の上に転がす。
見事に皿の白色と卵の黄色がマッチし--
「完成よ!」
私の言葉に、隣で見守るリベラルは見たこともないぐらい顔を輝かせていた。
時は戻り2日前、私はこのセントラル家のベッドの上で目覚めた。
全く知らない天井に、顔を横に向ければ見知らぬ可憐な少女がすやすやと気持ちよさそうにベッドに突っ伏す形で座りながら寝ている。金髪がふわふわと寝息と共に揺れ、閉じられたまつ毛は光に照らされキラキラと輝いていた。
寝起きで何も頭が働かなかったので、ただぼんやりとただ少女を見つめた。
キィィィッッ
立て付けの悪い音を鳴らしながら開いた扉から1人のご婦人が入ってきた。
「あら、目が覚めたのね?本当に心配したのよ、よかったわ」
「……あ゛の゛…」
「あら?声が枯れてしまってるわね、待ってね、今お水をあげるから」
ご婦人は持ってきた桶から水差しを出し、コップに注いで私に渡してくれた。
「はい、病み上がりなんだから水と言ってもゆっくり飲むのよ」
「……ぷはっ、ありがとうございます」
「いえいえ、飲みっぷりがよくて私も嬉しいわ、聖女様もきっとお喜びになる」
「…聖女、様ですか?」
「………あなた、聖女様を知らないの?」
まるで私の言葉が青天の霹靂かのようにご婦人は大きく目を見開いた。
水を飲んで幾分かすっきりした私には、聖女様だとかいう厨二病よろしくな話よりなぜ自分がここにいるのかの方が大問題なのだが。
「全く、わからないです。そんな非現実的な話をいきなりされても、と思いますし、それよりなぜ私がここにいるのかの方が気になります」
「…そんなことを言う人がまだいるなんて、あなたよほど古風な考え方をするのね」
「あの、古風というより現実と空想の区別をつけているだけと言いますか、それより本当になぜ私はここにいるのでしょうか?ここはどこですか?あなたのお家なのでしょうか」
私がそう言うとご婦人はこほんと1つ咳をし、この3日間のことを話してくれた。
豪快な音とともにもくもくと湯気は上がり、卵とバターの香りがが充満する。
じゅわじゅわと音をたてながらフライパンの中で卵液がゆらりと揺れる。
少し外側が硬くなり、内側に巻いてきたら本領発揮だ。
くるくると中心から優しく箸で混ぜる。
ある程度半熟になったところで端からゆっくり卵を自分側に寄せればここから腕の見せ所。
とんとんとんっと優しく柄のところを叩き、フライパンを揺らす。
卵がラグビー型にまとまれば最後は盛り付けだ。
皿のところまでフライパンを持っていき、そして卵を慎重に皿の上に転がす。
見事に皿の白色と卵の黄色がマッチし--
「完成よ!」
私の言葉に、隣で見守るリベラルは見たこともないぐらい顔を輝かせていた。
時は戻り2日前、私はこのセントラル家のベッドの上で目覚めた。
全く知らない天井に、顔を横に向ければ見知らぬ可憐な少女がすやすやと気持ちよさそうにベッドに突っ伏す形で座りながら寝ている。金髪がふわふわと寝息と共に揺れ、閉じられたまつ毛は光に照らされキラキラと輝いていた。
寝起きで何も頭が働かなかったので、ただぼんやりとただ少女を見つめた。
キィィィッッ
立て付けの悪い音を鳴らしながら開いた扉から1人のご婦人が入ってきた。
「あら、目が覚めたのね?本当に心配したのよ、よかったわ」
「……あ゛の゛…」
「あら?声が枯れてしまってるわね、待ってね、今お水をあげるから」
ご婦人は持ってきた桶から水差しを出し、コップに注いで私に渡してくれた。
「はい、病み上がりなんだから水と言ってもゆっくり飲むのよ」
「……ぷはっ、ありがとうございます」
「いえいえ、飲みっぷりがよくて私も嬉しいわ、聖女様もきっとお喜びになる」
「…聖女、様ですか?」
「………あなた、聖女様を知らないの?」
まるで私の言葉が青天の霹靂かのようにご婦人は大きく目を見開いた。
水を飲んで幾分かすっきりした私には、聖女様だとかいう厨二病よろしくな話よりなぜ自分がここにいるのかの方が大問題なのだが。
「全く、わからないです。そんな非現実的な話をいきなりされても、と思いますし、それよりなぜ私がここにいるのかの方が気になります」
「…そんなことを言う人がまだいるなんて、あなたよほど古風な考え方をするのね」
「あの、古風というより現実と空想の区別をつけているだけと言いますか、それより本当になぜ私はここにいるのでしょうか?ここはどこですか?あなたのお家なのでしょうか」
私がそう言うとご婦人はこほんと1つ咳をし、この3日間のことを話してくれた。
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