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書籍化記念小話
ジューンの手記
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最悪だ。何が何だかさっぱりわからない。泣きすぎて目と喉が痛い。
でもこれだけは言える。
あいつら全員滅びろ。
☆☆☆
昨日の分を読み返したら、やっぱり混乱していたんだなあって思った。そりゃあ混乱もするよ。
整理しておこう。あたしは昨日、この世界に召喚されたらしい。信じられない話だけど、本当なんだそうだ。
家に帰って自分の部屋に入ったまでは覚えているんだけど、その後いきなり目の前が真っ暗になって、気づいたら石造りの部屋にいた。この城の地下らしい。
その場で「お前は我が国の為に魔王を倒すべく女神様より遣わされたのだ」とか言われた。いきなりそんな事言われて、はいわかりましたと引き受ける人間はいない。ゲームじゃないんだから。
自慢じゃないが、運動も苦手だし頭もそんなに良くない。大体RPGですらクリア出来ない人間が、魔王を倒せる訳がない。どうしてあんなに長いものをプレイ出来るんだろう? 不思議だ。途中で飽きるよ。
しかも変なあだ名で人の事を呼ぶし。ジューンってなんだジューンって。
よく聞いたら、あたしの名前を発音出来ないからだそうだ。普通にしゃべってるように聞こえるのに。これって、実はお互い違う言葉を話してるって事? よくわかんない。
とりあえずもう一回書いておく。あいつら全員滅びろ。
☆☆☆
おかしな夢を見た。真っ暗な中に光が浮かんでいて、自分はこの世界の女神だと言っていた。
その割には姿がないのはおかしくね? 女神っていうからには美術館なんかにある彫刻みたいな感じ?
と思っていたら、いきなり目の前に金髪青い目の女の子が現れた。本当にいきなり。さすが夢。
びっくりしていたら、どういう訳か向こうもびっくりしていた。なんで?
そこで夢から醒めた。何だったんだろう? あれ。
☆☆☆
今日は一日部屋にこもっていた。こうしていても何にもならないってわかっていても、何もする気がおきなかった。
そういや起きてから髪もとかしてないや、と思って鏡を覗いたら、昨日の夢に出てきた子が映っていた。
驚いていたら、伝えたい事があるからって言われた。昨日みたいに夢で見るんじゃだめなのか?
こっちが呆然としている間に、向こうはべらべらしゃべってる。
何でも、魔王がいるのは本当なんだって。で、私にはその魔王の魂を消滅させる力があるんだそうだ。
いつの間にそんな力持ったんだろう? って思ってたら、こっちの世界に連れてこられる時に、鏡に映ってる自称女神が与えたんだって。余計な事を。
文句の一つも言おうと思ったら、あっという間に鏡から消えていた。自分の言いたい事だけ言って逃げるとは卑怯な。
いつ帰れるかわからないけど、でも絶対家に帰る。その思いを込めて、部屋にあった木の箱の蓋に、ペン先で刻んだ。
絶対帰る。
☆☆☆
昨日同様部屋から一歩も出ず。鏡を覗けばまた女神。いい加減にしてほしい。
毎回女神と呼ぶのも面倒なので、適当に名前を付けて読んでみた。本人? は喜んでいたなあ。そんなに嬉しいものなの?
昨日の続きとばかりにあれこれ話してる。なんでも、魔王の魂を消滅させるにはあたしが使ってる言葉が必要なんだって。
何それ。ここにいる奴らだって使ってるんじゃないの、って聞いたら、違うんだって。
あたしは今こちらの国の言葉を使っているんだそうだ。意識すればちゃんと母国語を使えるって言ってるけど、本当かな?
それはともかく、自称女神は人の心が読めるらしい。こっちが話す前に察してしまう。やめろと言ったんだけど、どうして言われるのかわからないらしい。
いくら女神といえど、他人に心の中全部見られるとか冗談じゃない。プライバシーの侵害だ。
そう言っても、女神はきょとんとしたまんま。そんな顔まで美少女だとさまになるから憎たらしい。
あー、もうどうでもいいや。とりあえず滅んでしまえ。
☆☆☆
さすがに今日は部屋の扉が開けられた。中からかけるタイプの鍵を掛けていたのに、力業で壊していたよ。扉も壊れたけど。
やったのはでかくて黒い男性だった。前に名前を聞いた気がするけど、覚えていない。そう言ったらすごく驚いていた。何か失礼。
でっかい男、名前はマーカスだって。それにしても、すごい力。その力があれば魔王も倒せるんじゃないの? って言ったら、上から睨まれた。感じ悪い。
マーカスはすぐにその場を去った。壊れた扉は別の人達が直してた。それと同時に、おばさんが部屋に入ってきて、女の子を二人紹介していった。
あたしの身の回りの世話をする女の子なんだって。メイドさん? でもそれっぽい格好はしていないけど。
名前は赤みがかった茶色の髪の子がアンジェリア。薄い色の金髪がさらさらしている子がソフィー。
二人とも緊張していたみたいだけど、そこは年の近い女の子同士、すぐに打ち解けた。
何だかここに来て、ようやくほっとした気がする。
☆☆☆
今日から剣を習わされた。教えるのはマーカスだ。
いきなり剣とか無理だから。そう言っても相手はお構いなしにでかい剣を振り回してくる。一日逃げ回って終わった。体のあちこちが重い。明日は筋肉痛になりそうだ。
マーカスは特に念入りに滅びろ。
☆☆☆
女の子はいい。アンジェリアとソフィーはとても優しい。可愛いし、本当に癒やされる。ここは周囲にろくでもない男しかいないから、余計にそう思うのかも。
案の定、朝から全身筋肉痛に悩まされている。今日も稽古させられそうになったけど、アンジェリアとソフィーが断ってくれたらしい。
そのやりとりが全部聞こえていたんだけど、呼びに来た人は散々怒っていた。マーカスじゃなかったけど、きっとマーカスも怒ってる。勝手に怒ってればいいんだ。
あっちにもろくでもない男子はいたけど、こちら程じゃない。
一番身近な男性である父だって、ここまでひどくはない。反抗期で父には散々当たり散らしてそのままだったなあ。ごめん父。帰ったら優しくしようと思う。
こっちの男は全て滅びろ。
☆☆☆
剣の稽古に身が入らない。当たり前だ。やる気なんてまったくないんだから。
それがわかるのか、マーカスが真剣にやれって怒ってくる。まったく勝手な連中だ。
魔王を倒す為に必要なんだって言うけど、どうしてあたしがそんな事しなくちゃいけないんだ。義務はないよ。
そう言ったら驚いていた。こっちの方が驚きだよ。いきなり人の事をさらっておいて、言う事聞かせようなんて図々しい。
やっぱりこの世界なんて滅びてしまえばいい。あ、アンジェリアとソフィーは助かってほしいな。
☆☆☆
眉間の皺が癖になりそう。やだなあ。こっちの化粧水はなんだかやたらとくさいから使いたくないんだけど。
でも使わないと肌が荒れるしなあ。悩む。
☆☆☆
今日は城の外に出た。訓練だと言って、魔物退治に連れて行かれた。
最悪だった。なんでこっちにまでアレがいるの? しかも大きさが半端ない。
飛んでこっちに向かってくるその姿を見ただけで、その場から逃げ出した。でもマーカスに捕まってしまった。めちゃくちゃ暴れたら溜息をついて呆れたような目でこっちを見てた。知るか。
あんなブツを剣なんかで倒せる訳ない。どうしてもやれというなら殺虫剤を持ってこいと怒鳴ったら、首を傾げていた。
こちらには殺虫剤はないらしい。それよりも、あのブツは魔物なので普通の虫じゃないらしい。そんなのどうでもいいから、二度と接近遭遇させるな。
この世の全てのGは滅びろ。本当に滅びろ。
☆☆☆
二度目の外での訓練。今度はもこもこのリスみたいなやつが相手だった。今度は可愛すぎて手が出せない。
思わずなでようとしたら、慌てたマーカスに止められた。小さいけど顎が強くて、人の指くらい平気でかみ切るんだって。恐ろしや。あんなかわいい外見のくせして。
こっちの世界は何もかもが変だ。ここに住んでる人にとってはこれが普通なんだろうけど、あたしにとっては不思議の国くらい変だよ。
☆☆☆
何の話題からか、年齢の話になった。素直に十五歳だと言ったらマーカスが驚いていた。
何をそんなに驚くのかと思ったら、私は十一、二歳に思われていたらしい。
そんな年の子供に魔王を倒せと言っていたのか、と怒ったら女神の御使いはそういうものだと思っていたとか言っていた。言い訳だ。
この国では、十五で成人なんだそうだ。不思議と一挙に年を取ったような気分になる。
ついでだったので、私の国の成人年齢も教えておいた。自分の国ではまだまだ未成年なんだという事は強調しておいた。
その後マーカスは何かぶつぶつ言いながらその場を離れていったけど、あれは何だったんだろう?
☆☆☆
男連中の中でも気が良い人はいる。シーオドアがその一人だ。
彼はマーカスの友達らしい。いたんだ、友達。
思わずそうシーオドアにもらしたら、苦笑していた。という事は、シーオドアもそう思っていたって事だよね?
ちょっとだけマーカスが不憫に思えた。
☆☆☆
今日は城の外に出た。しかも訓練じゃない。ピクニックだった。
もの凄く意外な事に、発案者はマーカスだった。明日は大雨かもしれない。
メンバーはあたしとアンジェリア、ソフィー、シーオドア、マーカス。それから知らない男の子が一人いた。神官のチェスターというらしい。
チェスターは挨拶もそこそこに自分がどんなに感激しているかを身振り手振りを交えて伝えてきた。どうやら彼が信奉する女神様の御使いであるところのあたしと、直接言葉を交わせるのが名誉に思えるらしい。
小柄で顔立ちもまだ子供っぽいチェスターは、どうかすると女の子に見えるくらい華奢だ。その辺りが女子受けしたらしく、しばらく四人で話したり花を摘んで冠を作ったりして遊んでいた。
珍しくマーカスも文句を言わない、いい日だった。天気も良かったし。
帰りにシーオドアが馬に乗ってみないかと誘ってきた。こっちにこなかったら馬なんて乗る機会はないよなあ、と思ってOKした。
てっきりシーオドアが乗せてくれるのかと思ったら、マーカスだった。ちょっと尻込みしたのは内緒。
黒髪のマーカスの乗っている馬は、やっぱり黒っぽい毛の馬だった。しかもでかい。馬ってこんなに大きいの? 近くで見る事なんてなかったから、知らなかった。
乗せてもらったら、視線が高くなって楽しかった。ここへは馬車で来たから、こんなに高い位置から見る景色は初めて見るものだった。
とてもきれいだった。ちょっとした思い出になりそう。
☆☆☆
剣の訓練をしている場所には、転落防止の為にレンガの壁がある。そこにはみんなが思い思いに言葉を刻んでいる。
なんでも、強い思いを込めて刻むと望みが叶うそうだ。じゃあ世界が滅びますようにと刻もうかと思ったけど、アンジェリアとソフィーまで滅んじゃ困るのでやめておいた。
シーオドアがにやにやしながら、刻まないかと聞いていた。よし、なら刻んでやろうじゃないか、と小さいナイフを借りた。
みんなに見えるように「王のくそったれ」と刻んだ。どうでもいいけど、ナイフで壁に文字を刻むのって、凄く大変。おかげで字が凄く汚い。
これでどうだ、と周囲を見ると、みんなおかしな顔をしている。
理由を聞いたら、何を刻んだかわからなかったらしい。あたしの使う文字は、読めないどころか文字とも思わなかっと言われて驚いた。何かの記号に見えるんだって。
でもいいか。自分の鬱憤晴らしの為にやったんだから。それに内容が内容だから、読めなくて正解だったかも?
よく考えたら、くそったれと刻んだはいいけどこれで叶う願いって何? 王がくそったれになるという事? 既にそうなんだけど。
もしかして、意味ではなく文字そのままになるって事? あの年でお漏らし? 恥ずかしー。でもそれはそれで笑えるー。
ついでだから、シーオドアにはちょっとした悪戯をしておいた。願いが叶う壁だから、こういうのもいいよねって事で。
内容は至って簡単。自分の名前と好きな相手の名前をある形で刻んだら両思いになる、って言っただけ。本来の意味は違うけどね。バレやしないし、本気にはしないと思うけど。
でもその後、マーカスがすごい目でこっちを睨んできたんだけど。シーオドアにした悪戯がバレたとか? 明日の稽古が厳しくなったらどうしよう?
☆☆☆
今日の稽古の最中に、マーカスから壁に何を刻んだのかと聞かれた。
答えられる訳がない。何とか誤魔化そうとしたんだけど、マーカスはやたらとしつこかった。まさか、内容がバレてる?
そんな訳ないか。あれはこっちでは読めない字のはずだし。
じゃあ、何であんなにしつこく聞いてきたんだろう? 思いっきり顔を寄せてくるからびっくりした。
☆☆☆
今日のマーカスは顔が怖かった。いや、いつも怖いけど、今日は普段以上に怖かった。
あたしだけかと思ったら、周囲の人も怖いと思っていたようで本人に苦情がいったんだって。
どんだけ怖いのよ。
☆☆☆
今日も外で実戦訓練だった。毎度の事だけど、本当に怖い。剣を持つ事すら怖いよ。これ、男子だったらもっと違ったのかな。
魔物と言われるけど、あたしにしてみれば普通の生き物を殺す、その行為そのものが怖い。
そうマーカスに漏らしたら、何だか複雑そうな顔でこっちを見ていた。また甘い事を言ってるとか思ってるんだろうな。
そりゃあ、こっちの女の人は生きた鳥でもなんでも自分でさばくけど、あたしはそんなのやった事ないんだから。お肉はパックに入って売ってるのしか知らない。
それに、あたしの身近に戦争はなかった。遠い国ではいつでも何かしらで戦争している国はあったけど、正直関心はなかった。
そうマーカスに言ったら、酷く驚いていた。そんなに変な事、言ったのかな?
首を傾げていたら、マーカスが珍しく話に乗ってきた。この国は魔王に攻撃される前、周辺の国と領土問題で戦争ばかりしていたんだって。
どうしてそんなに戦争が好きなんだろう。そう言ったら、好きでやってるんじゃないってマーカスが言っていた。でも好きじゃないならどうして戦うの?
あたしの言葉に答えないで、マーカスは別の事を口にした。
ここから離れた街に、王の弟がいるらしい。その弟という人は、領土問題は話し合いで解決すべきだと言っていたんだって。それを王が怒って弟を離れた街に幽閉したんだそうだ。
こっちにもそういう考え方する人がいたんだ。それを知っただけで、ちょっとほっとした。
☆☆☆
最近マーカスが変だ。元から変なところはあったけど、このところ更に変だ。
ぼーっとしているかと思ったら、いきなり何か思い詰めたような顔をして頭を振ってみたり、あたしがシーオドアと話しているといきなり剣の稽古だと言って引っ張っていったり。何か悪いものでも食べたとか?
そういえば、最近マーカスはチェスターと一緒にいる事が多い。どうしてマーカスが神官のチェスターと? 訳わかんない。
☆☆☆
今朝、いきなり神殿に連れてこられた。何でも、あたしの中にある女神の力をマーカスに移すんだそうだ。
そうすればあたしは魔王討伐に行かなくて済むらしい。代わりにマーカスが行く事になるんだそうだ。
それって、いいのかな? いや、この世界の事はこの世界の人がどうにかするべきだとずっと思っていたけど、いざ本当にそうなるってわかったら、何だか後ろめたい気がする。
あたしがそんな事を思う必要はないよね? これでいいんだよね?
力を移す儀式とやらは、結構簡単に終わった。執り行った大神官とかいう人は大変だったみたいだけど。
あたし自身に変化はない。何だか、変な感じ。
☆☆☆
昨日の夜、夢を見た。久々女神の夢だ。ちょっといつもとトーンが違っていた。
マーカスが魔王討伐に行く事を、彼女は知っていた。その事で話があるから来たんだそうだ。
女神によると、魔王の魂はあたしでないと消滅させられないんだって。マーカスが力を全部持って行ったんじゃないの?
女神は、あたしの言葉が必要だって説明してた。そういえば、そんなような事を前に言っていたよね。
魔王はこの世界の言葉なら全てわかるけど、違う世界の言葉はわからないんだって。だからあたしの言葉が有効なんだそうだ。
首を傾げていたら、約束のたとえ話を出して解説してくれた。そういう事なんだ。
とりあえず、明日マーカスに会ったらその事を話しておこう。
☆☆☆
これまでは動きやすいようにと男の子の服を着ていたんだけど、もう剣の稽古をする必要もないので女の子の服が用意された。
裾を引きずる長さのワンピースなんですけど。思い切り動きづらいよこれ。
もう少し裾を短くしてもいいかとアンジェリアに聞いたら、足を出すなんてとんでもない、と怒られた。今まで散々ズボン姿で晒していたんだけど。
仕方がないので裾を持って歩く練習中。その途中で、ばったりマーカスに出くわした。
じろじろ見られた。何だか恥ずかしい。嫌な所を見られたなあと思っていたら、マーカスがそういう格好の方がいいっていきなり言ってきた。
驚いていたら、何だかマーカスの様子が変だった。ふらふらとこっちに近寄ってきたと思ったら、いきなり横からシーオドアに抱えられていた。
何だったんだろう?
☆☆☆
マーカス達が討伐の旅に出立する日になった。あたしの代わりに行ってくれるんだから、と思ってお見送りしてきた。
チェスターも行くそうで、何か持ち物をもらえないか、と言われたのでちょうど持っていたハンカチをあげた。いいのかなあ、女の子用の白い猫のキャラものなんだけど。
マーカスもそのハンカチが欲しかったのか、チェスターと何か言い合っていた。あんなかわいいハンカチが欲しいの? あんなでっかい男が?
いや、男性でもかわいいもの好きな人がいるのは知ってるけど、マーカスには何だか似合わない。
マーカスからは戻ってくるまで待っていてくれって言われた。彼が魔王の魂を持ってこないと、消滅させられないからね。
でも、魔王討伐ってたった三人で行くんだね。もっと大勢の軍隊を率いていくのかと思ってた。
遠くなっていく彼らの背中が見えなくなるまで、ずっとその場で見送った。あたしに付き合って、アンジェリアとソフィーの二人もその場にいた。
彼らが戻ってくる時は、こうしてここでお迎えしようと思う。
☆☆☆
中略
☆☆☆
日が経つにつれ、本当にこれで良かったのかって思う。せめて、あたしも一緒に行った方が良かったんじゃないかって。
そう思う反面、望んでここに来た訳じゃないって思いも浮かんでくる。
マーカス達は、今どの辺りにいるんだろう?
☆☆☆
中略
☆☆☆
今朝、マーカス達が無事魔王を討伐したと報せがきた。これから戻ってくるそうだ。
みんな無事らしい。良かった。
この後王に呼ばれてる。まだ何かさせる気なんだろうか。今も扉の向こうが騒がしい。
マーカスが帰ってきたら、お礼をちゃんと言おう。
※ジューン、怒りの日記。
でもこれだけは言える。
あいつら全員滅びろ。
☆☆☆
昨日の分を読み返したら、やっぱり混乱していたんだなあって思った。そりゃあ混乱もするよ。
整理しておこう。あたしは昨日、この世界に召喚されたらしい。信じられない話だけど、本当なんだそうだ。
家に帰って自分の部屋に入ったまでは覚えているんだけど、その後いきなり目の前が真っ暗になって、気づいたら石造りの部屋にいた。この城の地下らしい。
その場で「お前は我が国の為に魔王を倒すべく女神様より遣わされたのだ」とか言われた。いきなりそんな事言われて、はいわかりましたと引き受ける人間はいない。ゲームじゃないんだから。
自慢じゃないが、運動も苦手だし頭もそんなに良くない。大体RPGですらクリア出来ない人間が、魔王を倒せる訳がない。どうしてあんなに長いものをプレイ出来るんだろう? 不思議だ。途中で飽きるよ。
しかも変なあだ名で人の事を呼ぶし。ジューンってなんだジューンって。
よく聞いたら、あたしの名前を発音出来ないからだそうだ。普通にしゃべってるように聞こえるのに。これって、実はお互い違う言葉を話してるって事? よくわかんない。
とりあえずもう一回書いておく。あいつら全員滅びろ。
☆☆☆
おかしな夢を見た。真っ暗な中に光が浮かんでいて、自分はこの世界の女神だと言っていた。
その割には姿がないのはおかしくね? 女神っていうからには美術館なんかにある彫刻みたいな感じ?
と思っていたら、いきなり目の前に金髪青い目の女の子が現れた。本当にいきなり。さすが夢。
びっくりしていたら、どういう訳か向こうもびっくりしていた。なんで?
そこで夢から醒めた。何だったんだろう? あれ。
☆☆☆
今日は一日部屋にこもっていた。こうしていても何にもならないってわかっていても、何もする気がおきなかった。
そういや起きてから髪もとかしてないや、と思って鏡を覗いたら、昨日の夢に出てきた子が映っていた。
驚いていたら、伝えたい事があるからって言われた。昨日みたいに夢で見るんじゃだめなのか?
こっちが呆然としている間に、向こうはべらべらしゃべってる。
何でも、魔王がいるのは本当なんだって。で、私にはその魔王の魂を消滅させる力があるんだそうだ。
いつの間にそんな力持ったんだろう? って思ってたら、こっちの世界に連れてこられる時に、鏡に映ってる自称女神が与えたんだって。余計な事を。
文句の一つも言おうと思ったら、あっという間に鏡から消えていた。自分の言いたい事だけ言って逃げるとは卑怯な。
いつ帰れるかわからないけど、でも絶対家に帰る。その思いを込めて、部屋にあった木の箱の蓋に、ペン先で刻んだ。
絶対帰る。
☆☆☆
昨日同様部屋から一歩も出ず。鏡を覗けばまた女神。いい加減にしてほしい。
毎回女神と呼ぶのも面倒なので、適当に名前を付けて読んでみた。本人? は喜んでいたなあ。そんなに嬉しいものなの?
昨日の続きとばかりにあれこれ話してる。なんでも、魔王の魂を消滅させるにはあたしが使ってる言葉が必要なんだって。
何それ。ここにいる奴らだって使ってるんじゃないの、って聞いたら、違うんだって。
あたしは今こちらの国の言葉を使っているんだそうだ。意識すればちゃんと母国語を使えるって言ってるけど、本当かな?
それはともかく、自称女神は人の心が読めるらしい。こっちが話す前に察してしまう。やめろと言ったんだけど、どうして言われるのかわからないらしい。
いくら女神といえど、他人に心の中全部見られるとか冗談じゃない。プライバシーの侵害だ。
そう言っても、女神はきょとんとしたまんま。そんな顔まで美少女だとさまになるから憎たらしい。
あー、もうどうでもいいや。とりあえず滅んでしまえ。
☆☆☆
さすがに今日は部屋の扉が開けられた。中からかけるタイプの鍵を掛けていたのに、力業で壊していたよ。扉も壊れたけど。
やったのはでかくて黒い男性だった。前に名前を聞いた気がするけど、覚えていない。そう言ったらすごく驚いていた。何か失礼。
でっかい男、名前はマーカスだって。それにしても、すごい力。その力があれば魔王も倒せるんじゃないの? って言ったら、上から睨まれた。感じ悪い。
マーカスはすぐにその場を去った。壊れた扉は別の人達が直してた。それと同時に、おばさんが部屋に入ってきて、女の子を二人紹介していった。
あたしの身の回りの世話をする女の子なんだって。メイドさん? でもそれっぽい格好はしていないけど。
名前は赤みがかった茶色の髪の子がアンジェリア。薄い色の金髪がさらさらしている子がソフィー。
二人とも緊張していたみたいだけど、そこは年の近い女の子同士、すぐに打ち解けた。
何だかここに来て、ようやくほっとした気がする。
☆☆☆
今日から剣を習わされた。教えるのはマーカスだ。
いきなり剣とか無理だから。そう言っても相手はお構いなしにでかい剣を振り回してくる。一日逃げ回って終わった。体のあちこちが重い。明日は筋肉痛になりそうだ。
マーカスは特に念入りに滅びろ。
☆☆☆
女の子はいい。アンジェリアとソフィーはとても優しい。可愛いし、本当に癒やされる。ここは周囲にろくでもない男しかいないから、余計にそう思うのかも。
案の定、朝から全身筋肉痛に悩まされている。今日も稽古させられそうになったけど、アンジェリアとソフィーが断ってくれたらしい。
そのやりとりが全部聞こえていたんだけど、呼びに来た人は散々怒っていた。マーカスじゃなかったけど、きっとマーカスも怒ってる。勝手に怒ってればいいんだ。
あっちにもろくでもない男子はいたけど、こちら程じゃない。
一番身近な男性である父だって、ここまでひどくはない。反抗期で父には散々当たり散らしてそのままだったなあ。ごめん父。帰ったら優しくしようと思う。
こっちの男は全て滅びろ。
☆☆☆
剣の稽古に身が入らない。当たり前だ。やる気なんてまったくないんだから。
それがわかるのか、マーカスが真剣にやれって怒ってくる。まったく勝手な連中だ。
魔王を倒す為に必要なんだって言うけど、どうしてあたしがそんな事しなくちゃいけないんだ。義務はないよ。
そう言ったら驚いていた。こっちの方が驚きだよ。いきなり人の事をさらっておいて、言う事聞かせようなんて図々しい。
やっぱりこの世界なんて滅びてしまえばいい。あ、アンジェリアとソフィーは助かってほしいな。
☆☆☆
眉間の皺が癖になりそう。やだなあ。こっちの化粧水はなんだかやたらとくさいから使いたくないんだけど。
でも使わないと肌が荒れるしなあ。悩む。
☆☆☆
今日は城の外に出た。訓練だと言って、魔物退治に連れて行かれた。
最悪だった。なんでこっちにまでアレがいるの? しかも大きさが半端ない。
飛んでこっちに向かってくるその姿を見ただけで、その場から逃げ出した。でもマーカスに捕まってしまった。めちゃくちゃ暴れたら溜息をついて呆れたような目でこっちを見てた。知るか。
あんなブツを剣なんかで倒せる訳ない。どうしてもやれというなら殺虫剤を持ってこいと怒鳴ったら、首を傾げていた。
こちらには殺虫剤はないらしい。それよりも、あのブツは魔物なので普通の虫じゃないらしい。そんなのどうでもいいから、二度と接近遭遇させるな。
この世の全てのGは滅びろ。本当に滅びろ。
☆☆☆
二度目の外での訓練。今度はもこもこのリスみたいなやつが相手だった。今度は可愛すぎて手が出せない。
思わずなでようとしたら、慌てたマーカスに止められた。小さいけど顎が強くて、人の指くらい平気でかみ切るんだって。恐ろしや。あんなかわいい外見のくせして。
こっちの世界は何もかもが変だ。ここに住んでる人にとってはこれが普通なんだろうけど、あたしにとっては不思議の国くらい変だよ。
☆☆☆
何の話題からか、年齢の話になった。素直に十五歳だと言ったらマーカスが驚いていた。
何をそんなに驚くのかと思ったら、私は十一、二歳に思われていたらしい。
そんな年の子供に魔王を倒せと言っていたのか、と怒ったら女神の御使いはそういうものだと思っていたとか言っていた。言い訳だ。
この国では、十五で成人なんだそうだ。不思議と一挙に年を取ったような気分になる。
ついでだったので、私の国の成人年齢も教えておいた。自分の国ではまだまだ未成年なんだという事は強調しておいた。
その後マーカスは何かぶつぶつ言いながらその場を離れていったけど、あれは何だったんだろう?
☆☆☆
男連中の中でも気が良い人はいる。シーオドアがその一人だ。
彼はマーカスの友達らしい。いたんだ、友達。
思わずそうシーオドアにもらしたら、苦笑していた。という事は、シーオドアもそう思っていたって事だよね?
ちょっとだけマーカスが不憫に思えた。
☆☆☆
今日は城の外に出た。しかも訓練じゃない。ピクニックだった。
もの凄く意外な事に、発案者はマーカスだった。明日は大雨かもしれない。
メンバーはあたしとアンジェリア、ソフィー、シーオドア、マーカス。それから知らない男の子が一人いた。神官のチェスターというらしい。
チェスターは挨拶もそこそこに自分がどんなに感激しているかを身振り手振りを交えて伝えてきた。どうやら彼が信奉する女神様の御使いであるところのあたしと、直接言葉を交わせるのが名誉に思えるらしい。
小柄で顔立ちもまだ子供っぽいチェスターは、どうかすると女の子に見えるくらい華奢だ。その辺りが女子受けしたらしく、しばらく四人で話したり花を摘んで冠を作ったりして遊んでいた。
珍しくマーカスも文句を言わない、いい日だった。天気も良かったし。
帰りにシーオドアが馬に乗ってみないかと誘ってきた。こっちにこなかったら馬なんて乗る機会はないよなあ、と思ってOKした。
てっきりシーオドアが乗せてくれるのかと思ったら、マーカスだった。ちょっと尻込みしたのは内緒。
黒髪のマーカスの乗っている馬は、やっぱり黒っぽい毛の馬だった。しかもでかい。馬ってこんなに大きいの? 近くで見る事なんてなかったから、知らなかった。
乗せてもらったら、視線が高くなって楽しかった。ここへは馬車で来たから、こんなに高い位置から見る景色は初めて見るものだった。
とてもきれいだった。ちょっとした思い出になりそう。
☆☆☆
剣の訓練をしている場所には、転落防止の為にレンガの壁がある。そこにはみんなが思い思いに言葉を刻んでいる。
なんでも、強い思いを込めて刻むと望みが叶うそうだ。じゃあ世界が滅びますようにと刻もうかと思ったけど、アンジェリアとソフィーまで滅んじゃ困るのでやめておいた。
シーオドアがにやにやしながら、刻まないかと聞いていた。よし、なら刻んでやろうじゃないか、と小さいナイフを借りた。
みんなに見えるように「王のくそったれ」と刻んだ。どうでもいいけど、ナイフで壁に文字を刻むのって、凄く大変。おかげで字が凄く汚い。
これでどうだ、と周囲を見ると、みんなおかしな顔をしている。
理由を聞いたら、何を刻んだかわからなかったらしい。あたしの使う文字は、読めないどころか文字とも思わなかっと言われて驚いた。何かの記号に見えるんだって。
でもいいか。自分の鬱憤晴らしの為にやったんだから。それに内容が内容だから、読めなくて正解だったかも?
よく考えたら、くそったれと刻んだはいいけどこれで叶う願いって何? 王がくそったれになるという事? 既にそうなんだけど。
もしかして、意味ではなく文字そのままになるって事? あの年でお漏らし? 恥ずかしー。でもそれはそれで笑えるー。
ついでだから、シーオドアにはちょっとした悪戯をしておいた。願いが叶う壁だから、こういうのもいいよねって事で。
内容は至って簡単。自分の名前と好きな相手の名前をある形で刻んだら両思いになる、って言っただけ。本来の意味は違うけどね。バレやしないし、本気にはしないと思うけど。
でもその後、マーカスがすごい目でこっちを睨んできたんだけど。シーオドアにした悪戯がバレたとか? 明日の稽古が厳しくなったらどうしよう?
☆☆☆
今日の稽古の最中に、マーカスから壁に何を刻んだのかと聞かれた。
答えられる訳がない。何とか誤魔化そうとしたんだけど、マーカスはやたらとしつこかった。まさか、内容がバレてる?
そんな訳ないか。あれはこっちでは読めない字のはずだし。
じゃあ、何であんなにしつこく聞いてきたんだろう? 思いっきり顔を寄せてくるからびっくりした。
☆☆☆
今日のマーカスは顔が怖かった。いや、いつも怖いけど、今日は普段以上に怖かった。
あたしだけかと思ったら、周囲の人も怖いと思っていたようで本人に苦情がいったんだって。
どんだけ怖いのよ。
☆☆☆
今日も外で実戦訓練だった。毎度の事だけど、本当に怖い。剣を持つ事すら怖いよ。これ、男子だったらもっと違ったのかな。
魔物と言われるけど、あたしにしてみれば普通の生き物を殺す、その行為そのものが怖い。
そうマーカスに漏らしたら、何だか複雑そうな顔でこっちを見ていた。また甘い事を言ってるとか思ってるんだろうな。
そりゃあ、こっちの女の人は生きた鳥でもなんでも自分でさばくけど、あたしはそんなのやった事ないんだから。お肉はパックに入って売ってるのしか知らない。
それに、あたしの身近に戦争はなかった。遠い国ではいつでも何かしらで戦争している国はあったけど、正直関心はなかった。
そうマーカスに言ったら、酷く驚いていた。そんなに変な事、言ったのかな?
首を傾げていたら、マーカスが珍しく話に乗ってきた。この国は魔王に攻撃される前、周辺の国と領土問題で戦争ばかりしていたんだって。
どうしてそんなに戦争が好きなんだろう。そう言ったら、好きでやってるんじゃないってマーカスが言っていた。でも好きじゃないならどうして戦うの?
あたしの言葉に答えないで、マーカスは別の事を口にした。
ここから離れた街に、王の弟がいるらしい。その弟という人は、領土問題は話し合いで解決すべきだと言っていたんだって。それを王が怒って弟を離れた街に幽閉したんだそうだ。
こっちにもそういう考え方する人がいたんだ。それを知っただけで、ちょっとほっとした。
☆☆☆
最近マーカスが変だ。元から変なところはあったけど、このところ更に変だ。
ぼーっとしているかと思ったら、いきなり何か思い詰めたような顔をして頭を振ってみたり、あたしがシーオドアと話しているといきなり剣の稽古だと言って引っ張っていったり。何か悪いものでも食べたとか?
そういえば、最近マーカスはチェスターと一緒にいる事が多い。どうしてマーカスが神官のチェスターと? 訳わかんない。
☆☆☆
今朝、いきなり神殿に連れてこられた。何でも、あたしの中にある女神の力をマーカスに移すんだそうだ。
そうすればあたしは魔王討伐に行かなくて済むらしい。代わりにマーカスが行く事になるんだそうだ。
それって、いいのかな? いや、この世界の事はこの世界の人がどうにかするべきだとずっと思っていたけど、いざ本当にそうなるってわかったら、何だか後ろめたい気がする。
あたしがそんな事を思う必要はないよね? これでいいんだよね?
力を移す儀式とやらは、結構簡単に終わった。執り行った大神官とかいう人は大変だったみたいだけど。
あたし自身に変化はない。何だか、変な感じ。
☆☆☆
昨日の夜、夢を見た。久々女神の夢だ。ちょっといつもとトーンが違っていた。
マーカスが魔王討伐に行く事を、彼女は知っていた。その事で話があるから来たんだそうだ。
女神によると、魔王の魂はあたしでないと消滅させられないんだって。マーカスが力を全部持って行ったんじゃないの?
女神は、あたしの言葉が必要だって説明してた。そういえば、そんなような事を前に言っていたよね。
魔王はこの世界の言葉なら全てわかるけど、違う世界の言葉はわからないんだって。だからあたしの言葉が有効なんだそうだ。
首を傾げていたら、約束のたとえ話を出して解説してくれた。そういう事なんだ。
とりあえず、明日マーカスに会ったらその事を話しておこう。
☆☆☆
これまでは動きやすいようにと男の子の服を着ていたんだけど、もう剣の稽古をする必要もないので女の子の服が用意された。
裾を引きずる長さのワンピースなんですけど。思い切り動きづらいよこれ。
もう少し裾を短くしてもいいかとアンジェリアに聞いたら、足を出すなんてとんでもない、と怒られた。今まで散々ズボン姿で晒していたんだけど。
仕方がないので裾を持って歩く練習中。その途中で、ばったりマーカスに出くわした。
じろじろ見られた。何だか恥ずかしい。嫌な所を見られたなあと思っていたら、マーカスがそういう格好の方がいいっていきなり言ってきた。
驚いていたら、何だかマーカスの様子が変だった。ふらふらとこっちに近寄ってきたと思ったら、いきなり横からシーオドアに抱えられていた。
何だったんだろう?
☆☆☆
マーカス達が討伐の旅に出立する日になった。あたしの代わりに行ってくれるんだから、と思ってお見送りしてきた。
チェスターも行くそうで、何か持ち物をもらえないか、と言われたのでちょうど持っていたハンカチをあげた。いいのかなあ、女の子用の白い猫のキャラものなんだけど。
マーカスもそのハンカチが欲しかったのか、チェスターと何か言い合っていた。あんなかわいいハンカチが欲しいの? あんなでっかい男が?
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マーカスからは戻ってくるまで待っていてくれって言われた。彼が魔王の魂を持ってこないと、消滅させられないからね。
でも、魔王討伐ってたった三人で行くんだね。もっと大勢の軍隊を率いていくのかと思ってた。
遠くなっていく彼らの背中が見えなくなるまで、ずっとその場で見送った。あたしに付き合って、アンジェリアとソフィーの二人もその場にいた。
彼らが戻ってくる時は、こうしてここでお迎えしようと思う。
☆☆☆
中略
☆☆☆
日が経つにつれ、本当にこれで良かったのかって思う。せめて、あたしも一緒に行った方が良かったんじゃないかって。
そう思う反面、望んでここに来た訳じゃないって思いも浮かんでくる。
マーカス達は、今どの辺りにいるんだろう?
☆☆☆
中略
☆☆☆
今朝、マーカス達が無事魔王を討伐したと報せがきた。これから戻ってくるそうだ。
みんな無事らしい。良かった。
この後王に呼ばれてる。まだ何かさせる気なんだろうか。今も扉の向こうが騒がしい。
マーカスが帰ってきたら、お礼をちゃんと言おう。
※ジューン、怒りの日記。
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