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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
672.四つの工房の職人と文官と秘書3人とオレとヤグルマさん。魔王による消失の救済で職人への救済をオレが任されることになった背景ですか?
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オレとヤグルマさんは、文官の尻を蹴ることを蹴る側にとっての修練だと言い切る秘書3人を伴い、文官の元へ向かうと。
文官達は、オレがケレメイン公爵の伴侶だったときに訪問した四つの工房の職人と話をしていた。
工房の職人の前では、さすがに聞けないよなー。
『オレの秘書に尻を蹴り上げられることは、文官の人生に幸運をもたらしたか?』
なんてさ。
今日は、オレの胸にしまっておこう。
いずれ、現場を目にする機会があるかもしれない。
待てよ?
「ヤグルマさん。
確認があるんだけど、いいかな?」
「ヒサツグ様。どうぞ。」
とヤグルマさん。
「オレの秘書が文官の尻を蹴り上げている現場を見たら、オレは見ているだけでいいのかな?
オレの秘書に尻を蹴り上げられることに異議がないかを文官を呼び出して話を聞いた方がいいのかな?」
「ヒサツグ様は、混ざりたいですか?」
とヤグルマさん。
「誘われても混ざりはしないかな。」
「ヒサツグ様が混ざることを希望されないなら。
文官が一人でいるときに、一人一人に手短に、ヒサツグ様がお気にされていることを、本人に直接確認されてみてはいかがでしょうか?」
とヤグルマさん。
「うん、そうする。」
オレ達が近づくと。
文官達と四つの工房の職人が、輪を広げて、オレ達が加われるようにしてくれた。
「この集団は、オレにとって、苦境を乗り越えるために背中を預けるようにして戦ってきた戦友だ。
今日の祝言で、全員の顔を見れて良かった。」
オレがそう言うと。
「ヒサツグ様にお愛した当時は、ケレメイン公爵領の職人はどん底にいましたからね。」
と文官。
「職人だけがどん底だったのかな?
職人なら、真っ先に囲い込みたくならないのかな?」
オレは、疑問をそのまま口に出した。
「農産物の生産ができる農家には、早々にサーバル王国のシガラキノ王女殿下の名前での援助が行き届きました。」
と文官。
「農産物の生産と供給が途絶えないように差配することは、為政者の基本だからな。」
為政者の基本だと自分で話していて、オレは、オレの秘書のサーバル王国への警戒心を改めて理解した。
サーバル王国は、シガラキノ王女殿下の個人資産を使い、マウンテン王国のケレメイン公爵領の食料がなくならないようにする施策で、ケレメイン公爵領民に食料を配るのではなく、ケレメイン公爵領の食料の生産者に対して、サーバル王国のシガラキノ王女殿下の名前のついた金をばら撒いたんだなー。
シガラキノ様は個人資産を投入するにあたり、ケレメイン公爵領で何の策も弄さなかった。
サーバル王国は、ケレメイン公爵領を支配する未来のために、サーバル王国の王女の名前を有効利用していた。
サーバル王国の支配に危機感を募らせていた人は、なんとしてでも、オレに成功させたかったんだな。
サーバル王国の影響力をそぐために。
ケレメイン公爵の伴侶として、オレが魔王による消失後のケレメイン公爵領の経済立て直しに携わることになった当時の背景が分かってきたぞ。
「商人の一部は、サーバル王国との取引に飛びついて生き延びました。」
と文官。
「ケレメイン公爵家からサーバル王国に鞍替えした商人は、仕入れ先と売り先を変えたのかな?」
「はい。その商人は、ケレメイン公爵領の商人でありながら、サーバル王国御用達のようになっていましたね。」
と文官。
「商人の裏切りは、ケレメイン公爵領内の物流に差し障りが出たよな?」
「ええ。先代ケレメイン公爵の当主ご夫妻とヒサツグ様が繋いだ縁で、大店の主人が、ケレメイン公爵との取引を大事にしていたことは、僥倖でした。
ケレメイン公爵領内の物流が止まらずに済みました。」
と文官。
「サーバル王国の援助は、侵略であることを隠していなかったんだな。」
「侵略かどうかまで、一介の領民には判断がつきません。
商人が気づかなかったわけはないとは思いますが、生き残りをかけて、趨勢がどちらに傾いているかで、サーバル王国の傘下に入ったのでしょう。」
と文官。
魔王による消失によって起きたシビアな現実をオレは聞いている。
「職人は、職人自身の技術がものをいいます。」
と職人。
「サーバル王国は、ケレメイン公爵領内にいる腕のいい職人や、名を馳せている職人を探していました。
金の入った袋を見せながら。」
と職人。
「金の入っている袋を見せられているこちらは、援助に来てくれたと思い、誠心誠意もてなそうとしました。
農家には、既に金が支払われていることを聞いていましたから。」
と職人。
「サーバル王国は、あるときから、職人のいる場所に寄り付かなくなりました。
金の入った袋を持ったサーバル王国人にはある目的があったのですが、サーバル王国の目論見は空振りに終わったのです。」
と職人。
「サーバル王国の目的とは、技術がある職人の身売りや引き抜きかな。
技術がある職人狙いなら、サーバル王国だけではなく、サーバル王国のふりしたドリアン王国も混ざっていそうだな。」
オレのふと漏らした言葉に。
「混ざっていたと思います。
当時は、その判別ができませんでしたが、その後のサーバル王国とドリアン王国の動きからすると、どちらの国もケレメイン公爵領で活発に活動していたことでしょう。」
と文官。
「ケレメイン公爵領で名を馳せていた職人は、軒並み、魔王による消滅でいなくなっていました。」
と職人。
「名を馳せていた職人の技術を引き継いで、後継者を名乗れる職人が残っていないと判明したときに、サーバル王国とドリアン王国の、ケレメイン公爵領での職人探しは終わったんだな。」
「はい、サーバル王国もドリアン王国も、ケレメイン公爵領にいる職人に対する興味を完全に失いました。」
と文官。
「サーバル王国とドリアン王国が、ケレメイン公爵領の職人に興味を持たれなくなったこと自体は喜ばしかったのですが、職人が収入を得る手段は絶たれたままになってしまったのです。」
と文官。
「ヒサツグ様とお会いする前に、何度も立て直しを図ろうとしたんですよ。」
と職人。
「ですが、いったんケチがつくと、転げるように悪い方へ悪い方へと。」
と職人。
「ケレメイン公爵領にいる職人で、サーバル王国の息がかかった商人の取引相手に選ばれなかった職人は、明日が見えないどん底にいました。」
と職人。
「あのどん底から這い上がろうとしても、這い上がるために使えるものが、私どもの手元には何もなかったのです。」
と職人。
「あの当時の私どもは、誇りを持って野垂れ死ぬか、生き延びるために誇りを捨てるか。
二つに一つでした。」
「苦しい中で生きることを諦めないでいてくれて良かった。
ケレメイン大公国民として、今こうして話ができることをオレは喜んでいる。」
「サーバル王国に選ばれなかった私ども職人が、どちらの選択肢も選ばずに、ヒサツグ様の御前に立てていることに、我々、職人一同、この上ない喜びでいっぱいです。
今後も、どうか私どもをお導きください。」
と職人。
「私達、文官もどうぞ、心ゆくまでヒサツグ様がお使いください。」
と文官。
文官の合図で、職人と文官は、全員、オレに頭を下げる。
ヤグルマさんと秘書3人は、静かにオレを見守っている。
「全員のその気持ち、しっかりとオレが受け取った。
全員、これからもオレについてこい!」
文官達は、オレがケレメイン公爵の伴侶だったときに訪問した四つの工房の職人と話をしていた。
工房の職人の前では、さすがに聞けないよなー。
『オレの秘書に尻を蹴り上げられることは、文官の人生に幸運をもたらしたか?』
なんてさ。
今日は、オレの胸にしまっておこう。
いずれ、現場を目にする機会があるかもしれない。
待てよ?
「ヤグルマさん。
確認があるんだけど、いいかな?」
「ヒサツグ様。どうぞ。」
とヤグルマさん。
「オレの秘書が文官の尻を蹴り上げている現場を見たら、オレは見ているだけでいいのかな?
オレの秘書に尻を蹴り上げられることに異議がないかを文官を呼び出して話を聞いた方がいいのかな?」
「ヒサツグ様は、混ざりたいですか?」
とヤグルマさん。
「誘われても混ざりはしないかな。」
「ヒサツグ様が混ざることを希望されないなら。
文官が一人でいるときに、一人一人に手短に、ヒサツグ様がお気にされていることを、本人に直接確認されてみてはいかがでしょうか?」
とヤグルマさん。
「うん、そうする。」
オレ達が近づくと。
文官達と四つの工房の職人が、輪を広げて、オレ達が加われるようにしてくれた。
「この集団は、オレにとって、苦境を乗り越えるために背中を預けるようにして戦ってきた戦友だ。
今日の祝言で、全員の顔を見れて良かった。」
オレがそう言うと。
「ヒサツグ様にお愛した当時は、ケレメイン公爵領の職人はどん底にいましたからね。」
と文官。
「職人だけがどん底だったのかな?
職人なら、真っ先に囲い込みたくならないのかな?」
オレは、疑問をそのまま口に出した。
「農産物の生産ができる農家には、早々にサーバル王国のシガラキノ王女殿下の名前での援助が行き届きました。」
と文官。
「農産物の生産と供給が途絶えないように差配することは、為政者の基本だからな。」
為政者の基本だと自分で話していて、オレは、オレの秘書のサーバル王国への警戒心を改めて理解した。
サーバル王国は、シガラキノ王女殿下の個人資産を使い、マウンテン王国のケレメイン公爵領の食料がなくならないようにする施策で、ケレメイン公爵領民に食料を配るのではなく、ケレメイン公爵領の食料の生産者に対して、サーバル王国のシガラキノ王女殿下の名前のついた金をばら撒いたんだなー。
シガラキノ様は個人資産を投入するにあたり、ケレメイン公爵領で何の策も弄さなかった。
サーバル王国は、ケレメイン公爵領を支配する未来のために、サーバル王国の王女の名前を有効利用していた。
サーバル王国の支配に危機感を募らせていた人は、なんとしてでも、オレに成功させたかったんだな。
サーバル王国の影響力をそぐために。
ケレメイン公爵の伴侶として、オレが魔王による消失後のケレメイン公爵領の経済立て直しに携わることになった当時の背景が分かってきたぞ。
「商人の一部は、サーバル王国との取引に飛びついて生き延びました。」
と文官。
「ケレメイン公爵家からサーバル王国に鞍替えした商人は、仕入れ先と売り先を変えたのかな?」
「はい。その商人は、ケレメイン公爵領の商人でありながら、サーバル王国御用達のようになっていましたね。」
と文官。
「商人の裏切りは、ケレメイン公爵領内の物流に差し障りが出たよな?」
「ええ。先代ケレメイン公爵の当主ご夫妻とヒサツグ様が繋いだ縁で、大店の主人が、ケレメイン公爵との取引を大事にしていたことは、僥倖でした。
ケレメイン公爵領内の物流が止まらずに済みました。」
と文官。
「サーバル王国の援助は、侵略であることを隠していなかったんだな。」
「侵略かどうかまで、一介の領民には判断がつきません。
商人が気づかなかったわけはないとは思いますが、生き残りをかけて、趨勢がどちらに傾いているかで、サーバル王国の傘下に入ったのでしょう。」
と文官。
魔王による消失によって起きたシビアな現実をオレは聞いている。
「職人は、職人自身の技術がものをいいます。」
と職人。
「サーバル王国は、ケレメイン公爵領内にいる腕のいい職人や、名を馳せている職人を探していました。
金の入った袋を見せながら。」
と職人。
「金の入っている袋を見せられているこちらは、援助に来てくれたと思い、誠心誠意もてなそうとしました。
農家には、既に金が支払われていることを聞いていましたから。」
と職人。
「サーバル王国は、あるときから、職人のいる場所に寄り付かなくなりました。
金の入った袋を持ったサーバル王国人にはある目的があったのですが、サーバル王国の目論見は空振りに終わったのです。」
と職人。
「サーバル王国の目的とは、技術がある職人の身売りや引き抜きかな。
技術がある職人狙いなら、サーバル王国だけではなく、サーバル王国のふりしたドリアン王国も混ざっていそうだな。」
オレのふと漏らした言葉に。
「混ざっていたと思います。
当時は、その判別ができませんでしたが、その後のサーバル王国とドリアン王国の動きからすると、どちらの国もケレメイン公爵領で活発に活動していたことでしょう。」
と文官。
「ケレメイン公爵領で名を馳せていた職人は、軒並み、魔王による消滅でいなくなっていました。」
と職人。
「名を馳せていた職人の技術を引き継いで、後継者を名乗れる職人が残っていないと判明したときに、サーバル王国とドリアン王国の、ケレメイン公爵領での職人探しは終わったんだな。」
「はい、サーバル王国もドリアン王国も、ケレメイン公爵領にいる職人に対する興味を完全に失いました。」
と文官。
「サーバル王国とドリアン王国が、ケレメイン公爵領の職人に興味を持たれなくなったこと自体は喜ばしかったのですが、職人が収入を得る手段は絶たれたままになってしまったのです。」
と文官。
「ヒサツグ様とお会いする前に、何度も立て直しを図ろうとしたんですよ。」
と職人。
「ですが、いったんケチがつくと、転げるように悪い方へ悪い方へと。」
と職人。
「ケレメイン公爵領にいる職人で、サーバル王国の息がかかった商人の取引相手に選ばれなかった職人は、明日が見えないどん底にいました。」
と職人。
「あのどん底から這い上がろうとしても、這い上がるために使えるものが、私どもの手元には何もなかったのです。」
と職人。
「あの当時の私どもは、誇りを持って野垂れ死ぬか、生き延びるために誇りを捨てるか。
二つに一つでした。」
「苦しい中で生きることを諦めないでいてくれて良かった。
ケレメイン大公国民として、今こうして話ができることをオレは喜んでいる。」
「サーバル王国に選ばれなかった私ども職人が、どちらの選択肢も選ばずに、ヒサツグ様の御前に立てていることに、我々、職人一同、この上ない喜びでいっぱいです。
今後も、どうか私どもをお導きください。」
と職人。
「私達、文官もどうぞ、心ゆくまでヒサツグ様がお使いください。」
と文官。
文官の合図で、職人と文官は、全員、オレに頭を下げる。
ヤグルマさんと秘書3人は、静かにオレを見守っている。
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