《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

638.ミーレ長官の息子ケヤキくんにする耳に痛い話、その二。ケヤキくんが浸かっているぬるま湯は、オレが用意しました。なぜ用意したかというと?

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「ケヤキがミーレ長官の息子だと知っているから、大人はケヤキに好意的な対応をしたり、ケヤキのすることを大目に見てくれてきたんだ。

ケヤキが大人といる方が楽に感じるのは、ケヤキといる大人側が、ケヤキにそう感じさせるようにしているからだな。」

大人として子どもに酷いことはしないという前提も、個々人の倫理観が前提になってくる。

ミーレ長官の息子さんケヤキくんにとって、今の環境がとても快適なのは、ケヤキくんが快適であるように、大人が用意したものだから、と説明しておくかなー。

「どういうことでしょうか?」
とミーレ長官の息子さん。

「オレとヤグルマさん経由でケヤキが出会った人は、ミーレ長官の息子さんという生まれでなければ、ケヤキに見向きもしなかった、ということはあるぞ?」

ミーレ長官の息子さんケヤキくんは、押し黙った。

ミーレ長官の息子さんケヤキくんの言動は、名の知れた親を持つ子どもに起こる問題なのかもしれない。

親の知名度に無自覚でいないこと、親の知名度と自身の待遇は切り離せないと自覚すること。

この二つは、ミーレ長官の息子に生まれたケヤキくんの人生に必要だな。

「ケヤキがミーレ長官夫妻経由で出会った人は、お父さんお母さんがミーレ長官だから、ケヤキをその息子だと認識してから関わっている。

これは、お父さんとお母さんの功績がケヤキへの待遇を底上げしているということになる。」

「両親と私は三人で一つでした。」
とミーレ長官の息子さんのケヤキくんは、自分の頑張りもあったんだ、と主張してきた。

「ケヤキの周りにいる大人は、ケヤキの頑張りを認めているぞ。

お父さんとお母さんの功績が、ケヤキの周りにいる大人のケヤキとの関わり方を左右するというのは、ケヤキがお父さんお母さんから離れてマウンテン王国に行く前に関わりがあった、ミーレ長官夫妻と交流がある大人の行動原理と同じなんだ。」

ミーレ長官の息子さんは、びっくりしている。

考えたことはなかっただろうな。

「両者の関わり方が違いは、ミーレ長官夫妻経由で出会った人が、ミーレ長官夫妻と同様に、ケヤキを一人の大人として相対していたからだな。

今の、大人といるのが楽と感じる状況は、周りの大人が、ミーレ長官の息子さんに人といることを楽だと感じさせようと気をつけて振る舞ってきた結果だ。

今の環境は、ケヤキに、緊張しない人間関係があることを経験させるためにあったゆりかごだ。

次は、ミーレ長官の息子という鎧がない状態で、人に慣れていく段階だな。」

「私が両親の息子だということは、永遠に変わりません。」
とミーレ長官の息子さんの表情はかたい。

「ミーレ長官の息子という生まれで周りに甘やかされるのは、今の子どもの時期の期間限定。

子どもはやがて大人になる。

大人になったら、今と同じ甘やかされた環境はなくなる。

ケヤキが大人になっても、今の環境に居ようとするなら。

ミーレ長官の息子という看板を自分の名前よりも大きなものとして一生背負うことになる。

オレは、いつまでもケヤキを甘やかしはしないぞ?

ケヤキが甘やかされただけの大人になったら。

オレやヤグルマさんの周りに、ケヤキの居場所はなくなる。」

ミーレ長官の息子さんケヤキくんは、驚愕している。

「ミーレ長官の息子という看板を背負い続けるなら。

ミーレ長官と同じくらいには仕事ができてうまくやれるのが当たり前という期待を失望に変えないように。

ケヤキは実績を積んで、ミーレ長官夫妻よりも仕事ができることを示し続けていかなくてはならない。

甘やかされて楽に暮らしているだけでは。

ケヤキと今のケヤキの周りにいる人との良好な関係は、大人になる前に、終わる。

あと一年も続かないぞ。」

オレに同意するように、ヤグルマさんは黙って頷く。

「私は今の環境が気に入っています。

周りの方も私によくしてくれています。

それなのに、ですか?」
とミーレ長官の息子さん。
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