《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
627 / 667
第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

627.カズラくんの仕切りによるオレとクロードの夫婦固めの盃をして、オレは、クロードと幸せになるぞ、と思いました。

しおりを挟む
オレは、クロードが三度口をつけた後のグラスに三度口をつけて、グラスの中身を飲み干し、カズラくんに過去の盃を渡す。

カズラくんは、空になった過去の盃を部屋中の人が見えるように、高く掲げた後、台の上に戻した。

「クロードとヒサツグの過去は、二人の出会いの礎になった。」
とカズラくん。

祝言でカズラくんが話している台詞は、オレとクロードが夫婦として生きていくのに困らないように、と、カズラくんが考えてくれたもの。

祝言に使うお酒は、クロードがこういうものが欲しいと新しく作らせた。

オレとクロードが祝言で口にしているお酒は、無味無臭に近く、アルコール度は限りなく低く透明だ。

何かを混ぜられたときにすぐに気づけて、杯を重ねても、頭と体が働かないことがないようなお酒の開発を命じて作らせたお酒は、祝言の用途にぴったりだ。

祝言の参加者のグラスには、オレとクロードが飲んでいるお酒と同じお酒が入っている。

祝言後に仕事に戻る参加者が多数。

少量で酔いが回るようなお酒は用意しなかった。

式典様のお酒として、祝言用のお酒は、今後需要があるかもしれないなー。

オレが曇らない思考で、カズラくんが、クロードに現在の盃を渡しているのを見ている。

「次は、現在の盃。」
とカズラくんは、部屋の中を見渡す。

「二人の歩みが交わり、二人は夫婦になった。」
とカズラくん。

カズラくんから、中サイズの盃を受け取ったオレは、カズラくんに注いでもらったお酒を、三口飲む。

オレから、現在の盃を受け取ったクロードも三口飲むと、カズラくんに空の盃を返す。

カズラくんは、空になった現在の盃を掲げる。

「クロードとヒサツグが夫婦として生きる姿が、今、ここにある。」
と話してから、盃を台に置くカズラくん。

オレとクロードが結婚してから、オレとクロードが夫婦であることを、好き合った者同士だからね、のような好意的に感情から認めてもらったことは、あったかな?

カズラくんは、オレとクロードが夫婦として生きている姿を当然のように肯定してくれた。

胸の内から、じわじわこみ上げてくるものがある。

オレが飲んでいるのは、アルコール度数の低いお酒なのに。

飲んでいるとはいっても、たいして飲んでいないのに。

情緒がふやけてしまいそうになる。

頬が紅潮して、瞳が潤んできたかもしれない。

まだ、現在の盃が終わったところで。

これから、未来の盃があるのに。

このまま、お酒を口にしても、オレ、飲めるかな?

「最後は、未来の盃。クロードとヒサツグの末永く続く幸せな未来を祈願して。」
とカズラくん。

クロードと結婚したときのオレは、クロードと末永く幸せになる未来なんて考えたこともなかったのに。

オレとクロードが末永く幸せになることを言葉に出して願われるのは、いいな。

オレ、クロードと末永く幸せになる。

オレの幸せな決意をクロードに早く伝えたいなー。

カズラくんから受け取った未来の盃を三口飲んだクロードは、続いて未来の盃を受け取ったオレが三口で飲み終わり、カズラくんにグラスを返すのを見て微笑んでいる。

オレ、今、幸せだなー。

この時間をずっと続けたい。

クロードに微笑まれたら、オレの口と頬も自然と緩む。

クロード。
オレ達、いつまでも、笑顔を向けていられる夫婦でいような。

「過去、現在、未来。全ての盃は、今、空になった。」
とカズラくん。

カズラくんは、三つの盃が負いてある台を示した後、部屋中に声を響かせた。

「この部屋にいる全員のグラスの中のお酒は、クロードとヒサツグのが盃で飲んでいたのと同じお酒。

ぼく達が見たのは、クロードとヒサツグの夫婦としての幸せな未来への覚悟。

この部屋に集まっているぼく達は、クロードとヒサツグ夫婦が円満であることが、この先もうまく運ぶための土台であるということを知っている。

ぼくは、この部屋の全員に呼びかけよう。

クロードとヒサツグの夫婦の仲が永遠に円満であることが理想であり、クロードとヒサツグが円満であることに協力する、ということに賛同するなら。

各自、己が持っているグラスを一口飲んで、グラスを掲げ、賛同の意を示そう。」
とカズラくん。

カズラくんは、まずは、ぼくから、と言って。

ポケットに入れていたグラスを取り出した。

オレとクロードが、カズラくんのグラスにお酒を注ぐ。

カズラくんがオレとクロードの盃に注ぐのに使っていた透明な水差しを、オレとクロードは二人で持った。

「クロードとヒサツグ夫婦の円満維持。」
と言うと、カズラくんは、お酒を一口飲み、持っていたグラスを掲げる。

カズラくんに続く二人目になるのは、誰かな?

と見回すまでもなく。

「クロードとヒサツグ夫婦の円満維持。」
と女神様がぐいっと飲んだグラスを機嫌よく掲げた。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

どうしてこうなった?(ショートから短編枠にしたもの)

エウラ
BL
3歳で魔物に襲われて両親を亡くし、孤児院育ちの黒髪黒目で童顔のノヴァは前世の記憶持ちの異世界転生者だ。現在27歳のCランク冒険者。 魔物に襲われたときに前世の記憶が甦ったが、本人は特にチートもなく平々凡々に過ごしていた。そんなある日、年下22歳の若きSランク冒険者のアビスと一線を越える出来事があり、そこで自分でも知らなかった今世の過去を知ることになり、事態は色々動き出す。 若干ストーカー気味なわんこ系年下冒険者に溺愛される自己評価の低い無自覚美人の話。 *以前ショート専用の枠で書いてましたが話数増えて収拾がつかなくなったので短編枠を作って移動しました。 お手数おかけしますがよろしくお願いいたします。 なお、プロローグ以降、途中まではショートの投稿分をまるっと載せるのでそちらと重複します。ご注意下さい。出来次第投稿する予定です。 こちらはR18には*印付けます。(でも忘れたらすみません)

どうも、卵から生まれた魔人です。

べす
BL
卵から生まれる瞬間、人間に召喚されてしまった魔人のレヴィウス。 太った小鳥にしか見えないせいで用無しと始末されそうになった所を、優しげな神官に救われるのだが…

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

君なんか求めてない。

ビーバー父さん
BL
異世界ものです。 異世界に召喚されて見知らぬ獣人の国にいた、佐野山来夏。 何かチートがありそうで無かった来夏の前に、本当の召喚者が現われた。 ユア・シノハラはまだ高校生の男の子だった。 人が救世主として召喚したユアと、精霊たちが召喚したライカの物語。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

──だから、なんでそうなんだっ!

涼暮つき
BL
「面倒くさいから認めちゃえば?」 「アホか」 俺は普通に生きていきたいんだよ。 おまえみたいなやつは大嫌いだ。 でも、本当は羨ましいと思ったんだ。 ありのままの自分で生きてるおまえを──。 身近にありそうな日常系メンズラブ。 *以前外部URLで公開していたものを 掲載し直しました。 ※表紙は雨月リンさんに描いていただきました。  作者さまからお預かりしている大切な作品です。  画像の無断転載など固く禁じます。

処理中です...