《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

625.オレとクロードなりの祝言をあげましょう。まずは、挨拶と乾杯から。

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挨拶の口上は、手短にして、省ける箇所は省くことにした。

開始から終わりまで、約一時間を見込んでいる。

スケジュール調整をするとき。
『そんな短時間でいいの?』
とカズラくんから疑わしそうに確認された。

カズラくんは、親族の距離でオレとクロードの仲がこじれたりしないかを心配してくれている。

オレが、女神様の世界に来たことも。

女神様の世界に来たオレが女神様の世界から帰らないことも。

クロードがオレを愛していて、オレがクロードを愛しているという前提の上で、成り立っている。

オレもカズラくんも、人の思いに永遠があるかどうかなんて、無粋なことを口にすることはない。

思いが永遠であるかどうかについて、言葉で伝えるだけじゃ足りない。

愛を伝える言葉がないと、信じるものがない。

愛を囁く言葉は、愛を信じる力になる。

言葉とともに、言葉を裏付ける行動が伴えば、無敵。

愛のままに生きていける。

オレがクロードを愛おしいと思う気持ちと。

クロードがオレに捧げる愛の形は。

ずっと同じままにはならないと思う。

子どものときの恋と大人の恋が変わってくるように。

十年、二十年と経てば、その時とその先を見据えて変わっていくと思う。

十年、二十年経てば、オレとクロードもそれだけ歳を重ねていて、オレ達の周りも同じように歳を重ねる。

消えていく命もあれば。
新しい命が芽生えもする。

子どもが大人にもなる。

オレとクロードも変わって、周りも変わっていく。

カズラくんに、カズラくんのお父さんとお母さんの話を聞いたときに思ったことがある。

カズラくんのお父さんは、何年経っても、環境と気持ちが変わらないことをお母さんに求めた。

お母さんは、お父さんの愛を喜び、愛人のままで終わる気がないことをお父さんに隠したままで二十年以上、お父さんが変わることを望み続けた。

カズラくんのお父さんとお母さんのその後なんて、オレには知る由もない。

でも、オレには愛し合う者同士が互いに望むことについての教訓を得たと思っている。

二人だけで想い合う日々が、永遠になるようにするにはどうしたらいいか。

オレかクロード、どちらかの頑張りだけ、や、将来設計を一人で考えて実行していては続かない。

何を二人で決めて、何を誰かに任せるか、オレ達二人のことをオレ達が知らないままでいないようにしようと、オレとクロードは話し合いで決めた。

部屋の中にいる全員が、ドリンクを入れ終わったのを確認。

全員の手に持っているグラスには、日本酒に似た透明な酒が入っている。

オレは、クロードに始めるぞ、と囁いた。

招待客とオレ達が全員揃ったところで、まず、クロードの挨拶から。

「祝言では、身内の繋がりを意識するために盃を交わす。

私とヒサツグの結婚式は、社交の場でもあった。

このたびの祝言は、私とヒサツグ、私とヒサツグが信をおく者とで、内々に結束を固めるためのものだ。」
とクロード。

参加者は、神妙な顔をしている。

裏切り者を放り出した後の人のやりくりをしながら、早二年。

二年経って軌道にのった部署もあれば、まだ駆けずり回っている部署もある。

機密に絡めば絡むほど、マニュアルではなく、職場の先輩からの指導や引き継ぎで、仕事を覚える。

ケレメイン家の機密を扱っている家内については、柴犬人が抜けた穴がまだ完全に塞げたわけじゃない。

ケレメイン家の家内については、まだ何波乱かあるかもしれないという予想がたっている。

二年経てばほとぼりがさめた、と言い出した人もいたからな。

気は抜けない。

そんな状況だからこそ、結束を固める儀式が必要だったんだ、と考えているのかもしれないな。

外れてはいないけれど、それだけじゃないぞ?

祝言の中で気づいてみろ。

新しい発見と得られた確信は、無駄にならないからな。

「オレとクロードの結婚式は、外交として十分機能した。

祝言への招待は、これまでのオレとクロードを直接支えてきたことを条件とした。

この部屋にいるのは、オレとクロードが信用して、オレとクロードが進む先に、これからも連れていきたいと考えている顔ぶれだ。」

オレの台詞に、部屋の中にいる人達は、顔を引き締める。

「ヒサツグと。」
とクロードの声が響く。

「クロードと。」

続きはオレとクロードで。

「「共にあり、支え、ケレメイン大公家とケレメイン大公国という新しい時代を歩くと決めた者と同じグラスを持ち、同じ飲み物で祝う場をもうけられたことに感謝する。」」

「乾杯。」
とカズラくん。

「「「「「乾杯。」」」」」

オレとクロードは、グラスを掲げてから、グラスをあける。

オレとクロードに続いて、カズラくんがグラスを空にし。

部屋にいた他の人達もグラスをあけた。

高揚感漂う室内。

続いて、夫婦固めの盃に移ろう。
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