《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
622 / 667
第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

622.七五三?五歳のころのことを覚えていますか?オレはあまり覚えていませんでしたが、カズラくんは、よく覚えていました。なぜなら?

しおりを挟む
七五三と言われても、ピンとこないオレと対照的に、よく覚えているカズラくん。

「自分の五歳のころのことは、オレ、あんまり覚えていないんだよな。」

カズラくんの人生の中で、衝撃的な出来事があったから、カズラくんは覚えているのかもしれない。

「ああしたい、こうしたい、と華やかなプランに思いを馳せる母と二人で、七五三のパンフレットを眺めていたね。」
とカズラくん。

「七五三は、神社にお参りして、家族写真を撮ったかな。」

当時を思い出す、というよりも、風習としてそういうことをしたかもしれない、という意識から、お参りや家族写真の話題をオレは出した。

「七五三をしたいなら、適当な日に母子で神社に行ってきたらいい、生活費で賄えるだろう、と父に言われた母は、三人の写真を残さないと言われたことを引きずっていたね。」
とカズラくん。

「カズラくんのお母さんは、カズラくんのお父さんから、適当な日に、カズラくんとお母さんで神社にお参りしにいって、スマホで母子の写真を撮ればいいだろう、という話をされたんだな。」

地元の神社へ往復する時間とお賽銭を持参して、勝手にやれ、と。

「ぼく一人の写真や、ぼくと母の写真を残す分には、文句をつけない、と父に言われても。

母は、三人でない写真は嫌だ、とぼくと二人での七五三を嫌がった。」
とカズラくん。

「お母さんは、家族写真にこだわりがあったのかな?」

「家族写真にこだわりがあったのではなく、何かをするときに父が参加していることが、母には重要だったんだよ。」
とカズラくん。

「お母さんは、お父さんが大好きだったということかな?」

「ぼくと母の二人なら、私服で写真を撮るだけになる。

予算的にね。

父がお金を出すか出さないかで、結果は全然違ったものになる。」
とカズラくん。

「お父さんは、お母さんにほだされなかったんだなー。」

「父の基準は、父が生きやすくなることだからね。」
とカズラくん。

カズラくんのお父さんのブレなさは、お父さん自身を一番にしているからなんだな。

カズラくんが、カズラくんを利用させないという姿勢を周りに示してきたのは、利用されてきたと思うところがあったからかな。

「ウェディングドレスを着た写真さえない、と母はずっと嘆いていたよ。

父は、正妻との婚姻関係を解消するつもりがなく、正妻と正妻の子どもを日陰者にする気なんて毛頭なかった。

愛人である母が結婚式をあげたい、とどれだけ訴えても。

愛人である母に、正妻と正妻の子どもの分をおかすことは許さなかったよ。

父の安寧のためにね。」
とカズラくん。

「イベントじゃなくても家族写真を残したいとお母さんが頼んでも、カズラくんのお父さんには響かなかったんだな。」

「父は、愛人がいることを本妻と本妻の子どもに特定されないために、ぼくや母と会う日に法則性を作らなかった。」
とカズラくん。

「カズラくんが成人して、カズラくんの会社が軌道に乗るまで、本妻の子どもさんは、異母弟の存在を知らずにいたんだから、お父さんの思惑通りだよな。」

「父は、ぼくに本妻の子どもの跡継ぎとしての立場を脅かすことはさせないと、本妻の子どもさんに説明していたよ。

子どもは、できたから産むのを止めなかっただけで、愛人には愛人以外の役割を求めてはいなかった、と。」
とカズラくん。

「カズラくんのお父さんは、カズラくんと本妻の子どもさんのいる前で説明したのかな?」

「母もいたよ。」
とカズラくん。

「カズラくんとお母さん、本妻の子どもさん、お父さんの面子かな?」

本妻さんは、その場にいなかったんだなー。

「人前で父から直接言われて、やっと。

母は、父の愛人という立場から、自身が這い上がることはないと理解していたね。」
とカズラくん。

「お母さんは、受け入れていたのかな?」

「母は、いつか、父が本妻と離婚して、母と再婚するものだと二十年以上、信じていたみたいだよ。」
とカズラくん。

「そうなると。お母さんが、家族写真を残したがったのは、お父さんと結婚する将来を見越しての行動だったかもしれないよな。」

「本当の家族は、ぼく達だというために?

母以外の誰にも望まれない結婚だよ?」
とカズラくん。

「その時々の形を取り繕っておけば、後に、ちゃんとした形になっているものを見ることができる。」

なんとか、合格ラインに持っていって、次の期限までには、もっとよくしておきますという約束みたいなものかなー。

「カズラくんとお母さんとお父さんは、元から一つの家族なんだと示す証拠が、お母さんは欲しかったのかもしれない。

幸せな家族を形にして残したかった、という可能性もあるかなー。」

「幸せな家族ね。そういう夢を見たかもしれないよね。」
とカズラくん。

カズラくんのお母さんの真意は、オレにもカズラくんにも分からないままだ。

女神様の世界で生きるカズラくんには、カズラくんのお母さんに確認する日はこない。

今のカズラくんの感情は、カズラくんだけのもの。

カズラくんのお母さんが、誰のために写真を残したがったのかの答えは、カズラくんが作ったらいい。

「誰かの気持ちを考えているけれど、ヒサツグ自身の気持ちは?」
とカズラくん。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

どうしてこうなった?(ショートから短編枠にしたもの)

エウラ
BL
3歳で魔物に襲われて両親を亡くし、孤児院育ちの黒髪黒目で童顔のノヴァは前世の記憶持ちの異世界転生者だ。現在27歳のCランク冒険者。 魔物に襲われたときに前世の記憶が甦ったが、本人は特にチートもなく平々凡々に過ごしていた。そんなある日、年下22歳の若きSランク冒険者のアビスと一線を越える出来事があり、そこで自分でも知らなかった今世の過去を知ることになり、事態は色々動き出す。 若干ストーカー気味なわんこ系年下冒険者に溺愛される自己評価の低い無自覚美人の話。 *以前ショート専用の枠で書いてましたが話数増えて収拾がつかなくなったので短編枠を作って移動しました。 お手数おかけしますがよろしくお願いいたします。 なお、プロローグ以降、途中まではショートの投稿分をまるっと載せるのでそちらと重複します。ご注意下さい。出来次第投稿する予定です。 こちらはR18には*印付けます。(でも忘れたらすみません)

どうも、卵から生まれた魔人です。

べす
BL
卵から生まれる瞬間、人間に召喚されてしまった魔人のレヴィウス。 太った小鳥にしか見えないせいで用無しと始末されそうになった所を、優しげな神官に救われるのだが…

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

処理中です...