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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
622.七五三?五歳のころのことを覚えていますか?オレはあまり覚えていませんでしたが、カズラくんは、よく覚えていました。なぜなら?
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七五三と言われても、ピンとこないオレと対照的に、よく覚えているカズラくん。
「自分の五歳のころのことは、オレ、あんまり覚えていないんだよな。」
カズラくんの人生の中で、衝撃的な出来事があったから、カズラくんは覚えているのかもしれない。
「ああしたい、こうしたい、と華やかなプランに思いを馳せる母と二人で、七五三のパンフレットを眺めていたね。」
とカズラくん。
「七五三は、神社にお参りして、家族写真を撮ったかな。」
当時を思い出す、というよりも、風習としてそういうことをしたかもしれない、という意識から、お参りや家族写真の話題をオレは出した。
「七五三をしたいなら、適当な日に母子で神社に行ってきたらいい、生活費で賄えるだろう、と父に言われた母は、三人の写真を残さないと言われたことを引きずっていたね。」
とカズラくん。
「カズラくんのお母さんは、カズラくんのお父さんから、適当な日に、カズラくんとお母さんで神社にお参りしにいって、スマホで母子の写真を撮ればいいだろう、という話をされたんだな。」
地元の神社へ往復する時間とお賽銭を持参して、勝手にやれ、と。
「ぼく一人の写真や、ぼくと母の写真を残す分には、文句をつけない、と父に言われても。
母は、三人でない写真は嫌だ、とぼくと二人での七五三を嫌がった。」
とカズラくん。
「お母さんは、家族写真にこだわりがあったのかな?」
「家族写真にこだわりがあったのではなく、何かをするときに父が参加していることが、母には重要だったんだよ。」
とカズラくん。
「お母さんは、お父さんが大好きだったということかな?」
「ぼくと母の二人なら、私服で写真を撮るだけになる。
予算的にね。
父がお金を出すか出さないかで、結果は全然違ったものになる。」
とカズラくん。
「お父さんは、お母さんにほだされなかったんだなー。」
「父の基準は、父が生きやすくなることだからね。」
とカズラくん。
カズラくんのお父さんのブレなさは、お父さん自身を一番にしているからなんだな。
カズラくんが、カズラくんを利用させないという姿勢を周りに示してきたのは、利用されてきたと思うところがあったからかな。
「ウェディングドレスを着た写真さえない、と母はずっと嘆いていたよ。
父は、正妻との婚姻関係を解消するつもりがなく、正妻と正妻の子どもを日陰者にする気なんて毛頭なかった。
愛人である母が結婚式をあげたい、とどれだけ訴えても。
愛人である母に、正妻と正妻の子どもの分をおかすことは許さなかったよ。
父の安寧のためにね。」
とカズラくん。
「イベントじゃなくても家族写真を残したいとお母さんが頼んでも、カズラくんのお父さんには響かなかったんだな。」
「父は、愛人がいることを本妻と本妻の子どもに特定されないために、ぼくや母と会う日に法則性を作らなかった。」
とカズラくん。
「カズラくんが成人して、カズラくんの会社が軌道に乗るまで、本妻の子どもさんは、異母弟の存在を知らずにいたんだから、お父さんの思惑通りだよな。」
「父は、ぼくに本妻の子どもの跡継ぎとしての立場を脅かすことはさせないと、本妻の子どもさんに説明していたよ。
子どもは、できたから産むのを止めなかっただけで、愛人には愛人以外の役割を求めてはいなかった、と。」
とカズラくん。
「カズラくんのお父さんは、カズラくんと本妻の子どもさんのいる前で説明したのかな?」
「母もいたよ。」
とカズラくん。
「カズラくんとお母さん、本妻の子どもさん、お父さんの面子かな?」
本妻さんは、その場にいなかったんだなー。
「人前で父から直接言われて、やっと。
母は、父の愛人という立場から、自身が這い上がることはないと理解していたね。」
とカズラくん。
「お母さんは、受け入れていたのかな?」
「母は、いつか、父が本妻と離婚して、母と再婚するものだと二十年以上、信じていたみたいだよ。」
とカズラくん。
「そうなると。お母さんが、家族写真を残したがったのは、お父さんと結婚する将来を見越しての行動だったかもしれないよな。」
「本当の家族は、ぼく達だというために?
母以外の誰にも望まれない結婚だよ?」
とカズラくん。
「その時々の形を取り繕っておけば、後に、ちゃんとした形になっているものを見ることができる。」
なんとか、合格ラインに持っていって、次の期限までには、もっとよくしておきますという約束みたいなものかなー。
「カズラくんとお母さんとお父さんは、元から一つの家族なんだと示す証拠が、お母さんは欲しかったのかもしれない。
幸せな家族を形にして残したかった、という可能性もあるかなー。」
「幸せな家族ね。そういう夢を見たかもしれないよね。」
とカズラくん。
カズラくんのお母さんの真意は、オレにもカズラくんにも分からないままだ。
女神様の世界で生きるカズラくんには、カズラくんのお母さんに確認する日はこない。
今のカズラくんの感情は、カズラくんだけのもの。
カズラくんのお母さんが、誰のために写真を残したがったのかの答えは、カズラくんが作ったらいい。
「誰かの気持ちを考えているけれど、ヒサツグ自身の気持ちは?」
とカズラくん。
「自分の五歳のころのことは、オレ、あんまり覚えていないんだよな。」
カズラくんの人生の中で、衝撃的な出来事があったから、カズラくんは覚えているのかもしれない。
「ああしたい、こうしたい、と華やかなプランに思いを馳せる母と二人で、七五三のパンフレットを眺めていたね。」
とカズラくん。
「七五三は、神社にお参りして、家族写真を撮ったかな。」
当時を思い出す、というよりも、風習としてそういうことをしたかもしれない、という意識から、お参りや家族写真の話題をオレは出した。
「七五三をしたいなら、適当な日に母子で神社に行ってきたらいい、生活費で賄えるだろう、と父に言われた母は、三人の写真を残さないと言われたことを引きずっていたね。」
とカズラくん。
「カズラくんのお母さんは、カズラくんのお父さんから、適当な日に、カズラくんとお母さんで神社にお参りしにいって、スマホで母子の写真を撮ればいいだろう、という話をされたんだな。」
地元の神社へ往復する時間とお賽銭を持参して、勝手にやれ、と。
「ぼく一人の写真や、ぼくと母の写真を残す分には、文句をつけない、と父に言われても。
母は、三人でない写真は嫌だ、とぼくと二人での七五三を嫌がった。」
とカズラくん。
「お母さんは、家族写真にこだわりがあったのかな?」
「家族写真にこだわりがあったのではなく、何かをするときに父が参加していることが、母には重要だったんだよ。」
とカズラくん。
「お母さんは、お父さんが大好きだったということかな?」
「ぼくと母の二人なら、私服で写真を撮るだけになる。
予算的にね。
父がお金を出すか出さないかで、結果は全然違ったものになる。」
とカズラくん。
「お父さんは、お母さんにほだされなかったんだなー。」
「父の基準は、父が生きやすくなることだからね。」
とカズラくん。
カズラくんのお父さんのブレなさは、お父さん自身を一番にしているからなんだな。
カズラくんが、カズラくんを利用させないという姿勢を周りに示してきたのは、利用されてきたと思うところがあったからかな。
「ウェディングドレスを着た写真さえない、と母はずっと嘆いていたよ。
父は、正妻との婚姻関係を解消するつもりがなく、正妻と正妻の子どもを日陰者にする気なんて毛頭なかった。
愛人である母が結婚式をあげたい、とどれだけ訴えても。
愛人である母に、正妻と正妻の子どもの分をおかすことは許さなかったよ。
父の安寧のためにね。」
とカズラくん。
「イベントじゃなくても家族写真を残したいとお母さんが頼んでも、カズラくんのお父さんには響かなかったんだな。」
「父は、愛人がいることを本妻と本妻の子どもに特定されないために、ぼくや母と会う日に法則性を作らなかった。」
とカズラくん。
「カズラくんが成人して、カズラくんの会社が軌道に乗るまで、本妻の子どもさんは、異母弟の存在を知らずにいたんだから、お父さんの思惑通りだよな。」
「父は、ぼくに本妻の子どもの跡継ぎとしての立場を脅かすことはさせないと、本妻の子どもさんに説明していたよ。
子どもは、できたから産むのを止めなかっただけで、愛人には愛人以外の役割を求めてはいなかった、と。」
とカズラくん。
「カズラくんのお父さんは、カズラくんと本妻の子どもさんのいる前で説明したのかな?」
「母もいたよ。」
とカズラくん。
「カズラくんとお母さん、本妻の子どもさん、お父さんの面子かな?」
本妻さんは、その場にいなかったんだなー。
「人前で父から直接言われて、やっと。
母は、父の愛人という立場から、自身が這い上がることはないと理解していたね。」
とカズラくん。
「お母さんは、受け入れていたのかな?」
「母は、いつか、父が本妻と離婚して、母と再婚するものだと二十年以上、信じていたみたいだよ。」
とカズラくん。
「そうなると。お母さんが、家族写真を残したがったのは、お父さんと結婚する将来を見越しての行動だったかもしれないよな。」
「本当の家族は、ぼく達だというために?
母以外の誰にも望まれない結婚だよ?」
とカズラくん。
「その時々の形を取り繕っておけば、後に、ちゃんとした形になっているものを見ることができる。」
なんとか、合格ラインに持っていって、次の期限までには、もっとよくしておきますという約束みたいなものかなー。
「カズラくんとお母さんとお父さんは、元から一つの家族なんだと示す証拠が、お母さんは欲しかったのかもしれない。
幸せな家族を形にして残したかった、という可能性もあるかなー。」
「幸せな家族ね。そういう夢を見たかもしれないよね。」
とカズラくん。
カズラくんのお母さんの真意は、オレにもカズラくんにも分からないままだ。
女神様の世界で生きるカズラくんには、カズラくんのお母さんに確認する日はこない。
今のカズラくんの感情は、カズラくんだけのもの。
カズラくんのお母さんが、誰のために写真を残したがったのかの答えは、カズラくんが作ったらいい。
「誰かの気持ちを考えているけれど、ヒサツグ自身の気持ちは?」
とカズラくん。
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