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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
616.カズラくんにケレメイン大公国の次代を勧めるのは、女神様の世界の住人の本能について気づいたことがあったからです。
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話をする前に、オレはカズラくんにお願いした。
「オレは、今からする話を、カズラくんとクロード以外に広める気はない。
これからオレの話すことは、胸の内に秘めて、出さないでいてほしい。」
「ヒサツグがする話は、正攻法の話じゃないよね?
黙っておく方が良いと判断したら、黙っておくよ。」
とカズラくん。
オレが今から話すことは、女神様の世界の住人に関する、有り難くない話。
「女神様に喚ばれたオレは、今まで、何度も狙われてきた。」
「そうだね。」
とカズラくん。
「オレは、オレが狙われすぎだと思った。」
「へえ?」
とカズラくん。
「英雄公爵の伴侶の座を欲しがって暗殺者を頻繁に送りつけてくるなら、まだ、オレもやっていることを理解できた。
英雄公爵クロードの伴侶がオレだと認められない人は、オレを亡き者にしたいと考える。
カズラくんは、その考えが短絡的過ぎると思わないかな?」
「ヒサツグは、どのへんを短絡的過ぎると言っている?」
とカズラくん。
「カズラくん。
オレは、女神様の世界に来て一週間後には、英雄公爵クロードの伴侶になった。
英雄公爵クロードの伴侶という肩書きがあるにもかかわらず、オレの命の価値はいつ殺しても問題ないと思われるくらいに低いのは、おかしくないかな?」
カズラくんは、うーん、と唸った。
「オレが殺されようとするのを、止めようと動いた人は、毎回少なかった。
すごく異常な状況だとオレは思う。
英雄公爵の伴侶というのは、どれだけ命が安いんだ?
命の心配をしなくなった今のオレには、これまでのオレの命の安さに違和感しかない。
日本にいたときのオレの命の価値は安くなかったから、女神様の世界は、皆、命の価値が安いのかと思っていた。
でも、よく考えると違う。
階級社会で、王家の血が入っている公爵の伴侶の命の価値が低いということなんて、あり得るかな?」
カズラくんは、オレから目をそらさない。
「階級社会で、上の階層に楯突くときは、命を捨てる覚悟がないとできないよね。」
とカズラくん。
だよなー。
「それなのに、ヒサツグを排除しようとした人は、ヒサツグを排除する行為をしたことで、自分がリスクを負うとは誰も考えていなかったね。」
とカズラくん。
「大公妃であるオレを排除しようと動いた人は、リスクを考慮できないくらい考えが足りなかったわけでも、権力者に踊らされていたわけでもないんだよな。」
「ケレメイン大公国の国民でありながら、ケレメイン大公国の大公妃排除に動くことの危険性を誰も理解していなかったよね。
確かに、変だと思うよ。」
とカズラくん。
「オレが、オレの命の価値に対する不自然さに気づいたのは、全てが終わってから。
今から少し前なんだ。
女神様の世界に来てから。
オレの命に価値があるとは思えない状況が続いていた。
英雄公爵の伴侶という立場にいてほしくないから、政治的な理由で、オレを引きずり下ろそうとした、という理由は、納得できる。
政治的な理由ではなく、個人的な恨みが理由であったとしても。
英雄公爵の伴侶をいなくすることに、何のためらいもなく、一丸となって突き進める人が多数いる状況を振り返ってみてさ。
階級社会なのに、あまりにも不自然な動きだと思ったんだよな。」
「不自然だよね。」
とカズラくん。
「不自然な状況になった原因についての、オレの考察から聞いて欲しい。
女神様の世界の住人は、オレ個人ではなく、オレが異世界人だから、いなくなれと考えたんじゃないのかな?
女神様自身が、召喚した異世界人を使い捨てにする考え方だからさ。
女神様の世界の住人のDNAにも、異世界人の生存を許容しない考え方が刻み込まれているのかもしれない、とオレは思った。」
本能的に、という理由はおおいにあり得るね、とカズラくん。
「女神様の世界の住人にとって。
異世界人というものは、神子として女神様に召喚されて役割を果たしたのち、時をおかずに命を散らすものだからね。
女神様の世界で、短命に終わらなかった異世界人は、イレギュラー召喚のヒサツグと元神子のぼくだけ。」
とカズラくん。
「魔王のいない時代に異世界人がいたことはないよな?」
クロードに確認すると。
「いなかった。」
とクロード。
「異世界人は、そもそも、この世界にとって異質な存在。
異世界人が、周りに溶け込もうとするとうまくいかないのは、さ。
女神様の世界の住人の本能が、異世界人に溶け込まれるのを拒絶しているから。
カズラくんはどう思う?」
カズラくんは、うん、と頷いた。
「女神様の世界は、用済みになると、神子はいなくなるという歴史を繰り返している。
用済みになった神子は、ぼく以外、死んでいるんだよね。」
とカズラくん。
「オレは、今からする話を、カズラくんとクロード以外に広める気はない。
これからオレの話すことは、胸の内に秘めて、出さないでいてほしい。」
「ヒサツグがする話は、正攻法の話じゃないよね?
黙っておく方が良いと判断したら、黙っておくよ。」
とカズラくん。
オレが今から話すことは、女神様の世界の住人に関する、有り難くない話。
「女神様に喚ばれたオレは、今まで、何度も狙われてきた。」
「そうだね。」
とカズラくん。
「オレは、オレが狙われすぎだと思った。」
「へえ?」
とカズラくん。
「英雄公爵の伴侶の座を欲しがって暗殺者を頻繁に送りつけてくるなら、まだ、オレもやっていることを理解できた。
英雄公爵クロードの伴侶がオレだと認められない人は、オレを亡き者にしたいと考える。
カズラくんは、その考えが短絡的過ぎると思わないかな?」
「ヒサツグは、どのへんを短絡的過ぎると言っている?」
とカズラくん。
「カズラくん。
オレは、女神様の世界に来て一週間後には、英雄公爵クロードの伴侶になった。
英雄公爵クロードの伴侶という肩書きがあるにもかかわらず、オレの命の価値はいつ殺しても問題ないと思われるくらいに低いのは、おかしくないかな?」
カズラくんは、うーん、と唸った。
「オレが殺されようとするのを、止めようと動いた人は、毎回少なかった。
すごく異常な状況だとオレは思う。
英雄公爵の伴侶というのは、どれだけ命が安いんだ?
命の心配をしなくなった今のオレには、これまでのオレの命の安さに違和感しかない。
日本にいたときのオレの命の価値は安くなかったから、女神様の世界は、皆、命の価値が安いのかと思っていた。
でも、よく考えると違う。
階級社会で、王家の血が入っている公爵の伴侶の命の価値が低いということなんて、あり得るかな?」
カズラくんは、オレから目をそらさない。
「階級社会で、上の階層に楯突くときは、命を捨てる覚悟がないとできないよね。」
とカズラくん。
だよなー。
「それなのに、ヒサツグを排除しようとした人は、ヒサツグを排除する行為をしたことで、自分がリスクを負うとは誰も考えていなかったね。」
とカズラくん。
「大公妃であるオレを排除しようと動いた人は、リスクを考慮できないくらい考えが足りなかったわけでも、権力者に踊らされていたわけでもないんだよな。」
「ケレメイン大公国の国民でありながら、ケレメイン大公国の大公妃排除に動くことの危険性を誰も理解していなかったよね。
確かに、変だと思うよ。」
とカズラくん。
「オレが、オレの命の価値に対する不自然さに気づいたのは、全てが終わってから。
今から少し前なんだ。
女神様の世界に来てから。
オレの命に価値があるとは思えない状況が続いていた。
英雄公爵の伴侶という立場にいてほしくないから、政治的な理由で、オレを引きずり下ろそうとした、という理由は、納得できる。
政治的な理由ではなく、個人的な恨みが理由であったとしても。
英雄公爵の伴侶をいなくすることに、何のためらいもなく、一丸となって突き進める人が多数いる状況を振り返ってみてさ。
階級社会なのに、あまりにも不自然な動きだと思ったんだよな。」
「不自然だよね。」
とカズラくん。
「不自然な状況になった原因についての、オレの考察から聞いて欲しい。
女神様の世界の住人は、オレ個人ではなく、オレが異世界人だから、いなくなれと考えたんじゃないのかな?
女神様自身が、召喚した異世界人を使い捨てにする考え方だからさ。
女神様の世界の住人のDNAにも、異世界人の生存を許容しない考え方が刻み込まれているのかもしれない、とオレは思った。」
本能的に、という理由はおおいにあり得るね、とカズラくん。
「女神様の世界の住人にとって。
異世界人というものは、神子として女神様に召喚されて役割を果たしたのち、時をおかずに命を散らすものだからね。
女神様の世界で、短命に終わらなかった異世界人は、イレギュラー召喚のヒサツグと元神子のぼくだけ。」
とカズラくん。
「魔王のいない時代に異世界人がいたことはないよな?」
クロードに確認すると。
「いなかった。」
とクロード。
「異世界人は、そもそも、この世界にとって異質な存在。
異世界人が、周りに溶け込もうとするとうまくいかないのは、さ。
女神様の世界の住人の本能が、異世界人に溶け込まれるのを拒絶しているから。
カズラくんはどう思う?」
カズラくんは、うん、と頷いた。
「女神様の世界は、用済みになると、神子はいなくなるという歴史を繰り返している。
用済みになった神子は、ぼく以外、死んでいるんだよね。」
とカズラくん。
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