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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
602.オレは、ケレメイン家の問題に気づきながら、目を背けてきたんです。カズラくんは、クロードが恋する相手の条件に気づきました。
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しんみりは、一瞬だった。
「女神様の世界に戻ったら、ヒサツグへ、ヒサツグの家族からの手紙を渡そうと思っていたから。
出現場所は、ヒサツグのいるところに絞ったんだよね。」
とカズラくん。
何でもないように話しているけれど、出現場所を指定して現れるのって、まさしく神出鬼没だよなー。
「女神様とヒサツグで、クロードの取り合いをしているのを見たら、女神様にはハリセンチョップしたくなるよね。」
とカズラくん。
「ありがとう、カズラくん。」
「ぼくが負かされたヒサツグが、女神様に負けるなんて、ダメだからね。」
とカズラくん。
カズラくん。
うん。そうだな。
オレは、恋のライバルとして、カズラくんに勝ったんだから、勝ち続けないとだよな。
「あのとき、カズラくんが来てくれて、オレは凄く助かった。
オレは、クロードを女神様に渡す気なんてなかったけれど、オレ一人では、クロードを守りきれたかどうかという場面だったから。
クロードの周りの人は、クロードの側にオレがいることを喜んでいないな、とは感じていたんだ。」
今回の騒動が起きる前から、オレは気づいていた。
オレがクロードの伴侶として歓迎されているわけじゃないことを、オレは感じていた。
オレ自身、鈍感じゃない。
オレに分かりやすく歓迎していないことを伝えてきてもいた。
だから。
ケレメイン家に災いの芽があることを、当時からオレは知っていたはずだった。
当時、オレは、見ないフリをしていた。
オレの利用価値がなくなれば、クロードの側にはいられない、ということは、オレ自身も考えていたことだから。
今から思えば、抗議して訂正して回るのが正しい対応だったと思う。
早めに問題の芽を摘んでいたら、柴犬人のような人達は、行動に移す前に思いとどまって、今もクロードの支えになったかもしれない。
そんな風に考えてしまうこともある。
自分が女神様の世界でクロードと添い遂げる未来を信じられなかったオレは、問題の芽に目を瞑ることを選び、何もしなかった。
オレが手伝いを求めても、誰にも手伝ってもらえないとオレは思っていた。
実際、クロードの一声がなければ、うん。
女神様をクロードに取られないために、誰かに協力を仰ぐ、ということは、当時のオレには考えられなかった。
オレ一人で、クロードを助ける以外、オレは考えていなかった。
「クロードと家と領地を守れたから、ヒサツグはもういらないという人は、ずっといたよね。
神子でもない、どこぞの馬の骨のヒサツグなんかに、いつまでもクロードの隣で大きな顔をさせていたくないという人。」
当時のオレには、オレはずっとクロードといるわけじゃない、今だけ、今だけだから、という思いがあったから、さ。
周りが、どう思っていても今だけのことだから、とオレ自身を誤魔化して、何もしなかった。
あのときは、クロードと会えないのが一番堪えたな。
自分から動かないと、と思って、クロードに会いにいって良かった。
「あのときのオレは、がむしゃらに女神様とクロードを取り合っていたけれど、勝算は、辛かったな。
カズラくんが来てくれたから、オレは、クロードを守れた。」
カズラくんは、それなんだよ、と呟く。
「ヒサツグは、クロードを守ろうとするよね?」
とカズラくん。
「おう。クロードは、守ってやらないとな。」
当然だ、というニュアンスでオレが話していると。
「ヒサツグは、最初からクロードを守ろうとしていたよね?何か理由がある?」
とカズラくん。
「守ってやらないと、という気になったからかな。」
「そこなんだよね。
ぼくも、他の人も、ヒサツグとクロードの関係を見誤ってきたから、失敗した。」
とカズラくん。
「何を見誤ったのかな?」
「クロードと恋に落ちる相手の条件だよ。」
とカズラくん。
「クロードの特別な人が、最初からヒサツグ一人だけだった理由は、簡単だったね。
クロードに守られたい人にクロードはなびかないんだよ。
ぼくも他の人も、それに気づくのが遅かったんだよね。」
とカズラくん。
「女神様の世界に戻ったら、ヒサツグへ、ヒサツグの家族からの手紙を渡そうと思っていたから。
出現場所は、ヒサツグのいるところに絞ったんだよね。」
とカズラくん。
何でもないように話しているけれど、出現場所を指定して現れるのって、まさしく神出鬼没だよなー。
「女神様とヒサツグで、クロードの取り合いをしているのを見たら、女神様にはハリセンチョップしたくなるよね。」
とカズラくん。
「ありがとう、カズラくん。」
「ぼくが負かされたヒサツグが、女神様に負けるなんて、ダメだからね。」
とカズラくん。
カズラくん。
うん。そうだな。
オレは、恋のライバルとして、カズラくんに勝ったんだから、勝ち続けないとだよな。
「あのとき、カズラくんが来てくれて、オレは凄く助かった。
オレは、クロードを女神様に渡す気なんてなかったけれど、オレ一人では、クロードを守りきれたかどうかという場面だったから。
クロードの周りの人は、クロードの側にオレがいることを喜んでいないな、とは感じていたんだ。」
今回の騒動が起きる前から、オレは気づいていた。
オレがクロードの伴侶として歓迎されているわけじゃないことを、オレは感じていた。
オレ自身、鈍感じゃない。
オレに分かりやすく歓迎していないことを伝えてきてもいた。
だから。
ケレメイン家に災いの芽があることを、当時からオレは知っていたはずだった。
当時、オレは、見ないフリをしていた。
オレの利用価値がなくなれば、クロードの側にはいられない、ということは、オレ自身も考えていたことだから。
今から思えば、抗議して訂正して回るのが正しい対応だったと思う。
早めに問題の芽を摘んでいたら、柴犬人のような人達は、行動に移す前に思いとどまって、今もクロードの支えになったかもしれない。
そんな風に考えてしまうこともある。
自分が女神様の世界でクロードと添い遂げる未来を信じられなかったオレは、問題の芽に目を瞑ることを選び、何もしなかった。
オレが手伝いを求めても、誰にも手伝ってもらえないとオレは思っていた。
実際、クロードの一声がなければ、うん。
女神様をクロードに取られないために、誰かに協力を仰ぐ、ということは、当時のオレには考えられなかった。
オレ一人で、クロードを助ける以外、オレは考えていなかった。
「クロードと家と領地を守れたから、ヒサツグはもういらないという人は、ずっといたよね。
神子でもない、どこぞの馬の骨のヒサツグなんかに、いつまでもクロードの隣で大きな顔をさせていたくないという人。」
当時のオレには、オレはずっとクロードといるわけじゃない、今だけ、今だけだから、という思いがあったから、さ。
周りが、どう思っていても今だけのことだから、とオレ自身を誤魔化して、何もしなかった。
あのときは、クロードと会えないのが一番堪えたな。
自分から動かないと、と思って、クロードに会いにいって良かった。
「あのときのオレは、がむしゃらに女神様とクロードを取り合っていたけれど、勝算は、辛かったな。
カズラくんが来てくれたから、オレは、クロードを守れた。」
カズラくんは、それなんだよ、と呟く。
「ヒサツグは、クロードを守ろうとするよね?」
とカズラくん。
「おう。クロードは、守ってやらないとな。」
当然だ、というニュアンスでオレが話していると。
「ヒサツグは、最初からクロードを守ろうとしていたよね?何か理由がある?」
とカズラくん。
「守ってやらないと、という気になったからかな。」
「そこなんだよね。
ぼくも、他の人も、ヒサツグとクロードの関係を見誤ってきたから、失敗した。」
とカズラくん。
「何を見誤ったのかな?」
「クロードと恋に落ちる相手の条件だよ。」
とカズラくん。
「クロードの特別な人が、最初からヒサツグ一人だけだった理由は、簡単だったね。
クロードに守られたい人にクロードはなびかないんだよ。
ぼくも他の人も、それに気づくのが遅かったんだよね。」
とカズラくん。
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