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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
601.カズラくんが、ハリセンを手に日本から自力で異世界転移してきたとき。カズラくんは、オレの家族から預かった手紙をオレに渡すはずでした。
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「ぼくは最初に、ヒサツグの家族に会いにいったと話したよね?
そのときに、ぼくは、ヒサツグの家族に頼んで、ヒサツグの家族にヒサツグ宛の手紙を書いてもらったんだよ。
ヒサツグに渡すために。
ぼくは、日本からハリセンを持ってきたけれど、ハリセン以外も持ってきていた。
異世界転移する前に、ヒサツグ宛の手紙をポケットに入れたんだよ。」
とカズラくん。
オレは、目と口を開いていたと思う。
カズラくんが、今から話そうとしてくれている内容が何か、オレには分かる気がした。
オレは、カズラくんみたいに自力で異世界転移していない。
オレとカズラくんの縁ができたのは、女神様の世界。
日本にいるときのオレとカズラくんは、まだ知り合っていなかった。
カズラくんが、日本から転移してきたときに、オレのところに現れたのは、家族からのオレへの手紙を持ってきていたからだったんだな。
オレに真っ先に渡そうとしてくれていたからなんだな。
女神様にハリセンチョップをするためではなく。
その手紙の話を、日本に帰ったときの経験を含めて、今になって、オレに打ち明けてくれた、ということは。
ああ、そっか。
「日本へ帰って、オレの家族の元に行ったカズラくんが持ち運んでくれた、オレの家族からオレ宛ての手紙は。
世界を超えられなかったんだな?」
手元に届かなかった手紙を思えば、切ない気持ちになる。
日本に帰らないと決めたとき、もう二度と家族に会うことはない、ということは、頭にあった。
日本にいる家族との手紙のやりとりが可能かどうかなんて考えたこともなかった。
カズラくんの厚意という、日本との連絡手段があったかもしれないけれど、オレにはその連絡手段が使えない。
この事実を改めて知らされると。
一度日本に帰って、カズラくんのように、また女神様の世界に戻ることを選択しておけば良かったかな、という考えも頭をよぎる。
今からでも、この先でも、カズラくんのように、日本で修行して自力で異世界転移できるだけの力を身につけることは、不可能じゃないとは思う。
きっと、いくつになっても、挑戦が遅すぎることはない。
女神様に呼ばれたことで、女神様の世界との縁が繋がっているから、どれだけ時間がかかっても、いつかは自力で女神様の世界へ転移できるようになる。
でもさ。
オレは、やっぱり、日本に一度帰って修行して女神様の世界へ、を選ばない。
今のオレには日本にいる家族からの手紙が届かない。
オレに家族からの手紙を届ける解決策があると知っても。
その解決策のために、クロードと離れ離れになる時間ができてしまうなら、オレは。
手紙を選ばない。
クロードといることに代わるものは、今のオレにはない。
家族の手紙を読めないのは寂しい。
でも、もう。
今のオレは、寂しさに取り乱さない。
オレの中で、クロードと過ごす時間を減らす選択はないからさ。
カズラくんが、手紙が渡せなかったと打ち明けてくれたのが、今で良かったと思う。
カズラくんは、頷いた。
「もっと早くに伝えるかどうか。
迷ったよ。
ぼくは、滅多に迷わないのに。」
とカズラくん。
もっと早くに聞いていたら、オレは。
やっぱり日本に帰りたい、とクロードに伝えていたかもしれない。
不安になったクロードが、オレを監禁していたかもしれない。
そんなことになれば、オレとクロードの仲はこじれていたと思う。
「カズラくんには、感謝しかないぞ。」
カズラくんは、プイッと横を向く。
「カズラくんは、だいたい即断即決だよな。」
「ぼくの人生、迷ったことはほぼないよ。
でも、ヒサツグの人生がかかっていると思ったから。」
とカズラくん。
カズラくん!
オレは立ち上がって、テーブルの横を回り込んだ。
カズラくんはツンツンとした話し方をして、気を回していることを表には出さない。
「オレのために、カズラくんは迷ってくれたんだな。ありがとう。」
オレは、カズラくんの頭をポンポンしてみた。
お、カズラくんが、オレにされるがままになっている。
オレは、カズラくんに、頭ポンポンを続けてみた。
楽しいなー。
「ぼくは、日本から戻ってきて、クロードとヒサツグから引き離した女神様から色々なことを聞き出したんだよ。」
とカズラくん。
オレに頭ポンポンされながら話すカズラくん。
「よく、話してくれたなー?」
「女神様の世界へ自力で異世界転移するには、創世神の女神様よりも強くないとダメだから。」
とカズラくん。
「女神様の力で女神様の世界に来て、自力で異世界転移をしなかったオレは、創世神の女神様より弱い。
女神様より弱いオレのものは、世界を超えるだけの縁の強さを作れないんだな。」
「うん。ヒサツグの縁のあるものを日本から持ってこようとは、しないでおくよ。
世界を超えられなくて、消滅するよりは、日本にあった方がいい。
ヒサツグが思い出されるチャンスは最低でも一回はあるから。」
とカズラくん。
オレの身内が、オレの死亡届を日本で出すタイミングだよな。
「ありがとう、カズラくん。
オレのために家族の手紙を用意してくれた、カズラくんの思いと行動力が、オレは嬉しい。」
そのときに、ぼくは、ヒサツグの家族に頼んで、ヒサツグの家族にヒサツグ宛の手紙を書いてもらったんだよ。
ヒサツグに渡すために。
ぼくは、日本からハリセンを持ってきたけれど、ハリセン以外も持ってきていた。
異世界転移する前に、ヒサツグ宛の手紙をポケットに入れたんだよ。」
とカズラくん。
オレは、目と口を開いていたと思う。
カズラくんが、今から話そうとしてくれている内容が何か、オレには分かる気がした。
オレは、カズラくんみたいに自力で異世界転移していない。
オレとカズラくんの縁ができたのは、女神様の世界。
日本にいるときのオレとカズラくんは、まだ知り合っていなかった。
カズラくんが、日本から転移してきたときに、オレのところに現れたのは、家族からのオレへの手紙を持ってきていたからだったんだな。
オレに真っ先に渡そうとしてくれていたからなんだな。
女神様にハリセンチョップをするためではなく。
その手紙の話を、日本に帰ったときの経験を含めて、今になって、オレに打ち明けてくれた、ということは。
ああ、そっか。
「日本へ帰って、オレの家族の元に行ったカズラくんが持ち運んでくれた、オレの家族からオレ宛ての手紙は。
世界を超えられなかったんだな?」
手元に届かなかった手紙を思えば、切ない気持ちになる。
日本に帰らないと決めたとき、もう二度と家族に会うことはない、ということは、頭にあった。
日本にいる家族との手紙のやりとりが可能かどうかなんて考えたこともなかった。
カズラくんの厚意という、日本との連絡手段があったかもしれないけれど、オレにはその連絡手段が使えない。
この事実を改めて知らされると。
一度日本に帰って、カズラくんのように、また女神様の世界に戻ることを選択しておけば良かったかな、という考えも頭をよぎる。
今からでも、この先でも、カズラくんのように、日本で修行して自力で異世界転移できるだけの力を身につけることは、不可能じゃないとは思う。
きっと、いくつになっても、挑戦が遅すぎることはない。
女神様に呼ばれたことで、女神様の世界との縁が繋がっているから、どれだけ時間がかかっても、いつかは自力で女神様の世界へ転移できるようになる。
でもさ。
オレは、やっぱり、日本に一度帰って修行して女神様の世界へ、を選ばない。
今のオレには日本にいる家族からの手紙が届かない。
オレに家族からの手紙を届ける解決策があると知っても。
その解決策のために、クロードと離れ離れになる時間ができてしまうなら、オレは。
手紙を選ばない。
クロードといることに代わるものは、今のオレにはない。
家族の手紙を読めないのは寂しい。
でも、もう。
今のオレは、寂しさに取り乱さない。
オレの中で、クロードと過ごす時間を減らす選択はないからさ。
カズラくんが、手紙が渡せなかったと打ち明けてくれたのが、今で良かったと思う。
カズラくんは、頷いた。
「もっと早くに伝えるかどうか。
迷ったよ。
ぼくは、滅多に迷わないのに。」
とカズラくん。
もっと早くに聞いていたら、オレは。
やっぱり日本に帰りたい、とクロードに伝えていたかもしれない。
不安になったクロードが、オレを監禁していたかもしれない。
そんなことになれば、オレとクロードの仲はこじれていたと思う。
「カズラくんには、感謝しかないぞ。」
カズラくんは、プイッと横を向く。
「カズラくんは、だいたい即断即決だよな。」
「ぼくの人生、迷ったことはほぼないよ。
でも、ヒサツグの人生がかかっていると思ったから。」
とカズラくん。
カズラくん!
オレは立ち上がって、テーブルの横を回り込んだ。
カズラくんはツンツンとした話し方をして、気を回していることを表には出さない。
「オレのために、カズラくんは迷ってくれたんだな。ありがとう。」
オレは、カズラくんの頭をポンポンしてみた。
お、カズラくんが、オレにされるがままになっている。
オレは、カズラくんに、頭ポンポンを続けてみた。
楽しいなー。
「ぼくは、日本から戻ってきて、クロードとヒサツグから引き離した女神様から色々なことを聞き出したんだよ。」
とカズラくん。
オレに頭ポンポンされながら話すカズラくん。
「よく、話してくれたなー?」
「女神様の世界へ自力で異世界転移するには、創世神の女神様よりも強くないとダメだから。」
とカズラくん。
「女神様の力で女神様の世界に来て、自力で異世界転移をしなかったオレは、創世神の女神様より弱い。
女神様より弱いオレのものは、世界を超えるだけの縁の強さを作れないんだな。」
「うん。ヒサツグの縁のあるものを日本から持ってこようとは、しないでおくよ。
世界を超えられなくて、消滅するよりは、日本にあった方がいい。
ヒサツグが思い出されるチャンスは最低でも一回はあるから。」
とカズラくん。
オレの身内が、オレの死亡届を日本で出すタイミングだよな。
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オレのために家族の手紙を用意してくれた、カズラくんの思いと行動力が、オレは嬉しい。」
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