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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
600.日本に残してきた家族について考えると相反する感情に揺さぶられます。自力で異世界転移したカズラくんには、特殊な能力が備わったようです。
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「ぼくとヒサツグは、女神様の世界に来たときから、女神様の世界で亡くなる予定だったから、日本での存在を薄くしていたんだよ。」
とカズラくん。
カズラくんの言い回しで、オレは気づいた。
「女神様が、そういう風にしたんだな。」
「そうだよ。ぼくやヒサツグが、日本にいないことを不思議がらせないようにね。」
とカズラくん。
「カズラくんより前の神子様は、神子様として女神様の世界に来て、魔王として討伐されて亡くなっているから、誰も日本に戻っていない。
神子様が女神様の世界に転移したことは、神子様本人と女神様しか知らない。
いつの間にいなくなっていた、とかつて過ごした場所で意識されることもないんだな。」
ずっと、日本に残してきた家族が気になっていた。
女神様の世界で暮らすことを決めても。
家族が日本で元気なら、会えなくてもいい、とはとても割り切れなかった。
離れて暮らす場所が、女神様の世界と日本とじゃなく、日本国内なら、連絡ないのは元気でやっている証拠だと言えていたかもしれない。
元気がないときに、連絡なんてとれない、と思ってしまうからさ。
元気がないときのオレは、布団から出ないを選ぶぞ。
でも。
女神様の世界で骨を埋める覚悟ができたオレにとって、オレが日本にいないことを心配した家族が夜も眠れない事態に陥っていると聞くよりは、悪いことじゃない。
頭では分かっている。
でも、感情がなー。
「女神様の世界にいる間は、その存在を日本で意識されることはなくなるけれど、例外があるんだよ。」
とカズラくん。
テレパシー的な?
「オレは、女神様の世界に実際に住んでいるから、疑問に思うこともないけれどさ。
日本にいて、家族が女神様の世界にいるという電波を受信したら、疲れすぎて病んだかな、と思うぞ?」
テレパシーなんて、信じられないと思うんだよな。
身内に相談されたら、きっと、評判のいいメンタルクリニックを調べるよな。
残念な生き物と相対しているかのようにオレを見るカズラくん。
「例外は、神子様として女神様に召喚された人が女神様の世界で死んだとき。
女神様の世界に来る前に縁があった人は、神子の死を知るんだって。
神子の死を知った人は、神子だった人が行方不明になって死亡したという手続きを日本で開始し、日本でも死亡処理されることになっていたよ。」
とカズラくん。
女神様の世界での死亡連絡は、テレパシーではないらしい。
日本に帰らないオレは、死んだときに思い出される人なんだな。
忘れ去られた存在と知らされたときに感じるのは、切なさと寂しさと。
日本に帰らないことを誰にも相談せずに、家族へ一言の断りもなく決めた、オレの親不孝さが軽減されるような身勝手な安心感。
家族を心配させたいとは考えていなかった。
けれど、クロードから離れることはもっと考えられくなった。
オレは、死ぬまでクロードといたい。
だから、オレは、生きているうちに、日本には帰らないと思う。
オレの方がクロードよりも年上。
順当にいけば、きっとクロードよりも先に、女神様の世界でオレは儚くなる。
オレの隣のクロードは、何も言わずに、オレの腰を抱いている。
クロードは、オレがクロードと女神様の世界に残ると決断したことを信じて、オレにどこにも行くなとは言わない。
大丈夫だからな、クロード。
オレが、クロードといたいんだ。
信じてくれて、ありがとう、クロード。
話は変わるんだけど、とカズラくん。
「ぼくが、色々なものを日本から持ち込んでいるのは見たよね?」
とカズラくん。
「うん、ありがたく使わせてもらったぞ。」
四季の花の彩る野点の部屋は、カズラくんがいなければ体験できなかった。
「ぼくは、自力で異世界転移を可能にしたときに、ぼくにまつわるものなら、日本から召喚できるようになったんだよ。」
とカズラくん。
さすが、カズラくん。
女神様より上だと豪語するだけあるなー。
「おめでとう、カズラくん。
カズラくんにまつわるもの、というのは、カズラくんにとって思い入れがあるもの、縁があるもの、だよな?」
「うん。思い出があるものとかね。
あると便利だから、という理由では、召喚できない。
こんなものが欲しいという理由でも、持ってこれない。」
とカズラくん。
「なるほど。」
四季折々の花に縁があるカズラくんは、綺麗なものを見て暮らしてきたんだな。
恋愛上級者なカズラくんは、関心の対象が広いのかもしれない。
「ぼくは、ぼくに関するものしか、日本から召喚できない、日本から持ってこれない。
この大原則を念頭において、これからする話を聞いてほしい。」
とカズラくん。
「おう。」
何か、カズラくんの召喚に関する重大発表がくるのかな?
オレとクロードは、話しているカズラくんほど身構えずに話を聞いていた。
とカズラくん。
カズラくんの言い回しで、オレは気づいた。
「女神様が、そういう風にしたんだな。」
「そうだよ。ぼくやヒサツグが、日本にいないことを不思議がらせないようにね。」
とカズラくん。
「カズラくんより前の神子様は、神子様として女神様の世界に来て、魔王として討伐されて亡くなっているから、誰も日本に戻っていない。
神子様が女神様の世界に転移したことは、神子様本人と女神様しか知らない。
いつの間にいなくなっていた、とかつて過ごした場所で意識されることもないんだな。」
ずっと、日本に残してきた家族が気になっていた。
女神様の世界で暮らすことを決めても。
家族が日本で元気なら、会えなくてもいい、とはとても割り切れなかった。
離れて暮らす場所が、女神様の世界と日本とじゃなく、日本国内なら、連絡ないのは元気でやっている証拠だと言えていたかもしれない。
元気がないときに、連絡なんてとれない、と思ってしまうからさ。
元気がないときのオレは、布団から出ないを選ぶぞ。
でも。
女神様の世界で骨を埋める覚悟ができたオレにとって、オレが日本にいないことを心配した家族が夜も眠れない事態に陥っていると聞くよりは、悪いことじゃない。
頭では分かっている。
でも、感情がなー。
「女神様の世界にいる間は、その存在を日本で意識されることはなくなるけれど、例外があるんだよ。」
とカズラくん。
テレパシー的な?
「オレは、女神様の世界に実際に住んでいるから、疑問に思うこともないけれどさ。
日本にいて、家族が女神様の世界にいるという電波を受信したら、疲れすぎて病んだかな、と思うぞ?」
テレパシーなんて、信じられないと思うんだよな。
身内に相談されたら、きっと、評判のいいメンタルクリニックを調べるよな。
残念な生き物と相対しているかのようにオレを見るカズラくん。
「例外は、神子様として女神様に召喚された人が女神様の世界で死んだとき。
女神様の世界に来る前に縁があった人は、神子の死を知るんだって。
神子の死を知った人は、神子だった人が行方不明になって死亡したという手続きを日本で開始し、日本でも死亡処理されることになっていたよ。」
とカズラくん。
女神様の世界での死亡連絡は、テレパシーではないらしい。
日本に帰らないオレは、死んだときに思い出される人なんだな。
忘れ去られた存在と知らされたときに感じるのは、切なさと寂しさと。
日本に帰らないことを誰にも相談せずに、家族へ一言の断りもなく決めた、オレの親不孝さが軽減されるような身勝手な安心感。
家族を心配させたいとは考えていなかった。
けれど、クロードから離れることはもっと考えられくなった。
オレは、死ぬまでクロードといたい。
だから、オレは、生きているうちに、日本には帰らないと思う。
オレの方がクロードよりも年上。
順当にいけば、きっとクロードよりも先に、女神様の世界でオレは儚くなる。
オレの隣のクロードは、何も言わずに、オレの腰を抱いている。
クロードは、オレがクロードと女神様の世界に残ると決断したことを信じて、オレにどこにも行くなとは言わない。
大丈夫だからな、クロード。
オレが、クロードといたいんだ。
信じてくれて、ありがとう、クロード。
話は変わるんだけど、とカズラくん。
「ぼくが、色々なものを日本から持ち込んでいるのは見たよね?」
とカズラくん。
「うん、ありがたく使わせてもらったぞ。」
四季の花の彩る野点の部屋は、カズラくんがいなければ体験できなかった。
「ぼくは、自力で異世界転移を可能にしたときに、ぼくにまつわるものなら、日本から召喚できるようになったんだよ。」
とカズラくん。
さすが、カズラくん。
女神様より上だと豪語するだけあるなー。
「おめでとう、カズラくん。
カズラくんにまつわるもの、というのは、カズラくんにとって思い入れがあるもの、縁があるもの、だよな?」
「うん。思い出があるものとかね。
あると便利だから、という理由では、召喚できない。
こんなものが欲しいという理由でも、持ってこれない。」
とカズラくん。
「なるほど。」
四季折々の花に縁があるカズラくんは、綺麗なものを見て暮らしてきたんだな。
恋愛上級者なカズラくんは、関心の対象が広いのかもしれない。
「ぼくは、ぼくに関するものしか、日本から召喚できない、日本から持ってこれない。
この大原則を念頭において、これからする話を聞いてほしい。」
とカズラくん。
「おう。」
何か、カズラくんの召喚に関する重大発表がくるのかな?
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