《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
600 / 667
第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

600.日本に残してきた家族について考えると相反する感情に揺さぶられます。自力で異世界転移したカズラくんには、特殊な能力が備わったようです。

しおりを挟む
「ぼくとヒサツグは、女神様の世界に来たときから、女神様の世界で亡くなる予定だったから、日本での存在を薄くしていたんだよ。」
とカズラくん。

カズラくんの言い回しで、オレは気づいた。

「女神様が、そういう風にしたんだな。」

「そうだよ。ぼくやヒサツグが、日本にいないことを不思議がらせないようにね。」
とカズラくん。

「カズラくんより前の神子様は、神子様として女神様の世界に来て、魔王として討伐されて亡くなっているから、誰も日本に戻っていない。

神子様が女神様の世界に転移したことは、神子様本人と女神様しか知らない。

いつの間にいなくなっていた、とかつて過ごした場所で意識されることもないんだな。」

ずっと、日本に残してきた家族が気になっていた。

女神様の世界で暮らすことを決めても。

家族が日本で元気なら、会えなくてもいい、とはとても割り切れなかった。

離れて暮らす場所が、女神様の世界と日本とじゃなく、日本国内なら、連絡ないのは元気でやっている証拠だと言えていたかもしれない。

元気がないときに、連絡なんてとれない、と思ってしまうからさ。

元気がないときのオレは、布団から出ないを選ぶぞ。

でも。

女神様の世界で骨を埋める覚悟ができたオレにとって、オレが日本にいないことを心配した家族が夜も眠れない事態に陥っていると聞くよりは、悪いことじゃない。

頭では分かっている。

でも、感情がなー。

「女神様の世界にいる間は、その存在を日本で意識されることはなくなるけれど、例外があるんだよ。」
とカズラくん。

テレパシー的な?

「オレは、女神様の世界に実際に住んでいるから、疑問に思うこともないけれどさ。

日本にいて、家族が女神様の世界にいるという電波を受信したら、疲れすぎて病んだかな、と思うぞ?」

テレパシーなんて、信じられないと思うんだよな。

身内に相談されたら、きっと、評判のいいメンタルクリニックを調べるよな。

残念な生き物と相対しているかのようにオレを見るカズラくん。

「例外は、神子様として女神様に召喚された人が女神様の世界で死んだとき。

女神様の世界に来る前に縁があった人は、神子の死を知るんだって。

神子の死を知った人は、神子だった人が行方不明になって死亡したという手続きを日本で開始し、日本でも死亡処理されることになっていたよ。」
とカズラくん。

女神様の世界での死亡連絡は、テレパシーではないらしい。

日本に帰らないオレは、死んだときに思い出される人なんだな。

忘れ去られた存在と知らされたときに感じるのは、切なさと寂しさと。

日本に帰らないことを誰にも相談せずに、家族へ一言の断りもなく決めた、オレの親不孝さが軽減されるような身勝手な安心感。

家族を心配させたいとは考えていなかった。

けれど、クロードから離れることはもっと考えられくなった。

オレは、死ぬまでクロードといたい。

だから、オレは、生きているうちに、日本には帰らないと思う。

オレの方がクロードよりも年上。

順当にいけば、きっとクロードよりも先に、女神様の世界でオレは儚くなる。

オレの隣のクロードは、何も言わずに、オレの腰を抱いている。

クロードは、オレがクロードと女神様の世界に残ると決断したことを信じて、オレにどこにも行くなとは言わない。

大丈夫だからな、クロード。

オレが、クロードといたいんだ。

信じてくれて、ありがとう、クロード。

話は変わるんだけど、とカズラくん。

「ぼくが、色々なものを日本から持ち込んでいるのは見たよね?」
とカズラくん。

「うん、ありがたく使わせてもらったぞ。」

四季の花の彩る野点の部屋は、カズラくんがいなければ体験できなかった。

「ぼくは、自力で異世界転移を可能にしたときに、ぼくにまつわるものなら、日本から召喚できるようになったんだよ。」
とカズラくん。

さすが、カズラくん。

女神様より上だと豪語するだけあるなー。

「おめでとう、カズラくん。

カズラくんにまつわるもの、というのは、カズラくんにとって思い入れがあるもの、縁があるもの、だよな?」

「うん。思い出があるものとかね。

あると便利だから、という理由では、召喚できない。

こんなものが欲しいという理由でも、持ってこれない。」
とカズラくん。

「なるほど。」

四季折々の花に縁があるカズラくんは、綺麗なものを見て暮らしてきたんだな。

恋愛上級者なカズラくんは、関心の対象が広いのかもしれない。

「ぼくは、ぼくに関するものしか、日本から召喚できない、日本から持ってこれない。

この大原則を念頭において、これからする話を聞いてほしい。」
とカズラくん。

「おう。」

何か、カズラくんの召喚に関する重大発表がくるのかな?

オレとクロードは、話しているカズラくんほど身構えずに話を聞いていた。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

どうしてこうなった?(ショートから短編枠にしたもの)

エウラ
BL
3歳で魔物に襲われて両親を亡くし、孤児院育ちの黒髪黒目で童顔のノヴァは前世の記憶持ちの異世界転生者だ。現在27歳のCランク冒険者。 魔物に襲われたときに前世の記憶が甦ったが、本人は特にチートもなく平々凡々に過ごしていた。そんなある日、年下22歳の若きSランク冒険者のアビスと一線を越える出来事があり、そこで自分でも知らなかった今世の過去を知ることになり、事態は色々動き出す。 若干ストーカー気味なわんこ系年下冒険者に溺愛される自己評価の低い無自覚美人の話。 *以前ショート専用の枠で書いてましたが話数増えて収拾がつかなくなったので短編枠を作って移動しました。 お手数おかけしますがよろしくお願いいたします。 なお、プロローグ以降、途中まではショートの投稿分をまるっと載せるのでそちらと重複します。ご注意下さい。出来次第投稿する予定です。 こちらはR18には*印付けます。(でも忘れたらすみません)

堕とされた悪役令息

SEKISUI
BL
 転生したら恋い焦がれたあの人がいるゲームの世界だった  王子ルートのシナリオを成立させてあの人を確実手に入れる  それまであの人との関係を楽しむ主人公  

嫌われものの僕について…

相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。 だか、ある日事態は急変する 主人公が暗いです

どうも、卵から生まれた魔人です。

べす
BL
卵から生まれる瞬間、人間に召喚されてしまった魔人のレヴィウス。 太った小鳥にしか見えないせいで用無しと始末されそうになった所を、優しげな神官に救われるのだが…

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

処理中です...