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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
599.カズラくんの経験から聞きます。カズラくんが、日本に戻った後、カズラくんの周囲はカズラくんのことを?
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「ヒサツグの家族の話をする前に、ぼくが日本に戻ったとき、どうだったかを先に話すよ。
その方が、理解が早いと思う。」
とカズラくん。
「よろしく。」
「日本に戻って最初に気づいたのは、ぼくが日本にいなかった間も、時計の針は止まっていなかった、ということだよ。」
とカズラくん。
オレは、背筋が冷えた。
「カズラくんは、女神様の世界にいる日数分、日本でのカズラくんは行方不明の扱いだった、ということかな?」
「行方不明ではあったんだけど。
誰も、ぼくが行方不明になっていることを気にしなかったみたいなんだよね。
ぼくが日本に帰って、ぼくがいない間のことを尋ねた相手がね。
ぼくが不在だった旨を、ぼくから告げてから、尋ねたんだ。
その人は、ぼくに尋ねられるまで、ぼくを最近見ていなかったことを認識していなかった。
ぼくが不在だった旨を伝えないで尋ねた人は、ぼくがいなかった時間があったとはっきり認識していなかった。
ぼくが不在だったと伝えなかった人は、ぼくのいなかった時間に起きたことを話すときに、ぼくがその場にいたかどうかを思い出せなかったよ。」
とカズラくん。
「日本から女神様の世界に来た場合で、確認したいことが二つあるんだけど、いいかな?」
どうぞ、とカズラくん。
「女神様の世界は、日本と同じ速度で、時間が過ぎていくんだよな?」
「一日や二日の差はあるかもしれない。
でも、女神様の世界で一日経過すると、日本でも一日経過、と考えておけば、大きなズレはなかったよ。」
とカズラくん。
「日本から女神様の世界に来ている間は、存在が曖昧になるのかな?
最初からいなかったみたいな扱いになるのかな?」
「存在は曖昧になるけれど、最初からいなかったことにはならなかったよ。
女神様の世界にいる間は、日本に存在していたことを意識されなくなる、というのが正しいかな。」
とカズラくん。
「日本から女神様の世界に行って、日本にいなくなったことを誰も気にしない。
なぜなら、日本にいないことが気にならないから。
日本にいたことさえ曖昧になるから、ということかな?」
「女神様の世界にいる間に、ぼくという存在が日本から抹消されていた、ということにはならなかったね。」
とカズラくん。
「日本にいないカズラくんが、どこでどうしているのか、と心配した誰かが、カズラくんを探す、ということは起きなかったのかな?」
「ぼくが日本からいなくなって、女神様の神子として過ごした日数分。
ぼくの存在を意識して過ごしている人はいなかったよ、一人もね。」
とカズラくん。
「それは、寂しかったよな。」
カズラくんは、淡々と話していた。
寂しくて、あまりにも辛い。
世界から忘れられた存在でいるなんてさ。
淡々と話すようになるまでの葛藤を、カズラくんは乗り越えたのかな。
「逃げ出したい気持ちからじゃなく、女神様の世界で暮らすことについて考える機会になったから、ぼくにとってはいいことだったよ。
お陰で、新天地で、身軽に生きていこうと思えたんだからね。」
とカズラくん。
日本にいた頃のカズラくんは、嬉しくないしがらみが多かったのかもしれないな。
「カズラくんがオレの家族に会いにいってくれたときは、オレの家族はどうだったかな?」
「ヒサツグのご家族についてはね。
ぼくが、ヒサツグの名前を出して、ヒサツグの話をふるとどうなったか、から話すよ。
ヒサツグの名前を出した瞬間だけ、ヒサツグの思い出が頭の中に蘇ってくるみたいだったよ。」
とカズラくん。
「オレについて話す誰かがいなければ、オレがいたことを思い出すことなく、オレの家族は生活していくんだな。」
「そうだね。その認識で間違っていないよ。」
とカズラくん。
オレは、じんわりと目頭が熱くなった。
喉がひりつく。
「ヒサツグは、家族仲が良かったんだよね?」
とカズラくん。
「うん、オレのうちは、全員、仲が良かったな。
だから。
家族に忘れられたり、家族から思い出されなかったり、と聞くと、応えるなー。
オレのことが心配で眠れないよりは良かったんだろうとは思うけどさ。」
その方が、理解が早いと思う。」
とカズラくん。
「よろしく。」
「日本に戻って最初に気づいたのは、ぼくが日本にいなかった間も、時計の針は止まっていなかった、ということだよ。」
とカズラくん。
オレは、背筋が冷えた。
「カズラくんは、女神様の世界にいる日数分、日本でのカズラくんは行方不明の扱いだった、ということかな?」
「行方不明ではあったんだけど。
誰も、ぼくが行方不明になっていることを気にしなかったみたいなんだよね。
ぼくが日本に帰って、ぼくがいない間のことを尋ねた相手がね。
ぼくが不在だった旨を、ぼくから告げてから、尋ねたんだ。
その人は、ぼくに尋ねられるまで、ぼくを最近見ていなかったことを認識していなかった。
ぼくが不在だった旨を伝えないで尋ねた人は、ぼくがいなかった時間があったとはっきり認識していなかった。
ぼくが不在だったと伝えなかった人は、ぼくのいなかった時間に起きたことを話すときに、ぼくがその場にいたかどうかを思い出せなかったよ。」
とカズラくん。
「日本から女神様の世界に来た場合で、確認したいことが二つあるんだけど、いいかな?」
どうぞ、とカズラくん。
「女神様の世界は、日本と同じ速度で、時間が過ぎていくんだよな?」
「一日や二日の差はあるかもしれない。
でも、女神様の世界で一日経過すると、日本でも一日経過、と考えておけば、大きなズレはなかったよ。」
とカズラくん。
「日本から女神様の世界に来ている間は、存在が曖昧になるのかな?
最初からいなかったみたいな扱いになるのかな?」
「存在は曖昧になるけれど、最初からいなかったことにはならなかったよ。
女神様の世界にいる間は、日本に存在していたことを意識されなくなる、というのが正しいかな。」
とカズラくん。
「日本から女神様の世界に行って、日本にいなくなったことを誰も気にしない。
なぜなら、日本にいないことが気にならないから。
日本にいたことさえ曖昧になるから、ということかな?」
「女神様の世界にいる間に、ぼくという存在が日本から抹消されていた、ということにはならなかったね。」
とカズラくん。
「日本にいないカズラくんが、どこでどうしているのか、と心配した誰かが、カズラくんを探す、ということは起きなかったのかな?」
「ぼくが日本からいなくなって、女神様の神子として過ごした日数分。
ぼくの存在を意識して過ごしている人はいなかったよ、一人もね。」
とカズラくん。
「それは、寂しかったよな。」
カズラくんは、淡々と話していた。
寂しくて、あまりにも辛い。
世界から忘れられた存在でいるなんてさ。
淡々と話すようになるまでの葛藤を、カズラくんは乗り越えたのかな。
「逃げ出したい気持ちからじゃなく、女神様の世界で暮らすことについて考える機会になったから、ぼくにとってはいいことだったよ。
お陰で、新天地で、身軽に生きていこうと思えたんだからね。」
とカズラくん。
日本にいた頃のカズラくんは、嬉しくないしがらみが多かったのかもしれないな。
「カズラくんがオレの家族に会いにいってくれたときは、オレの家族はどうだったかな?」
「ヒサツグのご家族についてはね。
ぼくが、ヒサツグの名前を出して、ヒサツグの話をふるとどうなったか、から話すよ。
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とカズラくん。
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「そうだね。その認識で間違っていないよ。」
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とカズラくん。
「うん、オレのうちは、全員、仲が良かったな。
だから。
家族に忘れられたり、家族から思い出されなかったり、と聞くと、応えるなー。
オレのことが心配で眠れないよりは良かったんだろうとは思うけどさ。」
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