《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
590 / 673
第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

590.国賓がお帰りになったので、ミーレ長官夫妻と息子さんケヤキくんの話をしましょう。

しおりを挟む
キスした後。

オレとクロードは、手を繋いで、並んで仮眠した。

愛こんにゃく家とこんにゃくの結婚式で、よく働いたオレとクロードは、次の仕事を考えて、体を休めることにした。

愛こんにゃく家とこんにゃくの結婚式からお帰りになる国賓のお見送りに、眠たい顔では行けないからな。

愛こんにゃく家とこんにゃくの結婚式の二次会は、カズラくんの満足のいくものになったらしく。

朝から、カズラくんはご機嫌だった。

そんなカズラくんの第一声は。

「女神様は?」

女神様は、帰ったと伝えてから、補足する。

「愛こんにゃく家とこんにゃくの結婚式も終わったからなー。

また来るんじゃないかな?」

女神様の姿が見えないことに、女神様と一緒に結婚式に参加した全員が納得したところで。

国賓のお見送り。

ドリアン王国の国王陛下夫妻のジャケットの裾は、めくれ上がっている。

カズラくんの力には、女神様と同じような効果があるのかもしれない。

国賓を見送った後。

ヤグルマさんが、マウンテン王国へ戻る前に。

オレは、ミーレ長官とミーレ長官の奥様を呼んだ。

ミーレ長官の息子さんケヤキくんについて話をしないとな。

ミーレ長官の息子さんケヤキくんは、ヤグルマさんの近くにいる。

「ミーレ長官とミーレ長官の奥様に確認したいことがある。

息子さんのケヤキくんの周りにいる人達の顔触れは、お父さんお母さんであるミーレ長官夫妻と繫がりのある人達だよな。

周りを警戒している息子さんケヤキくんは、自分から家族以外との距離を縮めていない。」

「私の繫がりは、結婚前からのお友達です。」
とミーレ長官の奥様。

「私は、仕事関係で知り合った人ですね。」
とミーレ長官。

うん。

利害関係がハッキリしたな。

「ミーレ長官夫妻は、ミーレ長官夫妻の周りにいる人が態度を変えた理由を理解しているよな。

ミーレ長官と奥様は、周りの人の態度の変化について、息子さんケヤキくんが理解して納得のいく説明を済ませているかな?」

済ませているなら、説明が足りない。

済ませていないなら?

「問題はありませんでした。」
とミーレ長官。

ミーレ長官は、そう答えることを予想していたから、驚かないけどさ。

「何か問題がございましたか?」
とミーレ長官の奥様。

ミーレ長官の奥様もなんだなー。

単刀直入に伝えようかな。

「急に手のひら返ししてきた人と、その人達との関係について、さ。

何も説明しないままの両親の立場としては、問題が起きなかったんだから、問題ないという認識になっていないかな。」

「問題はなかったけれど、何かが問題だとお考えでしょうか?」
とミーレ長官の奥様

「ミーレ長官夫妻が、問題ない、と感じていたことが最大の問題だとオレは思う。

まだ子どもの我が子に対して鈍感さを発揮するのは、良くないように見えたな。」

「ケヤキが何か?」
とミーレ長官。

「問題があるのは、ケヤキくんじゃない。

ミーレ長官と奥様だ。」

「不備がございましたか?」
とミーレ長官の奥様。

「息子さんケヤキくんが、必死に大人と変わらない対応をし続けたから、ミーレ長官夫妻は、やり過ごせたんだとオレは思ったな。」

「お褒めいただき光栄でございます。」
とミーレ長官の奥様。

分かっていないなー。

ミーレ長官の奥様は、貴族のご令嬢として生きていた時間を取り返したから、その当時の感覚で考えているのかもしれない。

「披露宴会場での、ミーレ長官夫妻はさ、ケヤキくんに一人の大人として、両親を困らせずに助けることを求めているように見えた。」

お父さんお母さんが、ケヤキくんに求めすぎだとオレは思った。

「ヒサツグ様は、ご覧になっていたのですか?」
とミーレ長官。

「ミーレ長官夫妻は、ケヤキくんの仲間以前に、ケヤキくんのお父さんとお母さんだ。

という考えが、ミーレ長官夫妻の両方の頭から抜け落ちているように見えたなー。」

オレの言わんとすることを受け止めても、ケヤキくんの立場になっていないミーレ長官夫妻は、貴族とはそういうものだから、という回答から先に進まなかった。

「ケヤキくんの頑張りは、お父さんお母さんと三人で頑張らないと生きていけないという切迫感から生まれている。」

「家を守る、家族を守るとは、そういうことです。」
とミーレ長官の奥様。

誤算だったなー。

貴族的な思考は、ミーレ長官の奥様の方が強かった。

「お父さんお母さんであるミーレ長官夫妻は、環境が激変して、見落としたかもしれないな。

ケヤキくんの環境の変化は、ミーレ長官夫妻の身に起きている環境の変化と同じじゃないぞ?」

オレは、ケヤキくんとヤグルマさんを呼んだ。

貴族的な発想を続けるとケヤキくんは苦しいままになる。

ケヤキくんの苦しみを、今、理解するのは難しいかな。

「今までに接点がなかった人の中に飛び込んで、思惑全開ではない人間関係をケヤキくんに体験させることにしたからな。

ヤグルマさん、ケヤキくんを任せた!

ケヤキくんは、マウンテン王国のケレメイン大使館で、ケレメイン公爵家の王都邸の人と暮らしてこい。」

「かしこまりました。」
とヤグルマさん。

「行ってまいります。」
とケヤキくん。

「ケヤキは、私達の子どもです。」
とミーレ長官の奥様。

うーん。

そうなんだけどさ。

「ミーレ長官とミーレ長官の奥様に伝えておくぞ。

ケヤキくんは、二人の子どもだけど、ケレメイン大公国の国民でもある。

ケレメイン大公国の国民のケヤキくんには、重荷に潰れないで、大人になってもらいたいとオレは考えている。

だから。

ケヤキくんは、ヤグルマさんとマウンテン王国にあるケレメイン大使館へ、今から移動させる。

決定だ。

ミーレ長官と奥様は、ケヤキくんが、今までとは異なる経験をして帰ってくるときまで、待て。

ケヤキくんの話を聞くのは。

お父さんお母さんが何を考えて、何をどうしたかったから、どんな行動に出たのか、をケヤキくんに説明する前に。

ケヤキくんが、聞いた話を自身で判断できるだけの経験を積ませてやれ。」

オレの強硬姿勢を見たことがないミーレ長官夫妻は、一瞬ひるんだ。

「私は、父上、母上を尊敬しています。
ですが、このたび、父上、母上以外にも尊敬する方が出来ました。
私は、その方のご期待に応えたいと思います。」
とケヤキくんは、オレを見る。

「楽しみにしているぞ。」
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

漆黒の瞳は何を見る

灯璃
BL
記憶を無くした青年が目覚めた世界は、妖、と呼ばれる異形の存在がいる和風の異世界だった 青年は目覚めた時、角を生やした浅黒い肌の端正な顔立ちの男性にイスミ アマネと呼びかけられたが、記憶が無く何も思い出せなかった……自分の名前すらも 男性は慌てたようにすぐに飛び去ってしまい、青年は何も聞けずに困惑する そんな戸惑っていた青年は役人に捕えられ、都に搬送される事になった。そこで人々を統べるおひい様と呼ばれる女性に会い、あなたはこの世界を救う為に御柱様が遣わされた方だ、と言われても青年は何も思い出せなかった。経緯も、動機も。 ただチート級の能力はちゃんと貰っていたので、青年は仕方なく状況に流されるまま旅立ったのだが、自分を受け入れてくれたのは同じ姿形をしている人ではなく、妖の方だった……。 この世界では不吉だと人に忌み嫌われる漆黒の髪、漆黒の瞳をもった、自己肯定感の低い(容姿は可愛い)主人公が、人や妖と出会い、やがてこの世界を救うお話(になっていけば良いな) ※攻めとの絡みはだいぶ遅いです ※4/9 番外編 朱雀(妖たちの王の前)と終幕(最後)を更新しました。これにて本当に完結です。お読み頂き、ありがとうございました!

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~

ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

処理中です...