《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

578.二人で一緒にめくるめく愛の世界の扉を開けて進むことは、バージンロードを二人で歩いていくみたいだと思いませんか?

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寝室へ、ゴーしたオレとクロードは、準備のために、いったん、別々になった。

サプライズからの、盛り上がりを演出したいからさ。

クロード、喜んでくれるかなー?

オレが準備している間に、クロードは、クロードで準備をしてくれていた。

寝室に入ったら。

懐かしいイ草の匂いが。

「畳?」

ベッドとは別に、寝室の一画に畳が置かれている。

真新しい畳が六畳分。

「もう、一生、畳を見ることはないと思っていた。」

オレが立ち尽くしていると。

「ヒサツグが、帰らないと言ったら、見せようと準備していた。」
とクロード。

里心がつかないようにかな?

「靴を脱いで、乗っていいかな? 」

「ヒサツグが良いように。」
とクロード。

オレは、靴を脱いで、畳に寝そべる。

「やっぱり、畳は落ち着く。」

うつ伏せになって、イ草の匂いを吸い込んでみた。

「ヒサツグ?」
とオレを見守るクロードが、心配そうに聞いている。

「クロード、ありがとう。オレ、今、幸せを噛み締めている。」

「帰りたくなった、と言わないか?」
とクロード。

「言わない。イ草の匂いが苦手じゃないなら、クロードも畳に来い。

この幸せな気持ちのまま、クロードもオレの幸せに染めてやる。」

クロードは、嬉しそうに笑う。

オレは、クロードが靴を脱ぐのを手伝って、クロードをオレの横に寝転がらせた。

「畳の上に転がっていると体が伸びる気がする。」

「ヒサツグが、落ち着ける場所を用意したかった。」
とクロード。

オレの隣にいて体を横向きにして、オレをじっと見つめるクロード。

オレは、クロードを不安にさせたくない。

日本に帰る、帰ると言ってきたオレが、クロードの不安を拭い去るために、クロードの側にいることが、オレの幸せで、オレの望みだと、繰り返し伝えていこう。

「クロード、仰向けになってくれ。」
オレは、起き上がって、クロードの体を押して、クロードを仰向けにした。

「隣に寝転ぶクロードと手を繋いでいられる場所が、オレの生きていく場所だぞ?」

オレは、仰向けになっているクロードの顔に顔を近づけていく。

「クロードの目も、鼻も、頬も、唇も。」

オレは、目、と口に出しながら、眦にキスをした。

鼻と言ったときには、クロードとオレの鼻を合わせた鼻キス。

頬と言ったときには、オレの頬をクロードの頬に押し当てる。

唇と言ったときに。

オレは、クロードの顔に覆いかぶさった。

オレは、仰向けになって、オレにされるがままになっているクロードに、宣言してやる。

「オレは、クロードとするキスが好きだぞ。

クロードの唇が好きだぞ。

なぜかと言うと、クロードが好きだからな!」

クロードは、ぱっと、憂いと心配をなくした顔で、オレの後頭部に手を回した。

クロードは、オレの唇をクロードの唇に近づけていく。

唇が触れ合う前に。

オレは、クロードの目を見ながら、大事なことを確認する。

「クロード。オレ、クロードを襲っていいかな?」

「ヒサツグが私を?」
とクロードは、不思議そうにしている。

クロードの感覚では、夫が嫁を襲うもの、という意識があるのかもしれないなー。

ふふん。

今宵、クロードに、オレとクロードの新しい可能性を見せてやるぞ。

今宵、というには、まだ、お日様が落ちていないけどなー。

ふっふっふっ。

オレのサプライズ本番は、これからだからな?

「クロード。

オレとクロードのまだ見ぬ新しい愛の世界に踏み出してみないかなー?」

「ヒサツグが、新しい愛の世界へ私を連れていくのか?」
とクロードは、悩んでいる。

クロードは、ここで悩む、を選択した。

うーん。

クロードを安心させるぞ。

「クロード。

オレとクロードは、めくるめく愛の世界の新しい扉を開いて、一緒に進むんだぞ?

オレとクロードの二人で。」

「私とヒサツグ、二人で。」
と繰り返すクロード。

二人で一緒に進むのって、結婚式のバージンロードみたいだよな?

「オレとクロードの結婚式は、緊張感あり過ぎだったからさ。

今から、オレとクロードの二人だけで、結婚式をしよう。

ベッドで。」

「私とヒサツグの二人だけで、ベッドで結婚式?」
とクロード。

オレにのしかかられていたクロードは、俄然、乗り気になった。

ぱああ、と輝く表情は、待ち切れないと訴えてくる。

オレも、待ち切れないぞ。

「オレとクロード。二人だけで、気が済むまで、愛し合うぞ?」

クロードは、驚くほどの早さでオレを抱えると、二人してベッドへ。

がっつく前に結婚式の定番の台詞を言わないとなー。

病めるときも健やかなるときも、ってのを。

「オレは、どんなときも、クロードと一緒にいて、クロードと一緒に生きるからな。

クロード、オレの一生をよろしくな。」

オレは、ウキウキでやる気全開のクロードをベッドの上に座らせた。

「クロードからも、オレに何か言ってくれ。

オレは、クロードがオレに言ってくれた言葉を一生の宝物にして生きていく。」

クロードは、真剣に考えてくれた。

「私の伴侶になったヒサツグの人生を、私は、私の人生で受け止める。

私の息が続くまで、私はヒサツグと共に生きる。

私の父上と母上の分も。

私はヒサツグと生きて幸せでいたい。」
とクロード。

クロードは、本心を丸ごとオレに差し出してきた。

クロードの伴侶のオレが、伴侶のクロードの本心を受け止めないはずがない。

「オレとクロードが二人で叶えるのに、ぴったりな願いだな。

クロード、オレ達、幸せになろう。」

オレは、クロードの唇に触れるだけのキスをした。

「クロード、今のは、オレとクロードの誓いのキスな?」
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