《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

576.クロードと二人っきりになりましょう。

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結婚式と結婚披露宴には、何度か出たけれど、門出を祝福されて幸せいっぱいの恋人を見られるから、何度出てもいいもんだよなー。

ご祝儀はとぶけどさ。

愛こんにゃく家とこんにゃくの結婚式も、いいお式だった。

サーバル王国のシガラキノ女王陛下、マウンテン王国の四人、ドリアン王国の国王陛下夫妻は、愛こんにゃく家とこんにゃくの結婚披露宴の第一部終了後、会場を引き上げた。

国賓の皆様は、大公城で休養中。

第二部からは、カズラくんと大店の商人が主体の二次会となっている。

オレとクロードは、二次会の宣言をしてから、引き上げてきた。

「愛こんにゃく家とこんにゃくの愛に、愛の深さを学ぼうクイズ!」
と仕切るカズラくん。

どこからともなく、出てくるプラカード。

カズラくんに阿吽の呼吸で手を貸す大店の商人。

オレとクロードが立ち去る前に見た女神様は、ワクワクして、気になるもの全てに絡みにいくと言っていた。

楽しそうで何よりだ。

オレとクロードは、大公城に戻ってきた。

結婚式用の衣装を普段着に着替えて。

オレは、クロードの様子をうかがう。

「ヒサツグ?」

オレに気づいたクロードが、オレを部屋の中へ招き入れる。

「クロードは、お疲れかなー?

まだ、元気ならさ。

オレ、クロードにサプライズがあるんだけど、どうかな?」

「どこへ行く?」
とクロード。

クロードは、嬉しそうに、オレをお姫様抱っこ。

「クロード、体力あるなー。」

「抱っこすれば、ヒサツグと触れ合う時間が増える。」
とクロード。

オレは、もっと体力つけよう。

クロードといるときに、疲れたから、と言いたくない。

なんせ、オレの方が年上だからな。

「オレも、クロードに抱っこされるのは、好きだぞ?

胸板も腕も背中も感じられて、クロードの顔が近づくからなー。」

クロードにお姫様抱っこされながら、クロードの頬を撫でてやると、クロードは、そのまま顔を近づけてきた。

近い近い!

ああ、もう。

オレの唇をついばむようなキスをするクロード。

バードキスをして顔を離すクロード。

え?終わり?

「クロード?オレ、熱いキスが始まるかと、期待したんだけどなー?」

襲うぞ?

「私はまだ、サプライズをされていない。」
とクロード。

そうだったな。

「お預けされているんだな、オレは。」

オレは、クロードにお姫様抱っこされながら、行き先を口で説明した。

部屋の扉を開けると。

部屋の中には、桜、つつじ、菖蒲、朝顔、撫子、紅葉、山茶花、椿が、見頃になっている。

この部屋の花と木は、カズラくんに協力してもらった。

オレが記憶している四季の花が咲いている部屋の中央に、お茶席が設けられている。

お茶席には、お抹茶とお茶菓子。

お茶菓子とお茶菓子をはじめとするお茶席セットは、大店の商人に頑張って、探してもらったり、作ってもらったりした。

オレ、愛こんにゃく家とこんにゃくの結婚式と披露宴の準備に携わっているうちに。

襲撃されて結婚式が中断したことへの悔しさが、強くなってきてさ。

結婚式をやり直すか、カズラくんに聞かれたんだけど。

神社でする三々九度は、神様違いだからさ。

牧師や司祭に誓います、と言うのは、この世界の結婚式と被る。

他に何か、中断しない結婚式みたいなのが、ないかな、と考えて。

お茶席にすることにした。

オレは、茶道をたしなんでこなかったから、なんちゃってお茶席だけど。

二人っきりで花を愛でるには、ちょうどいいと思った。

クロードと座り、お湯を入れてお抹茶を溶かし、それっぽく、演出する。

お茶菓子は、三色団子にした。

なんちゃってお茶席をするオレとクロードが、気兼ねなく食べられるように。

和菓子の作り方は、日本にいたときも知らなかったからなー。

オレにとって、作るものじゃなく、買うものだったからさ。

クロードは、物珍しそうにオレがすることを見ている。

「だいぶ端折っているけれど、花を愛でながら、お抹茶を飲んで、甘いものを食べる文化があるから、再現してみたぞ。

日本にいたときのオレは、食べて飲むだけだったから、カズラくんと大店の商人の尽力により、この部屋は完成している。」

オレとクロードは、花を見ながら、お抹茶を飲み、三色団子を食べる。

「クロード。

オレとクロードとケレメイン大公国は、今日で、一つの大きなハードルを越えられたと思う。」

「私とヒサツグの第一歩だ。」
とクロード。

だから。

今こそ、クロードに伝えたい。

「クロード。

この世界のどこにいるか分からなかっただろうオレを探し出して、オレにクロードと生きる道を用意してくれてありがとう。」

オレは、驚くクロードを見つめて言った。

「オレ、ちゃんとクロードに伝えようと思ったからさ。

この世界にいるクロードの側に、オレを引き留めてくれてありがとう。」

「ヒサツグ。」
とクロード。

クロードは、三色団子を皿に置く。

動揺して、三色団子を落とさないようにかな?

「オレは、クロードの引き留めがあったから、この世界でクロードと生きていくことを真剣に考えられた。

オレに、もう、迷いはないぞ。」

「ヒサツグ。私は。」
とクロード。

クロードの眦にうっすらと涙の膜が張る。

「愛しているよ、オレのクロード。

これからどんなに忙しくなっても、オレは、クロードといることを諦めたりしない。」

「ヒサツグ。私のヒサツグ。」
とクロード。

クロードは、身を乗り出して、オレを抱きしめる。

ぎゅうぎゅうと、ではなく。

そっと、そっと。

今まで、ぎゅうぎゅう抱きしめていたのは、オレがいなくならないか、心配で不安だったからなんだな。

「クロードも、オレを諦めるな。

離れ離れになりそうになったら。

オレを追いかけて、捕まえろ。

追い求めあって、まだ足りないくらいが、オレとクロードだからな。」

オレは、クロードの涙の膜に唇をつけた。
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