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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
569.ヤグルマさんとオレ。ヤグルマさんは、オレの心を解きほぐしてくれました。
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「カズラくんが、ウキウキしている。幸せな恋になるといいなー。」
オレがカズラくんの背中を見送っていると。
ヤグルマさんは、ニコニコと安心させてくれた。
「大店の商人は、本人の性格もありますが、職業柄、カズラ様を悪いようにはいたしません。
始まりは、カズラ様からのお誘いでしたが、交際期間が長くなれば、ほどよくなります。」
とヤグルマさん。
「交際期間が長くなれば?
恋は、終わることもあるかもしれないよな。」
「終わることがあっても、大店の商人は、商売柄、綺麗に別れます。
別れが来ても、カズラ様にいらぬ傷を負わせる心配はございません。」
とヤグルマさん。
「商売できなくなるような別れ方はしないということだよな。」
消費者相手の企業が、就活生に悪印象を与えないようにお祈りする、みたいな感じかなー?
「カズラくんが、不必要に傷つかないなら、何も言うことはないぞ。」
「ヒサツグ様は、肩の力を抜けるようになられて。
ヒサツグ様にとっての生活の場の足場固めも無事に終わり、喜ばしい限りです。」
とヤグルマさん。
「色々、失ったものもあるけどな。
クロードとクロードの周りの人は、クロードとオレが一緒に生きていくために、手放したものがある。」
オレは、柴犬人を見た。
「他の全てを手放すことになっても、ヒサツグ様をクロード様の伴侶にお迎えできたことは、ケレメイン家とクロード様にとっては価値がございました。」
とヤグルマさん。
「ヤグルマさんが慰めてくれたら、罪悪感が減るなー。」
「ヒサツグ様が、罪悪感を抱える必要はございません。
ヒサツグ様が伴侶になられたことで、ケレメイン家に抱えていてはいけないものをあぶり出し、押し出したのでございます。
お仕えする主人の結婚を、主人の思惑通りではなく、家人の思い通りにしようと画策することは。
考えることさえ不敬な思い上がり。
不遜な考えを改めて、己の在り方を見つめ直すきっかけにしたから、今がございます。」
とヤグルマさん。
「オレも、分かってはいるんだけどさ。
クロードのことを息子を思うように、成長を楽しみにしながら見守っていたという気持ちは伝わってきたからなー。」
ヤグルマさんは、柴犬人に対して、同情しなかった。
「あの者らが、クロード様を息子のようにと考えることは、クロード様への冒涜でございます。
クロード様は、あの者らに、親として親のように振る舞うことを望まれておりません。」
とヤグルマさん。
「クロードは、ヤグルマさんに対しても、親に甘えるような態度はしていなかったな。
ヤグルマさんは、年代的に、クロードのお父さんお母さんも頼りにしていたよな?」
「クロード様は、ご両親がどのようなお気持ちや態度で家人と向き合っておいでかをよく学んでいらっしゃいました。」
とヤグルマさん。
「クロードにとって、長く働いている使用人は、信頼していても、家族の範疇には入らなかったんだな。最初から。」
オレは、腑に落ちた。
柴犬人のクロードを思う気持ちが、クロードが柴犬人を思う気持ちとすれ違ったのは、三つの出来事の起きたタイミングのせいかもしれない。
クロードのご両親が魔王による消滅で消えたこと。
クロードが英雄となり、国王陛下にこき使われて、ケレメイン公爵領に戻れない日が続いたため、クロード不在のまま、領地の復興に奮闘することになったこと。
クロードとの結婚を一心に信じて、ケレメイン公爵領の復興に私財を投じたサーバル王国の王女シガラキノ様を間近で見続けたこと。
三つ全てが合わさって醸成されて、軌道修正することなく走り出したんだろうな。
「クロード様は、家人が家族に対してもよき配下であることを望まれていました。
己の気持ちの強さから、主人の望みを読み違えることは、家人として、あってはならないことなのです。」
とヤグルマさん。
「頭ではそう考えていても、感情は割り切れるかなー。」
「ヒサツグ様の判断とクロード様の判断には、何の間違いもございません。
主人の判断に問題があるのなら、主人の信頼を裏切る形で、こそこそと家人が画策するのではなく、主人が主人として振る舞えるように、相談の場を持ち続け、主人が失敗したときのために備えておくことが、家人てしての正しい選択だったでございます。
あの者らには、驕り高ぶっていた考えを反省し、心を入れ替えるきっかけとなりました。
あの者らに、反省した後の再出発先が用意されていたからこそ、あの者らはひねずに、立ち直れたのでございます。」
とヤグルマさん。
「やっぱり、一家に一人はヤグルマさんだなー。
オレ、ヤグルマさんがいなかったら、どうなっていたんだろう、と何度も思うぞ?」
「ケレメイン公爵家の王都邸に来たばかりのヒサツグ様は、ハリネズミのように己の柔らかい部分を守ろうとされていらっしゃいました。
今は、カピバラのように、王者の風格を身につけられました。」
とヤグルマさん。
オレは、ハリネズミからカピバラに進化したんだなー。
「ハリネズミもカピバラも、あまり強そうに見えないぞ?」
「ヒサツグ様の強さは、見た目に分かりやすい強さではございませんから。」
とヤグルマさん。
オレがカズラくんの背中を見送っていると。
ヤグルマさんは、ニコニコと安心させてくれた。
「大店の商人は、本人の性格もありますが、職業柄、カズラ様を悪いようにはいたしません。
始まりは、カズラ様からのお誘いでしたが、交際期間が長くなれば、ほどよくなります。」
とヤグルマさん。
「交際期間が長くなれば?
恋は、終わることもあるかもしれないよな。」
「終わることがあっても、大店の商人は、商売柄、綺麗に別れます。
別れが来ても、カズラ様にいらぬ傷を負わせる心配はございません。」
とヤグルマさん。
「商売できなくなるような別れ方はしないということだよな。」
消費者相手の企業が、就活生に悪印象を与えないようにお祈りする、みたいな感じかなー?
「カズラくんが、不必要に傷つかないなら、何も言うことはないぞ。」
「ヒサツグ様は、肩の力を抜けるようになられて。
ヒサツグ様にとっての生活の場の足場固めも無事に終わり、喜ばしい限りです。」
とヤグルマさん。
「色々、失ったものもあるけどな。
クロードとクロードの周りの人は、クロードとオレが一緒に生きていくために、手放したものがある。」
オレは、柴犬人を見た。
「他の全てを手放すことになっても、ヒサツグ様をクロード様の伴侶にお迎えできたことは、ケレメイン家とクロード様にとっては価値がございました。」
とヤグルマさん。
「ヤグルマさんが慰めてくれたら、罪悪感が減るなー。」
「ヒサツグ様が、罪悪感を抱える必要はございません。
ヒサツグ様が伴侶になられたことで、ケレメイン家に抱えていてはいけないものをあぶり出し、押し出したのでございます。
お仕えする主人の結婚を、主人の思惑通りではなく、家人の思い通りにしようと画策することは。
考えることさえ不敬な思い上がり。
不遜な考えを改めて、己の在り方を見つめ直すきっかけにしたから、今がございます。」
とヤグルマさん。
「オレも、分かってはいるんだけどさ。
クロードのことを息子を思うように、成長を楽しみにしながら見守っていたという気持ちは伝わってきたからなー。」
ヤグルマさんは、柴犬人に対して、同情しなかった。
「あの者らが、クロード様を息子のようにと考えることは、クロード様への冒涜でございます。
クロード様は、あの者らに、親として親のように振る舞うことを望まれておりません。」
とヤグルマさん。
「クロードは、ヤグルマさんに対しても、親に甘えるような態度はしていなかったな。
ヤグルマさんは、年代的に、クロードのお父さんお母さんも頼りにしていたよな?」
「クロード様は、ご両親がどのようなお気持ちや態度で家人と向き合っておいでかをよく学んでいらっしゃいました。」
とヤグルマさん。
「クロードにとって、長く働いている使用人は、信頼していても、家族の範疇には入らなかったんだな。最初から。」
オレは、腑に落ちた。
柴犬人のクロードを思う気持ちが、クロードが柴犬人を思う気持ちとすれ違ったのは、三つの出来事の起きたタイミングのせいかもしれない。
クロードのご両親が魔王による消滅で消えたこと。
クロードが英雄となり、国王陛下にこき使われて、ケレメイン公爵領に戻れない日が続いたため、クロード不在のまま、領地の復興に奮闘することになったこと。
クロードとの結婚を一心に信じて、ケレメイン公爵領の復興に私財を投じたサーバル王国の王女シガラキノ様を間近で見続けたこと。
三つ全てが合わさって醸成されて、軌道修正することなく走り出したんだろうな。
「クロード様は、家人が家族に対してもよき配下であることを望まれていました。
己の気持ちの強さから、主人の望みを読み違えることは、家人として、あってはならないことなのです。」
とヤグルマさん。
「頭ではそう考えていても、感情は割り切れるかなー。」
「ヒサツグ様の判断とクロード様の判断には、何の間違いもございません。
主人の判断に問題があるのなら、主人の信頼を裏切る形で、こそこそと家人が画策するのではなく、主人が主人として振る舞えるように、相談の場を持ち続け、主人が失敗したときのために備えておくことが、家人てしての正しい選択だったでございます。
あの者らには、驕り高ぶっていた考えを反省し、心を入れ替えるきっかけとなりました。
あの者らに、反省した後の再出発先が用意されていたからこそ、あの者らはひねずに、立ち直れたのでございます。」
とヤグルマさん。
「やっぱり、一家に一人はヤグルマさんだなー。
オレ、ヤグルマさんがいなかったら、どうなっていたんだろう、と何度も思うぞ?」
「ケレメイン公爵家の王都邸に来たばかりのヒサツグ様は、ハリネズミのように己の柔らかい部分を守ろうとされていらっしゃいました。
今は、カピバラのように、王者の風格を身につけられました。」
とヤグルマさん。
オレは、ハリネズミからカピバラに進化したんだなー。
「ハリネズミもカピバラも、あまり強そうに見えないぞ?」
「ヒサツグ様の強さは、見た目に分かりやすい強さではございませんから。」
とヤグルマさん。
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