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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
545.『ぼくとスペンサーは、ぼくが好きになって、恋人の体裁を整えたけれど、始められなかったんだよ。ぼく達が始められなかったのは。』
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カズラくんからのさよなら宣言。
聞いているオレの胸が痛い。
カズラくんは、ドリアン王国の国王陛下に、別れを告げている。
カズラくんから別れを切り出されても、ドリアン王国の国王陛下は、別れるとは言わない。
ドリアン王国の国王陛下の名前を呼んで、愛さないと告げたカズラくんのハリセンから飛び散る氷のつぶては、粒が大きくなった。
氷のつぶての一粒、一粒は、カズラくんが流していない涙。
カズラくんは、自分で恋を終わらせた。
カズラくんにとっては、この世界で二度目の恋。
一度目の失恋に区切りをつけて、次の人生を夢見させてくれた恋。
愛しても愛してくれない。
それだけなら、まだ、片思いをゆっくり寝かせて、徐々に薄めていけばよかった。
カズラくんと親しくなるまで、カズラくんとの距離を詰めてきた人は。
カズラくんに惚れさせても、カズラくんに惚れはしなかった。
カズラくんは、この世界で、カズラくんを大切にしてくれる人と生きていこうとしていた。
恋に溺れて何もかも失う生き方を、カズラくんは良しとしない。
だから。
カズラくんは、自分で、自分の恋を終わらせた。
胸の内で涙を流しながら、ドリアン王国の国王陛下に向けている恋する気持ちに区切りをつけた。
ドリアン王国の国王陛下は、まだ後ろを振り返らない。
「カズラが私を諦めても、カズラの恋人に相応しいのは、私以外いない。」
とドリアン王国の国王陛下。
ドリアン王国の国王陛下は、カズラくんが、まだ、ドリアン王国の国王陛下のことが好きだと確信している。
ドリアン王国の国王陛下は、カズラくんに好かれているから、カズラくんが離れていかないと思っている。
「スペンサー。
ぼくは、愛されることを諦めるくらいなら、ぼくを愛さない人を捨てるくらい、わけないんだよ。」
とカズラくん。
「私に愛されていない、というのは、カズラの錯覚だ。」
とドリアン王国の国王陛下。
「ぼくの錯覚だったら、どんなに良かっただろうね、スペンサー。」
とカズラくん。
「異世界から来たカズラの視野が狭くなるのは、仕方のないことだと、今回の無礼は許そう。
私と共にドリアン王国に来て、カズラは、この世界の学びを深めるといい。」
とドリアン王国の国王陛下。
「スペンサーのぼくへの愛は、最初からどこにもないのに、スペンサーは、ぼくがスペンサーと一緒にいくと思うんだね?」
とカズラくん。
「カズラは、私を好いている。
これからも、私といたいであろう?」
とドリアン王国の国王陛下。
「恋は、一人でもできるんだよ、スペンサー。
想いを伝えないままでも。
伝えてしまった後、想いが報われなくても。
その人を好きな間は、一人で好きでいても、構わないんだよ。
片思いって、そういうことだから。」
とカズラくん。
カズラくんのハリセンからは、氷のつぶてではなく、ぼたん雪が飛び散っている。
人の体温に触れると消えてしまうぼたん雪。
恋人になったドリアン王国の国王陛下に顧みられなかったカズラくんの恋心。
カズラくんと別れたくないドリアン王国の国王陛下が手を伸ばして繋ぎ止めようとしても。
カズラくんの恋心は、ドリアン王国の国王陛下が触れると溶けて消えてしまう。
「スペンサーとぼくは、恋人になったけれど。
恋人なのに、ぼく達は。
ぼくだけが好きだったね。
出会ったときから、ぼくの片思いのままだった。
ぼくが好きだと伝えると、スペンサーは喜んでいたからね。
恋人として付き合っているうちに、スペンサーがぼくを好きになるのを待っていたんだよ。
恋人として一緒に過ごす時間が増えたら、スペンサーの心にぼくへの恋心が芽生えるかもしれない、と思っていた。
期待していたんだよ、スペンサーの気持ちに。
でも。
いつまで経っても、スペンサーは、ぼくを好きにならない。
両思いでないなら、恋人じゃないよ、スペンサー。
スペンサーは、ぼくといても、ぼくを好きにならなかった。
それが、ぼくとスペンサーの関係の全て。
スペンサーに別れを告げるのは、ぼくだけど。
ぼくとの関係を始めなかったのは、スペンサーだよ。
ぼくとスペンサーは、恋人としての体裁を整えても、始められなかった。
だから。
さようなら、スペンサー。
ぼくとは関係のない人生を送るといいよ。」
とカズラくん。
ドリアン王国の国王陛下は、ばっと勢いよくカズラくんを振り返った。
「カズラは、ドリアン王国に来ないと主張するのか?」
とドリアン王国の国王陛下。
ドリアン王国の国王陛下は、今になって、カズラくんにフラれる危機感を覚えたんだな。
「私には、カズラが必要だ。
カズラのいない一生など考えられない。」
とドリアン王国の国王陛下。
「スペンサーは、最後までぼくへの愛を語るのではなく、スペンサー自身への献身を求めるんだね?」
とカズラくん。
カズラくんのハリセンから飛び散るぼたん雪が止む。
カズラくんがハリセンを振ると。
ドリアン王国の国王陛下にくっついていた氷のつぶては、一瞬で消えて無くなった。
「ぼくは、ぼくのために、ドリアン王国がぼくを利用する計画を完全に潰すことにしたんだよ。
ぼくは、ドリアン王国を利用して、ぼくを利用することが何を意味するか、この世界に分からせる。」
ドリアン王国の国王陛下に対する恋を終わらせて、感情を整理したカズラくんは、いつもの調子を取り戻していた。
聞いているオレの胸が痛い。
カズラくんは、ドリアン王国の国王陛下に、別れを告げている。
カズラくんから別れを切り出されても、ドリアン王国の国王陛下は、別れるとは言わない。
ドリアン王国の国王陛下の名前を呼んで、愛さないと告げたカズラくんのハリセンから飛び散る氷のつぶては、粒が大きくなった。
氷のつぶての一粒、一粒は、カズラくんが流していない涙。
カズラくんは、自分で恋を終わらせた。
カズラくんにとっては、この世界で二度目の恋。
一度目の失恋に区切りをつけて、次の人生を夢見させてくれた恋。
愛しても愛してくれない。
それだけなら、まだ、片思いをゆっくり寝かせて、徐々に薄めていけばよかった。
カズラくんと親しくなるまで、カズラくんとの距離を詰めてきた人は。
カズラくんに惚れさせても、カズラくんに惚れはしなかった。
カズラくんは、この世界で、カズラくんを大切にしてくれる人と生きていこうとしていた。
恋に溺れて何もかも失う生き方を、カズラくんは良しとしない。
だから。
カズラくんは、自分で、自分の恋を終わらせた。
胸の内で涙を流しながら、ドリアン王国の国王陛下に向けている恋する気持ちに区切りをつけた。
ドリアン王国の国王陛下は、まだ後ろを振り返らない。
「カズラが私を諦めても、カズラの恋人に相応しいのは、私以外いない。」
とドリアン王国の国王陛下。
ドリアン王国の国王陛下は、カズラくんが、まだ、ドリアン王国の国王陛下のことが好きだと確信している。
ドリアン王国の国王陛下は、カズラくんに好かれているから、カズラくんが離れていかないと思っている。
「スペンサー。
ぼくは、愛されることを諦めるくらいなら、ぼくを愛さない人を捨てるくらい、わけないんだよ。」
とカズラくん。
「私に愛されていない、というのは、カズラの錯覚だ。」
とドリアン王国の国王陛下。
「ぼくの錯覚だったら、どんなに良かっただろうね、スペンサー。」
とカズラくん。
「異世界から来たカズラの視野が狭くなるのは、仕方のないことだと、今回の無礼は許そう。
私と共にドリアン王国に来て、カズラは、この世界の学びを深めるといい。」
とドリアン王国の国王陛下。
「スペンサーのぼくへの愛は、最初からどこにもないのに、スペンサーは、ぼくがスペンサーと一緒にいくと思うんだね?」
とカズラくん。
「カズラは、私を好いている。
これからも、私といたいであろう?」
とドリアン王国の国王陛下。
「恋は、一人でもできるんだよ、スペンサー。
想いを伝えないままでも。
伝えてしまった後、想いが報われなくても。
その人を好きな間は、一人で好きでいても、構わないんだよ。
片思いって、そういうことだから。」
とカズラくん。
カズラくんのハリセンからは、氷のつぶてではなく、ぼたん雪が飛び散っている。
人の体温に触れると消えてしまうぼたん雪。
恋人になったドリアン王国の国王陛下に顧みられなかったカズラくんの恋心。
カズラくんと別れたくないドリアン王国の国王陛下が手を伸ばして繋ぎ止めようとしても。
カズラくんの恋心は、ドリアン王国の国王陛下が触れると溶けて消えてしまう。
「スペンサーとぼくは、恋人になったけれど。
恋人なのに、ぼく達は。
ぼくだけが好きだったね。
出会ったときから、ぼくの片思いのままだった。
ぼくが好きだと伝えると、スペンサーは喜んでいたからね。
恋人として付き合っているうちに、スペンサーがぼくを好きになるのを待っていたんだよ。
恋人として一緒に過ごす時間が増えたら、スペンサーの心にぼくへの恋心が芽生えるかもしれない、と思っていた。
期待していたんだよ、スペンサーの気持ちに。
でも。
いつまで経っても、スペンサーは、ぼくを好きにならない。
両思いでないなら、恋人じゃないよ、スペンサー。
スペンサーは、ぼくといても、ぼくを好きにならなかった。
それが、ぼくとスペンサーの関係の全て。
スペンサーに別れを告げるのは、ぼくだけど。
ぼくとの関係を始めなかったのは、スペンサーだよ。
ぼくとスペンサーは、恋人としての体裁を整えても、始められなかった。
だから。
さようなら、スペンサー。
ぼくとは関係のない人生を送るといいよ。」
とカズラくん。
ドリアン王国の国王陛下は、ばっと勢いよくカズラくんを振り返った。
「カズラは、ドリアン王国に来ないと主張するのか?」
とドリアン王国の国王陛下。
ドリアン王国の国王陛下は、今になって、カズラくんにフラれる危機感を覚えたんだな。
「私には、カズラが必要だ。
カズラのいない一生など考えられない。」
とドリアン王国の国王陛下。
「スペンサーは、最後までぼくへの愛を語るのではなく、スペンサー自身への献身を求めるんだね?」
とカズラくん。
カズラくんのハリセンから飛び散るぼたん雪が止む。
カズラくんがハリセンを振ると。
ドリアン王国の国王陛下にくっついていた氷のつぶては、一瞬で消えて無くなった。
「ぼくは、ぼくのために、ドリアン王国がぼくを利用する計画を完全に潰すことにしたんだよ。
ぼくは、ドリアン王国を利用して、ぼくを利用することが何を意味するか、この世界に分からせる。」
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