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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
544.カズラくんとドリアン王国の国王陛下。カズラくんは、ドリアン王国の国王陛下に別れをつげています。一方、ドリアン王国の国王陛下は?
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カズラくんのハリセンから飛び散る火花も氷も。
カズラくんが胸の内に閉じ込めてきた感情から出てきた。
カズラくんは、この世界に戻ってきて、新しい出会いに期待していた。
彼氏の存在に嬉しそうにしているときもあった。
オレに、彼氏の引き抜きを持ちかけたとき。
カズラくんは、自身の幸せな未来を疑っていなかった。
カズラくんは、自身で幸せになろうとしていた。
今よりも前に、気付いてあげられていたらな。
カズラくんのハリセンから飛び散る火花や氷に、胸が痛む。
オレは、ケレメイン大公国の大公妃として、オレ自身の環境変化に慣れようと必死だった。
周りが見えていなかった、というよりも、周りを見て、気遣う余裕がオレにはなかった。
オレは、カズラくんが一人で悩みを抱えていたことに気付けなかった。
日本にいたときのオレなら、同じ職場の後輩の深刻な悩みを取りこぼすことなんて。
はあ。
カズラくんは、オレがカズラくんのことを背負うのが難しい状況だと理解していた。
だから、カズラくんは、オレに助けを求めなかったんだな。
カズラくんに気を遣われていたことを、オレは痛切に感じている。
カズラくんは、オレに気を遣っていることを匂わせなかった。
完全に、周囲に隠し通していた。
カズラくんは、オレと対等である、と主張することはあっても、オレに頼ろうとしたことはない。
交換条件を突きつけてくることはあっても。
悩みの本質を、オレには見せなかった。
オレの二十歳のときなんて、見ず知らずの場所で、単独行動はしなかった。
知らないことは、怖いから。
オレは、今。
猛烈に、反省している。
目の前で責められたり、裏で陰口をたたかれるよりも。
何も言わずに、一人で耐えて、戦ってきたカズラくんの感情がハリセンから漏れてくるのを見ていると。
オレの気の利かなさ、が身に染みる。
いたたまれない。
カズラくんは、胸の内の柔らかい部分については、誰にも言わずに飲み込んできたんだと思う。
オレは、これから、カズラくんに、もう少し気を配るようにしよう。
うるさいよ、と言われる手前ぐらいには、カズラくんを構おう。
よし。
反省して、新たな決心もついた。
「国王に即位する前に、国王に即位するから、と、ぼくに知らせていたら。
ぼく達は円満に別れていた。
どうして、ぼくに打ち明けなかった?
打ち明けるタイミングは、いくらでもあったよね?」
とカズラくん。
カズラくんのハリセンからは、氷のつぶてが飛んでいる。
「別れるなど早計だ。」
とドリアン王国の国王陛下。
ドリアン王国の国王陛下のドリアンの実になった体は、人間だったときの胴体よりも膨らんだ。
ドリアンの実の胴体は、椅子の背もたれからはみ出している。
横に。
カズラくんのハリセンから飛び出している氷のつぶては、ドリアン王国の国王陛下の胴体に集合していく。
氷のつぶては、磁石に集まる砂鉄みたいになっている。
寒くないかな?
ドリアンの実の体だと凍傷の心配をしなくてもいいのかなー?
「別れる以外の選択肢なんてないよね?
ぼくのために生きられない人には、ぼくと結婚する資格なんてないよ。」
「国王は、第二王子でいるよりも、できることが多い。
国王となった私は、カズラのしたいことにも付き合える。」
とドリアン王国の国王陛下。
「ぼくは、ぼくのしたいことに付き合える、と言っている人とは結婚しない。
ぼくのことを二の次三の次にすると宣言していることに気づかない人とは、一緒に暮らせない。
ぼくに捧げる愛は、何かと交換するものじゃない。」
とカズラくん。
愛と引き換えに、利用されることを拒む意思をドリアン王国の国王陛下に告げたカズラくん。
「別れよう、スペンサー。」
とカズラくん。
ドリアン王国の国王陛下は、後ろにいるカズラくんを振り返らない。
「王とは孤独だ。
カズラは、王となる私に寄り添い力になるとは言わないのか?」
とドリアン王国の国王陛下。
「第二王子であることを知らせないまま付き合っていたことの不誠実さを悔やむこともなく。
王になったから、王になった自分を支えろ、という要求を突きつけてくる方が身勝手だとぼくは思うよ。」
とカズラくん。
「カズラの身に余る力は。」
とドリアン王国の国王陛下。
ドリアン王国の国王陛下は、まだ余裕そうにしている。
「ぼくの力は、ぼくが幸せに生きるために、ぼくが努力して手に入れた力。
スペンサー。
彼氏になったから、誤解した?
夢を見た?
結婚したら、スペンサーのために、スペンサーの頼みを聞いて、ぼくが力を使ってくれる、と思った?
スペンサーの都合の良い夢は、ぼくの生き方を否定して、ぼくを利用する腹づもりの上でしか成立しない。
お別れだよ、スペンサー。」
とカズラくん。
「待て、カズラ。早まるな。
別れる必要はない。
結婚しなくてもいいではないか?
私とカズラは、会いたいときに会えばいい。」
とドリアン王国の国王陛下。
「ぼくは、もう、スペンサーに会いたいとは思わない。
だから、今、別れを告げているんだよ。
終わりだよ、スペンサー。
ぼく達は、もう終わりにする。
もう、愛せないよ、スペンサー。」
とカズラくん。
カズラくんが胸の内に閉じ込めてきた感情から出てきた。
カズラくんは、この世界に戻ってきて、新しい出会いに期待していた。
彼氏の存在に嬉しそうにしているときもあった。
オレに、彼氏の引き抜きを持ちかけたとき。
カズラくんは、自身の幸せな未来を疑っていなかった。
カズラくんは、自身で幸せになろうとしていた。
今よりも前に、気付いてあげられていたらな。
カズラくんのハリセンから飛び散る火花や氷に、胸が痛む。
オレは、ケレメイン大公国の大公妃として、オレ自身の環境変化に慣れようと必死だった。
周りが見えていなかった、というよりも、周りを見て、気遣う余裕がオレにはなかった。
オレは、カズラくんが一人で悩みを抱えていたことに気付けなかった。
日本にいたときのオレなら、同じ職場の後輩の深刻な悩みを取りこぼすことなんて。
はあ。
カズラくんは、オレがカズラくんのことを背負うのが難しい状況だと理解していた。
だから、カズラくんは、オレに助けを求めなかったんだな。
カズラくんに気を遣われていたことを、オレは痛切に感じている。
カズラくんは、オレに気を遣っていることを匂わせなかった。
完全に、周囲に隠し通していた。
カズラくんは、オレと対等である、と主張することはあっても、オレに頼ろうとしたことはない。
交換条件を突きつけてくることはあっても。
悩みの本質を、オレには見せなかった。
オレの二十歳のときなんて、見ず知らずの場所で、単独行動はしなかった。
知らないことは、怖いから。
オレは、今。
猛烈に、反省している。
目の前で責められたり、裏で陰口をたたかれるよりも。
何も言わずに、一人で耐えて、戦ってきたカズラくんの感情がハリセンから漏れてくるのを見ていると。
オレの気の利かなさ、が身に染みる。
いたたまれない。
カズラくんは、胸の内の柔らかい部分については、誰にも言わずに飲み込んできたんだと思う。
オレは、これから、カズラくんに、もう少し気を配るようにしよう。
うるさいよ、と言われる手前ぐらいには、カズラくんを構おう。
よし。
反省して、新たな決心もついた。
「国王に即位する前に、国王に即位するから、と、ぼくに知らせていたら。
ぼく達は円満に別れていた。
どうして、ぼくに打ち明けなかった?
打ち明けるタイミングは、いくらでもあったよね?」
とカズラくん。
カズラくんのハリセンからは、氷のつぶてが飛んでいる。
「別れるなど早計だ。」
とドリアン王国の国王陛下。
ドリアン王国の国王陛下のドリアンの実になった体は、人間だったときの胴体よりも膨らんだ。
ドリアンの実の胴体は、椅子の背もたれからはみ出している。
横に。
カズラくんのハリセンから飛び出している氷のつぶては、ドリアン王国の国王陛下の胴体に集合していく。
氷のつぶては、磁石に集まる砂鉄みたいになっている。
寒くないかな?
ドリアンの実の体だと凍傷の心配をしなくてもいいのかなー?
「別れる以外の選択肢なんてないよね?
ぼくのために生きられない人には、ぼくと結婚する資格なんてないよ。」
「国王は、第二王子でいるよりも、できることが多い。
国王となった私は、カズラのしたいことにも付き合える。」
とドリアン王国の国王陛下。
「ぼくは、ぼくのしたいことに付き合える、と言っている人とは結婚しない。
ぼくのことを二の次三の次にすると宣言していることに気づかない人とは、一緒に暮らせない。
ぼくに捧げる愛は、何かと交換するものじゃない。」
とカズラくん。
愛と引き換えに、利用されることを拒む意思をドリアン王国の国王陛下に告げたカズラくん。
「別れよう、スペンサー。」
とカズラくん。
ドリアン王国の国王陛下は、後ろにいるカズラくんを振り返らない。
「王とは孤独だ。
カズラは、王となる私に寄り添い力になるとは言わないのか?」
とドリアン王国の国王陛下。
「第二王子であることを知らせないまま付き合っていたことの不誠実さを悔やむこともなく。
王になったから、王になった自分を支えろ、という要求を突きつけてくる方が身勝手だとぼくは思うよ。」
とカズラくん。
「カズラの身に余る力は。」
とドリアン王国の国王陛下。
ドリアン王国の国王陛下は、まだ余裕そうにしている。
「ぼくの力は、ぼくが幸せに生きるために、ぼくが努力して手に入れた力。
スペンサー。
彼氏になったから、誤解した?
夢を見た?
結婚したら、スペンサーのために、スペンサーの頼みを聞いて、ぼくが力を使ってくれる、と思った?
スペンサーの都合の良い夢は、ぼくの生き方を否定して、ぼくを利用する腹づもりの上でしか成立しない。
お別れだよ、スペンサー。」
とカズラくん。
「待て、カズラ。早まるな。
別れる必要はない。
結婚しなくてもいいではないか?
私とカズラは、会いたいときに会えばいい。」
とドリアン王国の国王陛下。
「ぼくは、もう、スペンサーに会いたいとは思わない。
だから、今、別れを告げているんだよ。
終わりだよ、スペンサー。
ぼく達は、もう終わりにする。
もう、愛せないよ、スペンサー。」
とカズラくん。
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