《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

521.オレは、女神様に対するこの世界の住人の距離の取り方を甘く見ていた。女神様の望む暮らしの実現は困難?停滞する会議に風を吹かせたのは?

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女神様は、一途だ。

恋人を作るときは、一人だけ。

恋人を作ったら、恋人が死ぬまでは、他に目移りしない。

女神様の歴代の恋人は、どこぞの国の国王陛下だったから、日本で生きてきたオレにとって、浮気や不倫は好ましいとは思わない。

女神様の恋の成就が、不倫と浮気にしかならなかったのは、女神様に国王陛下以外との接点を持たせないようにした、人間が悪い。

オレは、さ。

女神様が、この先、不倫や浮気にならない恋をしていけたらいいな、と思う。

女神様の恋の成就が、女神様を知る人から祝福されるものであればいいなって。

この先、オレやクロードが、草葉の陰で眠るころ。

女神様は、新しい恋をしているかもしれない。

オレとクロードが、永遠の眠りについて。

オレより年下のサーバル王国の王女シガラキノ様が寿命を迎えても。

創造神である女神様の一生は、終わらない。

オレは、女神様を孤独に追いやりたくない。

女神様は、人の中で過ごすことが楽しいと感じて、これからも、人の中で生きたいと考えている。

オレやクロード、サーバル王国の王女シガラキノ様が生きている間。

女神様が、孤独にさいなまれることはないだろう。

オレは、オレが生きている間は、女神様が孤独に陥らないように気をつけていくつもりでいる。

でも。

オレとクロードが、永遠の眠りについた後のことまでは、手を伸ばすことができない。

オレとクロードがいなくなった後も、ケレメイン大公国が瓦解しないように手を尽くしてから眠りにつきたいとは思うけど。

いなくなった後のことは、生きている人が決めることだから。

オレは、オレとクロードとサーバル王国の王女シガラキノ様がいなくなった後も、女神様が、人の中で楽しく暮らせる筋道を作っておこうと考えている。

女神様が、オレに加護を与えたのは、クロードのためだけど。

加護だから、とオレと一緒に行動するのは、女神様に加護の縛りがあるからじゃない、女神様の気持ちが、オレと行動したがっているんだ、と気づいたんだよなー。

女神様の心は、情熱的で一途で、不器用だ。

女神様の恋は、不器用で、切り替えがない。

女神様の恋は、恋した相手が生きている期間、継続する。

だから。

女神様のクロードへの想いも、女神様の中から消えることはない。

クロードが、永遠の眠りにつくまでずっと。

女神様は、クロードへの叶わぬ想いを持ち続ける。

失恋が確定していて、万が一の可能性がなくても。

女神様は、恋が実るか、実らないか、で、恋心をなくしたりしない。

好きな相手に応えてもらえなくても。

好きでいる。

好きな相手のために、何かをしたいと思う。

好きな相手に尽くしても、振り向いてもらえなかったとしても。

それでも、好きでいる。

それが、女神様の恋だ。

割り切ったりなんて、しない。

理由をつけて、誤魔化しもしない。

ただ。

好きでいる。

オレは、クロードが女神様によろめいたりしないと知っているけれど、女神様とクロードを二人きりにはしない。

同時に、オレは。

女神様とこの世界の住人との接点を増やしたいとも考えている。

今のケレメイン大公国は、オレや愛こんにゃく家がいる。

ケレメイン大公国の女神様担当は、ばっちり。

オレと愛こんにゃく家は、女神様を縛り付けない。

女神様が荒ぶる原因となった、サーバル王国の王妃陛下の発言と、会議の参加者の反応を見てみたら。

現状、ケレメイン大公国以外の場所で、女神様がこの世界の住人の中に入っていっても、女神様が望むような生活は実現しないだろうなーという気がした。

この世界の住人にとっての女神様は、たまに現れて、特別な何かを与えてくれる、近くて遠い何かなんだろうな。

ドリアン王国は、色々とアウトだったけれど。

サーバル王国とマウンテン王国にも、女神様に対する認識を変えていってもらわないと。

女神様の望む生活が、オレとクロードが生きている間の限定になってしまわないように。

会議の参加者は、オレの提示した問題について、考えたことがなかった様子。

反応が、薄くて、薄くて。

多分。

どこに、女神様が荒ぶる理由があったのか分からないんだと思う。

どうしたものかな?

人の意識を変えるのは、難しいからなー。

シーンとした空間に広がる困惑した空気。

そのとき。

「私は。」
と声が上がった。

サーバル王国の王女シガラキノ様だ。

「私は、女神様と友誼を結べたことが嬉しく、ずべし。」
とサーバル王国の王女シガラキノ様。

シガラキノ様は、上体を起こして、女神様を見た。

「女神様に、私との友情を悲しく嫌なものだと思われるのは、ずべし。

私は、嫌、ずべし。」
とサーバル王国の王女シガラキノ様。

上体を起こしたシガラキノ様は、涙をためて悲しみに打ちひしがれた目ではなく、意思を宿した目をしている。

「私は、女神様と友誼を結べたことに、何かを足してほしいとは言わないことを、ずべし。」
とサーバル王国の王女シガラキノ様。

女神様は、サーバル王国の王女シガラキノ様をじっと見つめている。

「女神様に信じてほしい、ずべし。」
とサーバル王国の王女シガラキノ様。

女神様は、ふふふ、とは言わなかった。

「私は、女神様に証明したい、ずべし。」
とサーバル王国の王女シガラキノ様は、真剣に話す。

「今すぐは、難しくても、女神様の力を授からないで、私は、サーバル王国の王になる、ずべし。」
とサーバル王国の王女シガラキノ様。

会議の参加者は、全員、サーバル王国の王女シガラキノ様に釘付けになった。

「いつか、女神様には、友達が女王になったと思ってほしい、ずべし。

私は、女神様とこれからも会って話したい、ずべし。

王だから、じゃなく、友達として、私は、女神様と会いたい、ずべし。」
とサーバル王国のシガラキノ様。
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