《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
513 / 667
第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

513.クロードは、オレが欲しいタイミングで欲しい答えを出して、援護してくれます。ミーレ長官の名誉を回復しましょう。

しおりを挟む
マウンテン王国の女王陛下の客死事件までは、ドリアン王国の侵略に負けていなかった、とサーバル王国の王妃陛下は最初に話していたな。

会議に悲壮感が漂う中で、威厳を持って口を開いたのはクロード。

「マウンテン王国は、女王陛下にまつわるものを全て消す形で、ドリアン王国を相手にしない体制を整えた。」
とクロード。

サーバル王国で客死した女王陛下の同行者は、全員が帰国後、先代国王陛下により鬼籍に入った。

その理由が、関係者にさらされる。

「マウンテン王国の先代国王陛下の強硬姿勢は、ドリアン王国からの侵略対策だったんだな。」

女王陛下の側近と先代国王陛下の仲が最悪だから、という理由で、嬉々として消されたわけじゃない。

マウンテン王国の貴族が粛々と従う姿勢を見せたのは、マウンテン王国の危機を脱するため。

「マウンテン王国のミーレ長官が、王太子としてサーバル王国に滞在し、女王陛下の客死事件を探ろうとしたことは、サーバル王国とマウンテン王国の痛手になった。」
とクロード。

クロードの言葉に次いで、ミーレ長官は、当時の行動理由を話す。

「マウンテン王国の先代国王陛下が、ドリアン王国の侵略を防ぐことに全力を注がれていたということを、当時の私は、つゆほども考えませんでした。

母上がサーバル王国で客死したと言うことを知った私は、事件の真相を突き止めることを第一に考えて、矢も盾もたまらずサーバル王国に行きました。」
とミーレ長官は、苦しそうに話した。

ミーレ長官に、サーバル王国とマウンテン王国の出席者から非難の目が集まる。

サーバル王国の王女シガラキノ様からの視線は、特に険しい。

ミーレ長官は、弁明をしなかった。

弁明をする場ではない、とミーレ長官は心得ている。

この会議は、起きた事実は照らし合わせていく場だから。

ミーレ長官の奥様は、ミーレ長官の隣で背筋を伸ばして前を向いている。

ミーレ長官の息子さんは、ミーレ長官の手を離して、両親と一緒に前を向いた。

「ミーレ長官は、王太子になっていたが、女王陛下が期限付きの即位だったこととと、ミーレ長官に王太子教育をする教育者がいなかったことから、王太子になってから、王太子でなくなってからも、王太子教育を一切受けていない。

当時のミーレ長官に、母を思う息子以上の行動を求めるなら、教育を施さなかった女王陛下と、ミーレ長官に教育を受けさせなかった先代国王陛下が、その責任を共に背負うことになるだろう。」
とクロード。

マウンテン王国の四人は、ミーレ長官に向けていた責める視線を下げる。

「王太子教育を受けていなかったなんて、ずべし。

信じられない、ずべし。」
とサーバル王国の王女シガラキノ様。

「王太子でなかった女王陛下は、王太子教育を受けていない。

王太子教育がどういったものか。

女王陛下は、弟である先代国王陛下を通して、王太子教育を見知ってはいても、王太子教育を習い、身につけることの重要性を理解していたとは言えない。」
とクロード。

オレは、クロードが、ここへきて、口を開いた理由が分かるから嬉しい。

「王太子教育をうけないで王になった女王陛下は、さ。

王太子教育が、どの場面でどう活きるかの実感を持てたかな?

王太子教育の必要性に思い至らない女王陛下が、ミーレ長官に王太子教育を手配しなくても不思議ではないぞ。

女王陛下が、ミーレ長官に王太子教育を受けさせようと考えたところで、女王陛下には、王太子教育を手配する伝手がなかったんだよな。

女王陛下が、先代国王陛下の力を借りずに、ミーレ長官へ教育者を手配することは困難だったんじゃないかな。」

ケレメイン公爵だったクロードの言葉は、推測と伝聞ばかりのオレの言葉より、重みがある。

オレは、クロードが作ってくれた援護射撃を活かし、ミーレ長官の無知が作られたものだと強調した。

「ミーレ長官に、実際に役に立つ王太子教育を施せるのは、王太子として育ってきたマウンテン王国の先代国王陛下をおいて、他にない。

だが、マウンテン王国の先代国王陛下が、甥のミーレ長官のために王太子教育を手配する利点はない。」
とクロード。

サーバル王国の国王陛下夫妻は、当時のマウンテン王国の内情に通じている。

サーバル王国の国王陛下夫妻は、沈痛な面持ちをしている。

サーバル王国の王女シガラキノ様は、ミーレ長官が教育を受けさせてもらえなかった、という話を聞いて考え込んでいた。

サーバル王国の王女シガラキノ様に、王女らしい教育を受けさせなかったのは、サーバル王国の国王陛下夫妻の意思だ。

マウンテン王国は、王家の姉と弟が話し合わずに突き進んだ結果、地位に見合う教育を受ける機会をミーレ長官に与えなかった。

ミーレ長官が王太子教育を受けていなかったために、地位に見合う言動ができなかったという話も。

ミーレ長官が王太子教育を受けていないことは、女王陛下と先代国王陛下の意思が関係していたことも。

マウンテン王国の四人が、聞いていた情報とは違っていたんだと思う。

マウンテン王国の四人は、互いに、目と目で会話しながら、冷静に考えをまとめている。

あと、もう一押しだな。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

どうも、卵から生まれた魔人です。

べす
BL
卵から生まれる瞬間、人間に召喚されてしまった魔人のレヴィウス。 太った小鳥にしか見えないせいで用無しと始末されそうになった所を、優しげな神官に救われるのだが…

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

君なんか求めてない。

ビーバー父さん
BL
異世界ものです。 異世界に召喚されて見知らぬ獣人の国にいた、佐野山来夏。 何かチートがありそうで無かった来夏の前に、本当の召喚者が現われた。 ユア・シノハラはまだ高校生の男の子だった。 人が救世主として召喚したユアと、精霊たちが召喚したライカの物語。

王子様から逃げられない!

白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

【本編完結】十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、攻略キャラのひとりに溺愛されました! ~連載版!~

海里
BL
部活帰りに気が付いたら異世界転移していたヒビキは、とあるふたりの人物を見てここが姉のハマっていた十八禁BLゲームの中だと気付く。 姉の推しであるルードに迷子として保護されたヒビキは、気付いたら彼に押し倒されて――? 溺愛攻め×快楽に弱く流されやすい受けの話になります。 ルード×ヒビキの固定CP。ヒビキの一人称で物語が進んでいきます。 同タイトルの短編を連載版へ再構築。話の流れは相当ゆっくり。 連載にあたって多少短編版とキャラの性格が違っています。が、基本的に同じです。 ※ムーンライトノベルズ様にも投稿しています。先行はそちらです。

処理中です...