《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

489.国王が、女神様から力を授かることについて、女王陛下は、自身で何もしなくても、王になれば与えてもらえるものと考えていたのでしょうが?

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「大公妃殿下は、そちらの解明を急がれたのですね。」
と王妃陛下。

「死者の名誉を回復しにきた。
そう、オレは伝えたよな。」

女王陛下が、女神様に何も返さずに、女神様の力を授かれると考えていたことは、虫が良すぎるよなー。

ケレメイン大公国は、魔王による消失、神子様の召喚、英雄の誕生、という事態を排除するために、女神様の影響を受けないことを選んだ。

女神様から恩恵を受けない代わりに、女神様に取らせない。

ギブ・アンド・テイク。

魚心あれば水心。

女王陛下が、親しくない間柄どころか、敬遠していた女神様から、力を授かれると疑っていなかったのは、女王陛下の父である先々代国王陛下のことがあったからかもしれない。

でも。

先々代国王陛下を、女王陛下は参考にしてはいけなかったと思うんだよな。

先々代国王陛下は、女神様の恋人に選ばれなかっただけで、大前提として、女神様との関係を築きたい国王陛下だったんだ。

国王としてか、男としてか、までは分からないけれど、女神様と繋がりを持ちたい気持ちがあったんだよな。

フラレて、文句垂れていたのは、未練のような、違うような。

出発点からして、先々代国王陛下と女王陛下は、違う。

女王陛下が、女神様の恋人にならない王、というのを大事にしていたなら、それは、逆なんだ。

女神様には、恋人ができて楽しいという利点があった。

恋人を作る女神様の利点なんて、楽しい、退屈しない、嬉しい、寂しくない、という感情だけ。

恋人になることによって女神様から受ける恩恵により、国王の利点の方が大きい。

国の発展という面で。

先々代国王陛下が、女神様の恋人にならなくても、と言っていたのは、女神様に相手にされなかった男の負け惜しみだ。

まともに取り合う類の話じゃない。

酒の肴にする話だ。

男友達だったら、いい加減、過去にしがみつくな、と背中を叩きながら、酒を飲んで終わる内容だ。

先代国王陛下が、父である先々代国王陛下の話をまともに取り合わなかったのは、フラレ親父の愚痴だから。

女王陛下は、フラレ親父の愚痴を、思考に刷り込まれたのかな?

それとも、何か、閃いた?

「女王陛下は、女神様に縛られないでいようとした。

だから、女王陛下は、女神様から力を授かることにはなかった。

女神様から力を授かると、女神様との関係ができるからな。」

オレは、女神様が、国王陛下をしもべ扱いしていることは伏せた。

伴侶がしもべ扱いされて、嬉しい人はいないと。

「女神様に何も返さずに、ということは。
女神様から力を授かるためには、何かを犠牲にするのですか?」
と王妃陛下。

「犠牲と呼ぶか、喜びと称するか、は女神様との関係性じゃないかな?

力を授かることによってできる、女神様と国王陛下の繋がりは、一過性のものじゃない。

恋人と呼べる間柄か、恋人と呼べずとも親しくなれているか、疎遠かによって変わるだろうな。

サーバル王国の国王陛下が、反ドリアン王国派の急先鋒にならなかった理由は、政治的な安定の問題だけかな?」

王妃陛下は、微笑みを浮かべて返事をしなかった。

女王陛下が女神様から授かった力を使えば、ドリアン王国民を退けられると考えて、女王陛下に取引を申し出るなら。

サーバル王国の国王陛下自身が、女神様に授かった力を使うという方法を使わなかったのは、なぜかな?

と考えると。

政治的な問題も考えられるけどさ。

根本的に、ドリアン王国民を退けられるだけの強力な力を授かっていなかったから、と思うんだよな。

マウンテン王国の国王陛下が、女神様から授かった力は強力だった。

国王陛下が、女神様を慕っていたからだと思う。

サーバル王国の国王陛下は、女神様が恋人に選んでいない時点で、女神様を思う気持ちより、女神様以外を思う気持ちが強い。

女神様に対する気持ちが、授かる力に比例しているんじゃないかな?

国王陛下の女神様に対する気持ちが、国王陛下に対する力と土地への恩恵という形で報われる。

マウンテン王国が栄えていることも。
マウンテン王国が、魔王による消失に何度もみまわれるのも。

マウンテン王国の国王陛下と女神様との関係が、親密と言い換えてもいいくらいに良好な関係を築くことに成功してきた証左。

女神様に気に入られ、恩恵を与えられ、女神様の元へ。

このサイクルは、その代の国王陛下が女神様との関係をどう築き上げてきたかによって決まる。

オレが、ケレメイン大公国での魔王による消失回避のために、女神様の恩恵を不要とする条件を女神様に突きつけたとき。

女神様は、オレの条件を拒否しなかった。

女神様に条件を突きつけたときのオレは、一世一代の覚悟をしていて、女神様が拒否しなかったことを喜んで、ほっとしたけれど。

女神様には、拒否する理由が全くなかったから、受け入れた、ということに、話しながら気づいた。

後は、女王陛下のしたかったことは何か、と、なぜ、それがしたかったか、だなー。
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