《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
483 / 667
第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

483.オレが、国王陛下ではなく、王妃陛下に、シガラキノ女王案を持ち出したのは、理由があります。

しおりを挟む
オレはにこやかに告げた。

「オレ達が、前向きに話し合いができることを歓迎する。」

サーバル王国の王妃陛下の部屋にいる使用人は、息をひそめている。

静まり返った部屋にオレの声だけが響いた。

シガラキノ様を女王に、という話題は、思いつきで話したわけではない。

今のシガラキノ様に女王をやれ、というのは、オレが大公妃をやるよりも大変だ。

オレには、クロードがいて、クロードが全面的に、オレの大公妃生活をバックアップしてくれている。

シガラキノ様は、元々跡継ぎとして育っていない。

サーバル王国の王家の中でも、王女だから、と軽めの存在だった。

シガラキノ様が、女神様と友誼を結んだことや、若い同行者と向き合って話ができる関係になったことは、心から喜ばしく思っている。

思っているんだけどさー。

困ったことに。

ケレメイン大公国に滞在中のシガラキノ様を守れるような、オレが信頼できる護衛を、オレはシガラキノ様に用意できない。

サーバル王国が、ケレメイン大公国の乗っ取りを企てて、追い払うだけなら。

サーバル王国の王女様であるシガラキノ様の護衛を心配する必要はなかった。

サーバル王国とオレが大立ち回りを演じ終わったと思ったら、ドリアン王国が入り込んでいたんだよなー。

ケレメイン大公国滞在中に、サーバル王国の王女シガラキノ様の身に何かあっては大問題になる。

オレもケレメイン大公国も、無い袖は振れない。

サーバル王国側で、シガラキノ様の護衛を用意してもらわないといけない。

シガラキノ様に、シガラキノ様を守る気がある護衛をつけてもらうためには、どうしたらいいか、を考えて。

シガラキノ様には価値があるとシガラキノ様を大事にしないとバチが当たるぞ!という話をしようと思っていた。

バチが当たらないようにしよう、と話を持ちかけることを考えていたオレは、はたっと気づいた。

この世界で、バチが当たる、という考え方が一般的かどうか、を、誰にも確認してこなかった。

そのことに気づいたのは、王妃陛下の部屋に来てから。

シガラキノ様の安全対策を解決できて良かった。

シガラキノ様には、頑張ってもらうことになるから、オレは協力を惜しまない。

「シガラキノが女王。」
と女神様は、鈴が鳴るような笑い声をあげた。

女神様が、喜んでいる。

色々と、セーフだ。

命拾いした。

サーバル王国が。

オレは、一安心。

「オレが、国王陛下ではなく、王妃陛下に、シガラキノ様の即位を持ちかけた理由について。
王妃陛下は、予想がついているかな?」

「お答えしかねます。」
と王妃陛下。

「王妃陛下と国王陛下。
お二人の考える、王女シガラキノ様の将来設計が、同じではない、と見込んだからだな。」

「まあ、そうでしたか。」
と王妃陛下。

「国王陛下は、オレの提案にうんとは言わない。
クロードとシガラキノ様の婚姻を推していたのは、国王陛下だから。」

国王陛下と王妃陛下が、王女シガラキノ様にどのような未来を望んでいるか。

考えてみたら。

サーバル王国としては、王女シガラキノ様とクロードとの婚姻を望んでいた。

サーバル王国の決定は、国王陛下の意向。

王妃陛下も同意見だと、オレは考えていた。

ミーレ長官と話し合うまでは。

ミーレ長官から、王女シガラキノ様と、ミーレ長官の息子さんとの婚姻の話が出ていると聞いたとき。

ミーレ長官の息子さんとシガラキノ様の婚姻を画策している主導者は、国王陛下じゃない、と思った。

ミーレ長官の息子さんでは、王女の嫁入り先として、クロードに嫁入りするよりも格が落ちる。

支配者として、王女の嫁入り先を選択するなら、クロードだろう、と思った。

ミーレ長官の息子さんが、嫁入り先として、クロードよりも格下だとミーレ長官は考えていなかったけれど。

ミーレ長官は、王女シガラキノ様が息子へ嫁入りすることを確信できるような相手と交渉していたことになる。

サーバル王国の王女シガラキノ様の婚姻について、国王陛下以外で、決定権を持ちうる相手が、ミーレ長官の交渉相手だった。

サーバル王国で、国王陛下以外で、となると。

王妃陛下だ。

王妃陛下は、女神様の裁定が下った後は、部屋に閉じこもった。

ミーレ長官が、王妃陛下の部屋を訪ねても、怪しむ人はいなかったと思う。

オレが目撃者になったら、ご機嫌伺いくらいに考えていた。

オレは、部屋に閉じこもった王妃陛下を警戒していなかった。

だから、うまくいっていた。

王妃陛下が、オレの訪問を受け入れたのは、ミーレ長官が計画をおりたから。

ミーレ長官の代わりに、オレと妥協点を見つけようとしていた。

王女シガラキノ様の将来について。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

どうしてこうなった?(ショートから短編枠にしたもの)

エウラ
BL
3歳で魔物に襲われて両親を亡くし、孤児院育ちの黒髪黒目で童顔のノヴァは前世の記憶持ちの異世界転生者だ。現在27歳のCランク冒険者。 魔物に襲われたときに前世の記憶が甦ったが、本人は特にチートもなく平々凡々に過ごしていた。そんなある日、年下22歳の若きSランク冒険者のアビスと一線を越える出来事があり、そこで自分でも知らなかった今世の過去を知ることになり、事態は色々動き出す。 若干ストーカー気味なわんこ系年下冒険者に溺愛される自己評価の低い無自覚美人の話。 *以前ショート専用の枠で書いてましたが話数増えて収拾がつかなくなったので短編枠を作って移動しました。 お手数おかけしますがよろしくお願いいたします。 なお、プロローグ以降、途中まではショートの投稿分をまるっと載せるのでそちらと重複します。ご注意下さい。出来次第投稿する予定です。 こちらはR18には*印付けます。(でも忘れたらすみません)

どうも、卵から生まれた魔人です。

べす
BL
卵から生まれる瞬間、人間に召喚されてしまった魔人のレヴィウス。 太った小鳥にしか見えないせいで用無しと始末されそうになった所を、優しげな神官に救われるのだが…

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

処理中です...