482 / 667
第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
482.女神様と友誼を結ぶことは、女神様の力を授かることにはなりません。サーバル王国の王女シガラキノ様を守る体制作りは、急務です。
しおりを挟む
「大公妃殿下は、シガラキノを認めてくださっているようですが、サーバル王国には、王太子がおります。
その者は、どうしようとお考えですか?」
と王妃陛下。
オレは、にこにこと話す。
「よきにはからえ、だな。
ただし、王太子本人にもその周囲にも、シガラキノ様への対応を間違わせないように。
シガラキノ様を名実ともにトップに据えろ。
シガラキノ様以外が、実権を握ることがないようにはからえ。」
強気なのは、オレが下手に出る理由がないから。
あと、新参者のケレメイン大公国の大公妃であるオレが下手に出ることで、サーバル王国の王妃陛下以外が、ケレメイン大公国を下だという風に上下関係を汲んでしまわないように。
よきにはからえ、という言葉をオレが使う日がくるとはなー。
オレは、ケレメイン大公国の国の顔だから、決して縮こまった姿を見せない。
オレが強気でいるから、サーバル王国の王妃陛下も、オレを追い返さずに相手をしている。
押しかけてきて、へりくだるのは、行動に一貫性がない。
最初に押しかけてきたサーバル王国をみならって、交渉が始まるまでは、強気オンリー。
「お優しくいらっしゃるのですね?」
と王妃陛下。
「オレは、優しくはないぞ?
女神様と友誼を結んだシガラキノ様がいることに満足して欲をかかないように、とサーバル王国で言い含めるのは、サーバル王国の国王陛下と王妃陛下だからな。
国王陛下と王妃陛下は、親としても、統治者としても、ご多忙になるだろう。」
オレは、王妃陛下にご多忙返しをした。
王妃陛下は、忙しくなるに決まっているわ、という雰囲気を漂わせている。
よしよし。
前向きにご検討いただいているようで、何より。
「王太子が即位して国王になったときに女神様から加護を授かれるから、女神様との繋がりが二倍になる、と言い出す者を生まないようにしないとな?」
王妃陛下の使用人の息づかいが聞こえた。
女神様と二倍仲良くなろう計画を立案中だったかなー?
「代々の国王陛下が女神様のお力を授けられていたのは、女神様のお心があってのことだと、この機会に覚え直してもいいかもしれないよな。」
「次代の国王陛下は、女神様のお力を授かることがなくなるとおっしゃっていますか?」
と王妃陛下。
勿論、明言は避ける。
「女神様のお心を試した結果が、今あるものに影響を及ばさないとも限らない、とオレは考えている。」
オレと王妃陛下は、探り合うように視線を絡めている。
王妃陛下は、オレを通じて女神様の真意を探りたいんだろうなー。
女神様の気持ちは、オレを探っても出てこない。
最初、王妃陛下が女神様に直接尋ねようとしたとき、女神様が王妃陛下を相手にしなかったから、王妃陛下はオレから答えを引き出したいんだろうけど。
「特別なものを得るためにリスクがあるとしたら、オレはリスクを無視しないな。
女神様には女神様の考えがあるというだけ。」
「妾の考え、ふふふ。」
と女神様は、機嫌よく笑った。
「力を授けたい、というのは、女神様自身の気持ちだからな。」
女神様は、楽しそうに、王妃陛下を見ている。
王妃陛下と会話する気がなく、王妃陛下に興味がなかった女神様が、王妃陛下を見ている。
女神様にとって、王妃陛下の変化が楽しいんだな。
「そのへんも全て含めて、国や人がどうなってもいいか、とか、考えて、決めてみてはどうかな?
シガラキノ様が女神様と友誼を結んだ以上、サーバル王国は、シガラキノ様に近寄る有象無象の人間からシガラキノ様を守ることが、最優先課題になるんじゃないかな。
身内からも含めて。」
「軽くおっしゃいますね。」
と王妃陛下。
「シガラキノ様のひたむきさは、人の信用を得られる強さだとオレは思う。
シガラキノ様自身が、人の繋がりを作り直していくことが、シガラキノ様を守り、ひいては、サーバル王国の強みになっていくんじゃないかな。」
「大公妃殿下は、シガラキノの守りを固めることをお考えですね。」
と王妃陛下。
オレは、立ち上がって、王妃陛下にだけ聞こえるくらいの距離に顔を近づけて、王妃陛下の耳元にささやいた。
「シガラキノ様の心身を守るのは、サーバル王国の最優先事項だと思う。
シガラキノ様は女神様と友誼を結んだこと以外、今までのシガラキノ様と何も変わっていない。
シガラキノ様が、女神様の力を授かることはない。」
王妃陛下の耳は、ピクッとした。
「シガラキノ様に戦う力や身を守る力が備わった、ということはない。
友誼を結ぶことは、力を授かるような上下関係とは同じにならない。」
王妃陛下は、オレのヒソヒソとしたささやきに耳を傾けた後。
言葉を発さずに頷いた。
女神様と友誼を結ぶ前のシガラキノ様は、ドリアン王国にガラクタのように見られていたから、ドリアン王国の侯爵子息は、接待を強要するだけだった。
でも。
女神様と友誼を結んだシガラキノ様は、ドリアン王国の侯爵子息に限らず、狙われるようになる。
シガラキノ様の守りは、固めておかないと。
シガラキノ様自身のためにも。
シガラキノ様と友誼を結んだ女神様のためにも。
サーバル王国のためにも。
シガラキノ様と仲良くやりたいオレのためにも。
サーバル王国には、シガラキノ様への認識を改めて、シガラキノ様を守る気になってもらいたい。
だから。オレは粘る。
サーバル王国の体制が一新する機会は、マウンテン王国の女王陛下がサーバル王国で客死した事件の真相を解き明かす唯一の機会にもなる。
オレは、辛抱強く待った。
「シガラキノがサーバル王国を、長い夜から解き放つことを願います。」
と王妃陛下。
その者は、どうしようとお考えですか?」
と王妃陛下。
オレは、にこにこと話す。
「よきにはからえ、だな。
ただし、王太子本人にもその周囲にも、シガラキノ様への対応を間違わせないように。
シガラキノ様を名実ともにトップに据えろ。
シガラキノ様以外が、実権を握ることがないようにはからえ。」
強気なのは、オレが下手に出る理由がないから。
あと、新参者のケレメイン大公国の大公妃であるオレが下手に出ることで、サーバル王国の王妃陛下以外が、ケレメイン大公国を下だという風に上下関係を汲んでしまわないように。
よきにはからえ、という言葉をオレが使う日がくるとはなー。
オレは、ケレメイン大公国の国の顔だから、決して縮こまった姿を見せない。
オレが強気でいるから、サーバル王国の王妃陛下も、オレを追い返さずに相手をしている。
押しかけてきて、へりくだるのは、行動に一貫性がない。
最初に押しかけてきたサーバル王国をみならって、交渉が始まるまでは、強気オンリー。
「お優しくいらっしゃるのですね?」
と王妃陛下。
「オレは、優しくはないぞ?
女神様と友誼を結んだシガラキノ様がいることに満足して欲をかかないように、とサーバル王国で言い含めるのは、サーバル王国の国王陛下と王妃陛下だからな。
国王陛下と王妃陛下は、親としても、統治者としても、ご多忙になるだろう。」
オレは、王妃陛下にご多忙返しをした。
王妃陛下は、忙しくなるに決まっているわ、という雰囲気を漂わせている。
よしよし。
前向きにご検討いただいているようで、何より。
「王太子が即位して国王になったときに女神様から加護を授かれるから、女神様との繋がりが二倍になる、と言い出す者を生まないようにしないとな?」
王妃陛下の使用人の息づかいが聞こえた。
女神様と二倍仲良くなろう計画を立案中だったかなー?
「代々の国王陛下が女神様のお力を授けられていたのは、女神様のお心があってのことだと、この機会に覚え直してもいいかもしれないよな。」
「次代の国王陛下は、女神様のお力を授かることがなくなるとおっしゃっていますか?」
と王妃陛下。
勿論、明言は避ける。
「女神様のお心を試した結果が、今あるものに影響を及ばさないとも限らない、とオレは考えている。」
オレと王妃陛下は、探り合うように視線を絡めている。
王妃陛下は、オレを通じて女神様の真意を探りたいんだろうなー。
女神様の気持ちは、オレを探っても出てこない。
最初、王妃陛下が女神様に直接尋ねようとしたとき、女神様が王妃陛下を相手にしなかったから、王妃陛下はオレから答えを引き出したいんだろうけど。
「特別なものを得るためにリスクがあるとしたら、オレはリスクを無視しないな。
女神様には女神様の考えがあるというだけ。」
「妾の考え、ふふふ。」
と女神様は、機嫌よく笑った。
「力を授けたい、というのは、女神様自身の気持ちだからな。」
女神様は、楽しそうに、王妃陛下を見ている。
王妃陛下と会話する気がなく、王妃陛下に興味がなかった女神様が、王妃陛下を見ている。
女神様にとって、王妃陛下の変化が楽しいんだな。
「そのへんも全て含めて、国や人がどうなってもいいか、とか、考えて、決めてみてはどうかな?
シガラキノ様が女神様と友誼を結んだ以上、サーバル王国は、シガラキノ様に近寄る有象無象の人間からシガラキノ様を守ることが、最優先課題になるんじゃないかな。
身内からも含めて。」
「軽くおっしゃいますね。」
と王妃陛下。
「シガラキノ様のひたむきさは、人の信用を得られる強さだとオレは思う。
シガラキノ様自身が、人の繋がりを作り直していくことが、シガラキノ様を守り、ひいては、サーバル王国の強みになっていくんじゃないかな。」
「大公妃殿下は、シガラキノの守りを固めることをお考えですね。」
と王妃陛下。
オレは、立ち上がって、王妃陛下にだけ聞こえるくらいの距離に顔を近づけて、王妃陛下の耳元にささやいた。
「シガラキノ様の心身を守るのは、サーバル王国の最優先事項だと思う。
シガラキノ様は女神様と友誼を結んだこと以外、今までのシガラキノ様と何も変わっていない。
シガラキノ様が、女神様の力を授かることはない。」
王妃陛下の耳は、ピクッとした。
「シガラキノ様に戦う力や身を守る力が備わった、ということはない。
友誼を結ぶことは、力を授かるような上下関係とは同じにならない。」
王妃陛下は、オレのヒソヒソとしたささやきに耳を傾けた後。
言葉を発さずに頷いた。
女神様と友誼を結ぶ前のシガラキノ様は、ドリアン王国にガラクタのように見られていたから、ドリアン王国の侯爵子息は、接待を強要するだけだった。
でも。
女神様と友誼を結んだシガラキノ様は、ドリアン王国の侯爵子息に限らず、狙われるようになる。
シガラキノ様の守りは、固めておかないと。
シガラキノ様自身のためにも。
シガラキノ様と友誼を結んだ女神様のためにも。
サーバル王国のためにも。
シガラキノ様と仲良くやりたいオレのためにも。
サーバル王国には、シガラキノ様への認識を改めて、シガラキノ様を守る気になってもらいたい。
だから。オレは粘る。
サーバル王国の体制が一新する機会は、マウンテン王国の女王陛下がサーバル王国で客死した事件の真相を解き明かす唯一の機会にもなる。
オレは、辛抱強く待った。
「シガラキノがサーバル王国を、長い夜から解き放つことを願います。」
と王妃陛下。
50
お気に入りに追加
1,680
あなたにおすすめの小説

どうしてこうなった?(ショートから短編枠にしたもの)
エウラ
BL
3歳で魔物に襲われて両親を亡くし、孤児院育ちの黒髪黒目で童顔のノヴァは前世の記憶持ちの異世界転生者だ。現在27歳のCランク冒険者。
魔物に襲われたときに前世の記憶が甦ったが、本人は特にチートもなく平々凡々に過ごしていた。そんなある日、年下22歳の若きSランク冒険者のアビスと一線を越える出来事があり、そこで自分でも知らなかった今世の過去を知ることになり、事態は色々動き出す。
若干ストーカー気味なわんこ系年下冒険者に溺愛される自己評価の低い無自覚美人の話。
*以前ショート専用の枠で書いてましたが話数増えて収拾がつかなくなったので短編枠を作って移動しました。
お手数おかけしますがよろしくお願いいたします。
なお、プロローグ以降、途中まではショートの投稿分をまるっと載せるのでそちらと重複します。ご注意下さい。出来次第投稿する予定です。
こちらはR18には*印付けます。(でも忘れたらすみません)


嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです

どうも、卵から生まれた魔人です。
べす
BL
卵から生まれる瞬間、人間に召喚されてしまった魔人のレヴィウス。
太った小鳥にしか見えないせいで用無しと始末されそうになった所を、優しげな神官に救われるのだが…

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

実はαだった俺、逃げることにした。
るるらら
BL
俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!
実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。
一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!
前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。
!注意!
初のオメガバース作品。
ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。
バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。
!ごめんなさい!
幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に
復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!


嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる