《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

475.ミーレ長官の感情を含めない視点で、先代国王陛下がミーレ長官へしたことを考えてみると、見えてきたことがあります。先代国王陛下は、甥を?

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今回の計画を立てたミーレ長官は、ケレメイン大公家を廃しようと考えていた。

ケレメイン大公国は、女神様による魔王による消失がない代わりに、女神様の力による嵩上げの発展はない。

ケレメイン大公家を終わらせるということは、オレと女神様との約束が無効になり、魔王による消失の事象が起きることを認めることになる。

この計画を立てたときのミーレ長官は、魔王による消失が人生を変えたとは思わなかったのかもしれない。

先代国王陛下が魔王による消失でいなくなったことは、ミーレ長官の人生に影を落とした、と、オレは考えている。

ミーレ長官が毒杯を拒否した後。

先代国王陛下は、臣籍降下させて、甥を平民ばかりの刺客と暗殺部署に突っ込んだ。

刺客と暗殺部署の長だった愛こんにゃく家が指導して、部署の全員がミーレ長官を受け入れた。

ミーレ長官は、先代国王陛下から、先代国王陛下と直接会う機会を設けられていた。

この事実が示すもの。

最初に話を聞いたときは。
王太子だった身分を剥奪されたミーレ長官のことを気の毒だ、と思っていた。

先代国王陛下は、肉親の情がない、と、憤りさえ感じていた。

でも。

今のオレは、別の解釈をする。

先代国王陛下は、毒杯を拒み、王族でなくなっても家族と生きることを決めた甥のミーレ長官の安全のために、臣籍降下させて名字を与え、わざわざ、平民だけで構成している暗殺と刺客を専門の部署に送り込んだんだ。

なぜ、平民だけの部署に?

平民は、貴族と違って、ミーレ長官に対する恨みがないから、嫌がらせされる心配がない?

嫌がらせされる心配がないから、じゃない。

ミーレ長官は、臣籍降下しても、平民になったとは言っていない。

ミーレ長官は、平民だけの部署にいる唯一の貴族だ。

この世界は、日本とは違って、身分が絶対の階級社会。

当時、国王陛下の甥にあたるミーレ長官に、ミーレ長官が配属した部署の平民が良からぬことをしたら。

問答無用で、不敬罪が適用される。

権力を理解している平民なら、王侯貴族のミーレ長官に嫌がらせをしない。

先代国王陛下は、権力的な意味で、ミーレ長官を狙うことがない人達の中に、ミーレ長官を預けた。

もう一つ。
先代国王陛下が、暗殺や刺客の部署にミーレ長官を入れた理由がある。

ミーレ長官が、暗殺や刺客の手口を学ぶことで、自身に降りかかる火の粉を振り払えるようになること。

ミーレ長官を暗殺部署の旗頭役にしたのも、ミーレ長官を快く思わない貴族が、ミーレ長官を侮って何かを仕掛ける気をなくし、逃げ出すように仕向けたんじゃないかな。

マウンテン王国の女王陛下の実子で、王太子だったミーレ長官は、守られて生きる側の人生だった。

ミーレ長官のお母さんが、女王陛下であったにもかかわらず、客死したことは、マウンテン王国の王家を揺るがすこの上ないスキャンダル。

サーバル王国をマウンテン王国に食い込ませるくらいのスキャンダルだった。

王侯貴族のスキャンダルの責任の取り方は、本人だけじゃ済まない。

家が責任を負う。

スキャンダルの責任をとるはずの女王陛下が亡くなったから責任を取る人はいない、とはならない。

女王陛下の一親等にあたるミーレ長官が無罪放免になるなんて、王侯貴族の常識からは、外れている。

先代国王陛下は、実姉の女王陛下が客死したときの同行者を生かすことはしなかった。

女王陛下の客死事件は、マウンテン王家とマウンテン王国の信用を失墜させる出来事だった。

女王陛下と同行者にどんな事情があっても、マウンテン王国の信用を失墜させたままにしておくわけにはいかない。

為政者としての判断をしたんだと思う。

お母さんの死因を知りたいとサーバル王国に出かけていったミーレ長官は、サーバル王国にとっては、よいカモで、マウンテン王国にとっては、サーバル王国に押さえられている人質だった。

マウンテン王国の先代国王陛下が、ミーレ長官の帰国を待たずに即位したのは。

人質にされていることを理解できないミーレ長官の危機意識の無さを危惧したからじゃないのかな。

女王陛下によって傷ついたマウンテン王家とマウンテン王国と信用を、女王陛下の実子の王太子だったミーレ長官がさらに失墜させることを恐れたからじゃないかな。

先代国王陛下は、帰国したミーレ長官が、毒杯を拒否した後、誰にも害されずに生きられる場所をミーレ長官に用意したんだと思う。

ミーレ長官を裏切らない人に、ミーレ長官を託した。

暗殺や刺客の部署の長だった愛こんにゃく家と愛こんにゃく家の部下は、先代国王陛下から、ミーレ長官のことを頼まれていたんじゃないかな。

先代国王陛下が直々に動いていなければ、ミーレ長官が、ミーレ長官として、暗殺や刺客の部署で、生きていくことはできなかった。

ミーレ長官が託された暗殺や刺客の部署は、マウンテン王国の組織ではなく、マウンテン王家の組織で、マウンテン王国の貴族から横槍が入りにくい部署だったんだと思う。

マウンテン王国の今代の国王陛下は、ミーレ長官を刺客に送り込んできた理由も、マウンテン王家の組織なら、説明がつく。

ミーレ長官の奥様と息子さんが、マウンテン王国にいる間に命を落とすことがなかったのは、先代国王陛下が、ミーレ長官の家族の安全にも手を回していたんじゃないかな。

それだけ、ミーレ長官の生存に手を尽くしてくれていた先代国王陛下が魔王による消失でいなくなった。

ミーレ長官の従兄弟にあたる今代の国王陛下が、即位した後は、ミーレ長官の王太子だったころの因縁もあって、穏やかな時間は遠ざかっていったと思う。
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