《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

471.王族だったミーレ長官のお父さん、期間限定の女王だったお母さん、仮初の王太子だったミーレ長官について。オレはミーレ長官に話しました。

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三国同盟を正式に締結する前に、サーバル王国とマウンテン王国に、ミーレ長官のお母さんの件の確認は必至。

ミーレ長官のお母さんの件を白黒つけてからでないと、三国同盟は、歩調を揃えられない。

ミーレ長官のお母さんのサーバル王国での客死事件の真相が、ミーレ長官のお母さんが授かっていると思われていた女神様の力をドリアン王国の侵略者に使うことが目的だった場合。

サーバル王国に弱みを握られているだけだったマウンテン王国は、黙っていない。

先代ケレメイン公爵夫妻は、サーバル王国の窓口にならなくても良かったかもしれない。

マウンテン王国は、サーバル王国での客死事件で、王家の弱体化を招くことはなかったかもしれない。

ミーレ長官は、今ほど肩身の狭い思いをしなくて済んだかもしれない。

マウンテン王家と王家に連なる人の生活が、変わったのは、ミーレ長官のお母さんが十割十分悪いわけじゃなかった。

サーバル王国が、招いたせいだ、となるかもしれない。

新しい事実が判明したら、国同士の力関係が変わることになる。

三国同盟が締結前に終わらないように、案を考えておかないとなー。

今は、とりあえず、目の前に集中。

ミーレ長官に揺さぶりをかけるぞ。

「ミーレ長官。
タイミング的に、お父さんは、ミーレ長官に命を捧げている。」

「わかりきったふうな口をきかないでください。」
とミーレ長官。

部外者が口を挟むな、と言われかねないことを口にしている、とはオレ自身思うけど、聞いてもらうからな。

「ミーレ長官の、毒杯を拒否して生きたいという願いを知ったお父さんは、一度しか使えない方法を使って、息子の願いを叶えることにしたんだ、とオレは思う。」

「父は、私に父としての情を見せたと言いたいのですか?」
とミーレ長官。

「女王陛下の王配として、ミーレ長官の父親として、だな。

お父さんがミーレ長官の分の責任も負うから、ミーレ長官の命は見逃してもらう取引をしていないかな。」

「私の命を見逃す取引を、蟄居した父がしますか?」
とミーレ長官。

「するだろうな。

お父さんは、ミーレ長官の叔父さんにあたる先代国王陛下とマウンテン王国の貴族に頭を下げるだけでは、ミーレ長官を助けることができない、と理解していたと思うぞ。」

「私の父がそんな殊勝なことを考えますか。」
とミーレ長官。

「ミーレ長官のお母さんが即位したときに、即位に反対したミーレ長官のお父さんが蟄居を選んだのは、ミーレ長官に無関心だったからじゃない。

ミーレ長官のお母さんが女王陛下を退位した後のことを考えていたからじゃないのか?

退位後、行く場所がないと困るだろう?」

「女王陛下が退位後に行く場所がないなどという事態には、なりようがありません。

女王陛下には、私がいました。」
とミーレ長官。

ミーレ長官は、王太子だった自分が王になるから、お母さんの心配は無用だった、と言っているんだよなー。

よし、ここで、爆弾投入。

「ミーレ長官のお母さんは、一時的に玉座に座ったけれど、一生座る予定ではなかった。

目的を果たした後の、玉座をおりてからの人生の方が長くなる。

その長い時間を行く当てがなく彷徨う羽目にならないようにしよう、と考えていたんじゃないのかな、お父さんは。」

「玉座についたことがある女王陛下に行く当てがないなど、あり得ません。

退位後も、相談にのっていただく予定でした。」
とミーレ長官。

ミーレ長官は、国王になった後も、お母さんを支えることを想定して、生きていたんだな。

お父さんが、お母さんを助けないから、お父さんの分も頑張ろうと考えたのかもしれない。

ミーレ長官のお母さんへの信頼をべきべきに壊していくのは、心が痛い。

ミーレ長官が拠り所としてきた部分だからな。

「王族の蟄居なら、中枢に振り回されてることなく、穏やかに暮らせるだろう?

ミーレ長官のお母さんとミーレ長官の妻子が来ることを見越して、妻と息子夫婦と孫が帰る場所を、中枢から離れた場所に予め作っておこうとしたんじゃないかな?」

遠回しに話してみた。

「ヒサツグ様。いい加減にしてください。

私が王太子でありながら、王位に就けなかったのは、結果そうなっただけです。」

ミーレ長官は、イラッとしている。

遠回し過ぎて、イラッさせただけになってしまった。

「ミーレ長官のお母さんが亡くなった後。

王太子の身分を返上したミーレ長官と奥様と息子さんの行く場所として、お父さんは、蟄居先で待っていたんじゃないかな。」

ミーレ長官は、王太子の身分を剥奪された、ととらえているかもしれない。

「私に王太子の身分を返上する予定はありませんでした。戯言は止めてください。」
とミーレ長官。

ミーレ長官に、楽しくない話を伝えないとな。

ミーレ長官のお母さんが、ミーレ長官に、仮初の王太子だと話さなかったのはさ。

ミーレ長官のお母さんが想定していた以上に、ミーレ長官が王太子の指名を喜んでいるのを見て、味方を失いたくないお母さんは言い出せなかったから、とかかな?

オレは、伝えないと始まらないから、伝えるぞ。

「ミーレ長官は、王太子の身分が一時的なものだと知らなかった。

でも、ミーレ長官以外の王侯貴族は、知っていた。

なぜなら。

ミーレ長官のお母さんの王位自体が期間限定だったんだ。」

「そんな荒唐無稽な話がありますか。」
とミーレ長官。

オレも、なんで、わざわざ、とは思うとも。

ミーレ長官のお母さんのことを悪く表現しないように言葉を選ぶ。

「マウンテン王国側に確認した。

ミーレ長官の叔父さんが、国王陛下になる前に、期間限定で、ミーレ長官のお母さんが女王陛下になることを、ミーレ長官のお母さんは希望した。

お母さんが退位をした後は、ミーレ長官の叔父さんが、国王陛下として即位すると決まっていた。」

ミーレ長官の顔は、強張っていく。

「ヒサツグ様は、私に何を言っているか、自覚していますか?」
とミーレ長官。
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