《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
464 / 673
第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

464.ミーレ長官とオレ。まず、ミーレ長官が、ドリアン王国の侯爵子息が滞在していた部屋に一人だったのは、何を狙ったのかな?

しおりを挟む
「ミーレ長官。
オレは、ミーレ長官にドリアン王国の侯爵子息を任せたよな?

なぜ、オレが、ミーレ長官にドリアン王国の侯爵子息を任せたか、というと。

ミーレ長官は、ドリアン王国の侯爵子息を御せる、と、思ったから。

オレは、オレの部下の中で、ミーレ長官に、ドリアン王国の侯爵子息を任せると決めた。

オレは、ミーレ長官の上司だ。

ミーレ長官は、オレの部下として、ドリアン王国の侯爵子息を任されている。

仕事として。」

ミーレ長官は、はっとした。

オレは、ミーレ長官の顔を見ながら繰り返す。

「オレは、ミーレ長官に仕事を任せたんだ。」

ミーレ長官は、オレの言わんとしていることに気づけた。

「仕事として、ですね。」
とミーレ長官。

「ミーレ長官。

ドリアン王国の侯爵子息は、いつからいない?

今は、どこに、誰といる?

把握はしているよな?

ミーレ長官が、部屋に一人だった理由とあわせて、報告してくれ。」

オレは、ミーレ長官から、現状について聞くことにした。

今のミーレ長官は、オレに嘘偽りなく、話してくれるだろう。

ミーレ長官が、お母さんの客死事件の真相を探っていた理由は、遺族としての感情だけじゃなく、王太子だった自分のアイデンティティがおかしかったわけではない、と証明したい思いがあったんじゃないかな。

ミーレ長官のアイデンティティは、揺らぎ続けてきただろうから。

ミーレ長官のお母さんの女王陛下と、ミーレ長官の叔父さんにあたる先代国王陛下は、何がしたかったんだろうな。

ミーレ長官に全部のしわ寄せを押し付けて、理由を語らないままいなくなった。

先代国王陛下は、ミーレ長官に毒杯を進めたものの、ミーレ長官が妻子と生きるために臣籍降下することを許している。

ミーレ長官と先代国王陛下は、円満ではなかったけれど、疎遠ではなかった。

ミーレ長官と従兄弟にあたる国王陛下との仲の方が、壊滅的だった。

親世代の色々が、理由を知らされないまま、子ども世代に持ち越されたせいで、こじれた気がする。

今代のマウンテン王国の王家は、従兄弟同士で仲が悪く、最終的に決裂して、片方は国を出ることになった。

国の在り方として、アリなのかな?

国内でいがみ合うよりは、アリだろうけどさ。

マウンテン王国の国内で、従兄弟同士が助け合う関係を作る未来もあったんじゃないかな?

「この部屋に、私が一人でいたのは。」
とミーレ長官。

「うん。」

「閉じ込めるためです。」
とミーレ長官。

予想はしていたけど、穏やかじゃないなー。

「オレを?オレと女神様を?」

「ヒサツグ様は、最低限。女神様は、可能だったら、です。」
とミーレ長官。

素直な回答をありがとう。

「女神様を目の前にしたら、感情がたかぶったのかな?」

「そうですね。考えているうちに。」
とミーレ長官。

不安になる情報だけ詰め込まれて、一人で考えていたら、思い詰めるよな。

「オレを閉じ込める狙いは、何かな?」

オレが狙われる可能性は、カズラくんもオレも考えなかったなー。

「ヒサツグ様は、クロード様の拠り所ですから。」
とミーレ長官。

クロードを直接狙うんじゃ勝算がないから、オレを狙いにきたんだなー。

現状、オレの方が、クロードより警備が手薄。

手の届く距離は、信用できる人で固めたいと思ったからなんだけどさ。

クロード以外で、オレが背中を預けられるくらい信用できる人となると。

ヤグルマさんは、マウンテン王国にいるから、今は頼れない。

ケレメイン大公国内となると、愛こんにゃく家とカズラくんと、オレの秘書に限定されてしまう。

領内の執事長は、オレを尊重してくれているけれど、オレが背中を預けたい相手とは、また違う。

そんなオレの事情を知っていないと、この計画は、立てられなかっただろうな。

クロードとオレの蜜月ぶりは、ドリアン王国の侯爵子息が、目にしている。

ドリアン王国の侯爵子息も、計画を聞いて、ゴーサインを出したんだろう。

「クロードに対する人質として、オレの身柄を確保したかったのか。

ケレメイン大公妃をケレメイン大公国の城内で監禁するなら、事件にならずに、秘密裏に交渉できる。

よく考えているな。
誰の考えかな?」

「恐れ入ります。」
とミーレ長官。

そうだろうなー。

ドリアン王国のやり方じゃないと思ったからさ。

ドリアン王国のやり方なら、オレを部屋に監禁しようとはならないと思う。

ドリアン王国にとって、異世界人のオレに価値はない。

ドリアン王国が欲しいのは、オレじゃない。

ミーレ長官の欲しいのも、オレじゃないが。

ミーレ長官は、ドリアン王国に買収されたフリをして、オレを人質にとり、クロードと交渉をしようとしていた。

「ドリアン王国が欲しがっているのは、女神様かな?」
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~

ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

処理中です...