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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

382.愛こんにゃく家のお母さんは、人情派の名刑事ですか?容疑者は、弟嫁その二です。カンオチいきますか?それとも、ぽろりさせますか?

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愛こんにゃく家のお父さんは、呟いた。
「末っ子のお嫁さんが二重スパイになったら、どちらの国でも、安全とは言えなくなりますね。」

二重スパイの誘いが、弟嫁その二にあるかも、というオレの発言を聞いた愛こんにゃく家のお母さんは、弟その二の肩を抱いて慰めている。

「何か言ってほしい。
私は違います、というなら、スパイじゃない話を聞かせてほしい。」
と、弟その二は、弟嫁その二に顔を向けて懇願。

弟嫁その二は、愛こんにゃく家の弟その二に対して、何も言わない。

弟その二は、さらに落ち込んだ。

そこへ、明るい声が。

「二重スパイは、儲かるの?」
と弟嫁その一、アリー。

「さあ?儲かるかどうか、が大事なのかな?」

「その子は、マウンテン王国では稼げないから、お金が欲しい、とずっと言っていて。」
と弟嫁その一、アリー。

「弟嫁その二は、マウンテン王国でどんな仕事をしていたのかな?」

弟嫁その二は、そっぽ向いて返事をしなかった。

「小物を作って売っていたっぽい。

私は、付き合いがなかったから買っていないけど、お義母さんは買っていたかも?」
と弟嫁その一、アリーは、愛こんにゃく家のお母さんを見る。

「小物を作って売る仕事をしていたとは知らなかったわ。」
と愛こんにゃく家のお母さん。

弟嫁その二は、ぴくりと頬を引きつらせた。

「お義母さんは、私に仕事の斡旋をしてましたよね?」
と弟嫁その二は、恨みがましい視線を愛こんにゃく家のお母さんに向ける。

愛こんにゃく家のお母さんは、困惑している。

「私が、私の友達に欲しいものを聞いてきて、あなたが小物を作って渡していたこと?

知り合いが一人もいない場所にお嫁に来たから、ご近所付き合いを円滑にするための努力だとばかり。

それでも、謝礼は、相場より弾んでもらっていたわよ。

うちのお嫁さんだから。

あなたにとっては、仕事だったの?」
と愛こんにゃく家のお母さん。

「私は、稼ぎたいから、材料から何からこだわったものを作って、売っていたんです。

必死に作ったのに、手間賃と材料費にしかならないとは思いませんでした。」
と弟嫁その二は、しかめっ面。

「凝り性だとは思っていたけれど、仕事のつもりがあるとは、考えていなかったわ。

家族になりたい、皆と仲良くなるためにやる気を見せる、と聞いていたから。

お金は二の次で、周りに溶け込もうとしているんだと思っていたわ。」

愛こんにゃく家のお母さんは、弟嫁その二に対する見方を変えた。

「ごめんなさいね。
私の知り合いを使って、金儲けを考えるような娘さんと家族にはなれない。

あなたの思うように稼げる仕事が見つかるといいわね。」
と愛こんにゃく家のお母さんは、親友の娘という弟嫁その二を突き放した。

良い嫁だと思っていた行動が、家族として仲良くなりたいからではなく、義家族の伝手で稼ぎたいという思いが絡んでいたと知ったからだな。

弟嫁その二は、愛こんにゃく家に近づくために、愛こんにゃく家のお嫁さんとして安くこきつかわれている、と不満を抱えていながら、騒がなかったということかな。

弟嫁その二のスパイ要素は、どこへ?

「弟嫁その二は、本国から給料をもらっていなかったのかな?」

「稼ぐためには、まず投資です。
投資した分以上を回収する予定でした。

お義母さんに邪魔されて、これっぽっちも回収できませんでした。」
と弟嫁その二は、キリッとした表情で、義実家での不満をオレに訴えている。

投資という単語が聞こえたぞ?

スパイが投資するのは、老後を考えたら堅実な生き方だけど。

稼ぐための投資?

博打みたいに聞こえるのは、気のせいかなー。

「弟嫁その二は、スパイとして支給されていた活動費用を全て、スパイとは無関係なところに注ぎ込んで、とかしたということかなー。

スパイするための費用を自分で捻出しないといけなくなったのかな?」

オレが、確認のための質問を投げてみると。

「旦那の稼ぎに余裕があれば、私は働かなくても済んだんです。」
と弟嫁その二は、弟その二を見ないで、爪を噛んだ。

弟その二の稼ぎが良ければ、弟その二の稼ぎからスパイ活動に充当したのに、と、弟嫁その二は言っているよな。

弟その二は、弟嫁その二の台詞の衝撃から立ち直れそうにない。

スパイ云々以前に、弟嫁その二は、社会人として、アウトだとオレは思うぞ。

本業のお金を副業に全額突っ込んでとかす行いが発覚したら、どのみち、本国に帰っても無事ですむかな。

帰れない弟嫁その二は、マウンテン王国からの二重スパイの誘いを断らないかもしれないなー。

「あなたがスパイになったことを、あなたのお母さんは知っているの?

あなたにスパイを選ばせるようなお母さんには見えなかったけれど。」
と愛こんにゃく家のお母さん。

愛こんにゃく家のお母さんは、人情の世界で生きているとオレは思う。

愛こんにゃく家のお母さんは、家族としては突き放しても、親友の娘としての情から弟嫁その二を心配している。

「私には本業があります。

私は兼業スパイだから、お母さんは心配していませんでした。

兼業スパイは、臨時収入が入っておいしいから、副業としては、珍しくありません。

本業だけでは厳しいときもありますから、保険をかけるなら、兼業スパイが一番です。

専業スパイじゃないから危ないことはありません。」
と弟嫁その二。

スパイに、兼業と専業?

びっくりついでに。

弟嫁その二は、愛こんにゃく家のお母さんとの会話でスパイだと自白したぞ?

愛こんにゃく家のお母さんには、容疑者から自白を引き出す刑事の資質があるのかもしれないなー。
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