《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

330.目の前にお金が積んであっても、仕事で扱うお金は、自分のお金じゃないので、使ってはいけません。サーバル王国の王女様に提案をしてみます。

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ここにきて、大公妃予算の横領の根っこにある部分がやっと判明したんだけどさ。

大公妃予算の横領は、王女様が投じた私財が先にあった。

サーバル王国の王女様からな無償の援助に応えようとしたんだろう、ケレメイン大公家の使用人が。

ケレメイン大公家の大公妃予算を使ってなー。

王女様に感謝したり、王女様にお礼したいからといってさ。

ケレメイン大公家の使用人が、ケレメイン大公家の大公妃予算をどうするか決める理由にはならないよな。

ケレメイン大公家の大公妃予算の用途を使用人が決める権限はないんだから。

ケレメイン大公家に勤務してきた期間や経験に関係なく、使用人である以上、大公妃であるオレの決裁がおりていない買い物に、予算を注ぎ込むことはできないことくらい、分からないわけがない。

オレ憎し、サーバル王国の王女様可哀想、という感情と、これまでの経験から、ケレメイン大公家の使用人は判断を誤ったんだろうなー。

クロードが独り身のときは、家内を統括する女主人がいなかった。

クロードが独身時代。
ケレメイン公爵家に代々仕えてきた使用人による、ケレメイン公爵家での裁量の自由度は高かったんじゃないかな?

今は、ケレメイン家の女主人ポジションにオレがおさまっている。

オレが、ケレメイン公爵クロードの伴侶になり、大公妃におさまった時点で。

オレにお伺いをたてにきて、オレに決裁してもらわないと、使用人では、お金を動かせない場面もあったと思うんだけどなー。

今の今まで、一人もお伺いに来なかった。

オレは、大公妃予算というものがあることを、そもそも知らされていなかったぞ。

クロードは、大公妃予算があることを知っていた。

生粋の貴族のクロードは、大公妃予算の存在をオレが知らなかったことに驚いていた。

オレは生粋の庶民だから、自分の稼ぎでやり繰りするので、予算ありきの生き方を知らないんだ、とクロードに説明したけどさ。

庶民は、手元にある、自分のお金で生活しようとするんだよ。

仕事で扱っているお金は、会社やお客様のお金だったりするから、目の前に積まれても、使わないもんなんだよ。

大量にあろうと、自分のお金じゃないからな。

使用人が自分の懐から、お金を出して、王女様に感謝をあらわしていれば、横領にはならなかった。

『大公妃予算は、元々、王女様に使われるはずだったんだから。』
という思いが、ケレメイン公爵領にいたケレメイン公爵家の使用人と、王女様の共通認識としてあったとしても。

現実の王女様は、ケレメイン公爵クロードの伴侶になっていないし、ケレメイン大公妃にもなっていなかった。

外国の王女様に、オレのための予算を注ぎ込んだら、横領にしかならない。

王女様もケレメイン公爵家の使用人も、現実を見るより、現実にならなかった未来を追いかけ、現実に引き寄せようとして、失敗した。

大公妃予算は、ケレメイン大公家の大公妃のための予算だから、使用人と王女様が何を思っても、勝手に使ってはいけない。

横領の件と、サーバル王国の王女様の個人的援助の件は切り離して、援助の件にお礼を言った。

非公式な、この場での、大公妃であるオレからだけのお礼。

オレが王女様にできる最大限の感謝の伝え方。


ここが日本なら。
オレは、お礼を言って、援助に気づかず申し訳ないと謝罪をしただろうな。

横領の罪を犯したのは、ケレメイン大公家の使用人。

王女様を横領の罪に問うことはできないからさ。

今オレがいる場所は、日本じゃない。

今のオレは、一般人じゃない。

王女様も、オレと王女様の立場を分かっている。

オレも王女様も、国を背負う者同士、簡単に相手に謝罪してはいけない、許してもいけない。

オレが非公式な場だから、と言って、オレ一人で感謝の意をあらわした意味を王女様も理解している。

ケレメイン大公クロードが、王女様自身に直接、王女様への感謝を伝えることはない、ということ。

ケレメイン大公クロードとケレメイン大公国の名に、瑕疵という傷をつけないために。

クロードを初恋と定めた王女様の恋は、クロードに知られることなく、本日、終わりを迎えた。

失恋したての王女様に、どんな提案をしようかな?

愛こんにゃく家とこんにゃくのフォーリンラブの瞬間は、さすがに話せない。

こんにゃくが、愛こんにゃく家を体でおとしたんだ、なんてさ。

「王女様。
サーバル王国の外交団の帰国前に結婚式が一つあるから、王女様の意見を聞いてみたいんだ。」

「結婚式について、私に聞くの、ずべし。」
と涙がストップした王女様。

「オレの直属の部下の愛こんにゃく家が、ケレメイン大公国の威信をかけて、これから結婚式をあげる。

愛こんにゃく家とこんにゃくと愛こんにゃく家の家族と女神様が満足して、ケレメイン大公国として、満点を叩き出せる式典にしたい。

王女様、結婚式について詳しいなら、提案を出してくれないかな?

採用するしないは、こちらで判断するけれど。」

王女様の涙は、オレの提案を聞いているうちに、乾いていく。

「愛こんにゃく家、こんにゃく、女神様?ずべし。」
と王女様。
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