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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
329.ケレメイン公爵の伴侶だったオレは、ケレメイン公爵領へのサーバル王国の王女様の献身をなかったことにはしません。
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オレが、公爵の伴侶としてこのケレメイン公爵領に足を踏み入れる前。
魔王による消失により、クロードのご両親、ケレメイン公爵夫妻は、突然姿を消した。
唯一の息子クロードは、引き継ぎをすることもままならぬ状態で、公爵位を継いだ。
マウンテン王国が魔王による消失に怯え、疲弊する中、女神様により神子様カズラくんが召喚された。
その神子様カズラくんは、ケレメイン公爵クロードを英雄に選び、英雄となったクロードは、神子様カズラくんと魔王を打ち倒した。
英雄に選ばれなくても、魔王による消失で、ご両親が担ってきた国の仕事に、引き継ぎなしで関わることになったクロードは、毎日が多忙だった。
魔王を打ち倒した英雄となったクロードは、マウンテン王国の国王陛下の策謀で孤立化し、職務に忙殺されるあまりに、ケレメイン公爵家の当主としてとれる仕事の時間が削られていった。
ケレメイン公爵家の当主クロードは、ケレメイン公爵としての指示を出さないまま、ケレメイン公爵領とは音信不通になって、改善の見込みは立っていなかった。
そんな中で、打開策を、と考えたケレメイン公爵領の文官が、藁にも縋る思いで頼ってきたのが、公爵の伴侶の肩書きを持ち、異世界転移してきたオレの頭脳。
オレが、ケレメイン公爵領に来て、復興のためにあれこれ考えて丸投げした当時のケレメイン公爵領。
あの時点で、クロードの承認なしで動かせる予算は、まだ残っていたのかな?
いくらも残っていなかったんじゃないかな。
お金がかかるのは、復興費用だけ、というわけではないから。
予算があっても、決裁できる人がいなかったら、お金は動かせない。
当時のオレは、復興のための政策を出して満足していた。
今まで、気づかなかった。
為政者として、オレは、考えが足りていなかったな。
ケレメイン公爵領で、復興の政策を打ち出したとき。
公爵の伴侶だったけれど、名ばかりの伴侶だったオレには、公爵領のお金を公爵領のために動かす決裁権はなかった。
オレの政策を実行に移すためのお金は、どこから調達したのかな?
サーバル王国から、国単位の援助がケレメイン公爵領にあれば、さすがに、マウンテン王国の国王陛下は気づいて、阻止したと思うんだよな。
ケレメイン公爵領への援助は、サーバル王国の王女様の私財からだったんじゃないのかな。
王女様は、ケレメイン公爵領の復興のために、私財を投じていたんじゃないのかな。
私財なら、王女様自身が決裁できる。
将来の旦那の笑顔と、領民の今のために。
王女様がクロードの隣で、伴侶として笑い合う未来があったなら、結婚前の苦労は報われたよな。
王女様が、将来の伴侶を支えていることを誰にも匂わすことなく、黙って支え続けたなら。
王女様は、糟糠の妻そのものだよな。
公爵領にいた公爵家の使用人にとってのクロードの糟糠の妻は、オレじゃない。
合点がいった。
今は、非公式の場。
ケレメイン公爵だったクロードは、この場にいない。
ここには、サーバル王国の王女様と、ケレメイン公爵の伴侶だったオレだけ。
だから。
「王女様。
ここは、非公式の場だ。
オレが、この件に触れるのは、一度きり。
ケレメイン公爵家の伴侶としてこの地に来たとき、王都よりも遥かに穏やかな土地だった。
マウンテン王国は、魔王の消失による復興から立ち直るのに、足踏みしている状態だったにも関わらず。」
オレは、いったん言葉を切った。
王女様は、オレを見ている。
きっと、王女様は、オレじゃなく、クロードから、次の言葉を聞きたかっただろう。
「サーバル王国の王女殿下のケレメイン公爵領へのこれまでの献身に対し、ケレメイン大公妃ヒサツグは、最上級の感謝をあらわす。」
ごめんな、王女様、お礼が遅くなって。
あとさ。
クロードは、呼ばないぞ。
「クロード様から、お聞きしたかった、ずべし。」
王女様は、涙が溜まる目を見開いて、涙を一滴たりとも溢そうとしなかった。
初恋の男と生きる目的のために、王女様は、これまで生きてきたんだよな。
オレは、王女様の初恋を叶えさせてあげることは、しない。
クロードとクロードの大切なもののために、今までありがとう。
王女様がクロードを想ってきた歳月も、想いの深さも。
オレは、決して、軽んじない。
王女様の思い描いてきた未来とはかすりもしないけれど、これからオレがする提案を聞いて、オレの手を取ってくれることをオレは願っている。
この後。
愛こんにゃく家とこんにゃくと、愛こんにゃく家の家族と女神様が喜び、ケレメイン大公国の国威掲揚間違いなしの、国家行事があるんだけど。
王女様の新しい第一歩として、興味はないかな?
魔王による消失により、クロードのご両親、ケレメイン公爵夫妻は、突然姿を消した。
唯一の息子クロードは、引き継ぎをすることもままならぬ状態で、公爵位を継いだ。
マウンテン王国が魔王による消失に怯え、疲弊する中、女神様により神子様カズラくんが召喚された。
その神子様カズラくんは、ケレメイン公爵クロードを英雄に選び、英雄となったクロードは、神子様カズラくんと魔王を打ち倒した。
英雄に選ばれなくても、魔王による消失で、ご両親が担ってきた国の仕事に、引き継ぎなしで関わることになったクロードは、毎日が多忙だった。
魔王を打ち倒した英雄となったクロードは、マウンテン王国の国王陛下の策謀で孤立化し、職務に忙殺されるあまりに、ケレメイン公爵家の当主としてとれる仕事の時間が削られていった。
ケレメイン公爵家の当主クロードは、ケレメイン公爵としての指示を出さないまま、ケレメイン公爵領とは音信不通になって、改善の見込みは立っていなかった。
そんな中で、打開策を、と考えたケレメイン公爵領の文官が、藁にも縋る思いで頼ってきたのが、公爵の伴侶の肩書きを持ち、異世界転移してきたオレの頭脳。
オレが、ケレメイン公爵領に来て、復興のためにあれこれ考えて丸投げした当時のケレメイン公爵領。
あの時点で、クロードの承認なしで動かせる予算は、まだ残っていたのかな?
いくらも残っていなかったんじゃないかな。
お金がかかるのは、復興費用だけ、というわけではないから。
予算があっても、決裁できる人がいなかったら、お金は動かせない。
当時のオレは、復興のための政策を出して満足していた。
今まで、気づかなかった。
為政者として、オレは、考えが足りていなかったな。
ケレメイン公爵領で、復興の政策を打ち出したとき。
公爵の伴侶だったけれど、名ばかりの伴侶だったオレには、公爵領のお金を公爵領のために動かす決裁権はなかった。
オレの政策を実行に移すためのお金は、どこから調達したのかな?
サーバル王国から、国単位の援助がケレメイン公爵領にあれば、さすがに、マウンテン王国の国王陛下は気づいて、阻止したと思うんだよな。
ケレメイン公爵領への援助は、サーバル王国の王女様の私財からだったんじゃないのかな。
王女様は、ケレメイン公爵領の復興のために、私財を投じていたんじゃないのかな。
私財なら、王女様自身が決裁できる。
将来の旦那の笑顔と、領民の今のために。
王女様がクロードの隣で、伴侶として笑い合う未来があったなら、結婚前の苦労は報われたよな。
王女様が、将来の伴侶を支えていることを誰にも匂わすことなく、黙って支え続けたなら。
王女様は、糟糠の妻そのものだよな。
公爵領にいた公爵家の使用人にとってのクロードの糟糠の妻は、オレじゃない。
合点がいった。
今は、非公式の場。
ケレメイン公爵だったクロードは、この場にいない。
ここには、サーバル王国の王女様と、ケレメイン公爵の伴侶だったオレだけ。
だから。
「王女様。
ここは、非公式の場だ。
オレが、この件に触れるのは、一度きり。
ケレメイン公爵家の伴侶としてこの地に来たとき、王都よりも遥かに穏やかな土地だった。
マウンテン王国は、魔王の消失による復興から立ち直るのに、足踏みしている状態だったにも関わらず。」
オレは、いったん言葉を切った。
王女様は、オレを見ている。
きっと、王女様は、オレじゃなく、クロードから、次の言葉を聞きたかっただろう。
「サーバル王国の王女殿下のケレメイン公爵領へのこれまでの献身に対し、ケレメイン大公妃ヒサツグは、最上級の感謝をあらわす。」
ごめんな、王女様、お礼が遅くなって。
あとさ。
クロードは、呼ばないぞ。
「クロード様から、お聞きしたかった、ずべし。」
王女様は、涙が溜まる目を見開いて、涙を一滴たりとも溢そうとしなかった。
初恋の男と生きる目的のために、王女様は、これまで生きてきたんだよな。
オレは、王女様の初恋を叶えさせてあげることは、しない。
クロードとクロードの大切なもののために、今までありがとう。
王女様がクロードを想ってきた歳月も、想いの深さも。
オレは、決して、軽んじない。
王女様の思い描いてきた未来とはかすりもしないけれど、これからオレがする提案を聞いて、オレの手を取ってくれることをオレは願っている。
この後。
愛こんにゃく家とこんにゃくと、愛こんにゃく家の家族と女神様が喜び、ケレメイン大公国の国威掲揚間違いなしの、国家行事があるんだけど。
王女様の新しい第一歩として、興味はないかな?
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