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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
328.サーバル王国の王女様とオレは、一人の男を支え合っていた。互いに見えない場所から、互いの存在を知らされないままに。
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オレは、王女様の涙がひきつつあるのを確認してから尋ねてみた。
「王女様が知っているクロードは、どんな男だったのかな?」
オレの知らない、公爵子息だったクロード。
クロードの公爵子息時代を知る人で、オレに公爵子息時代のクロードの輝いている姿を語る人は、今、オレの周囲には一人もいない。
クロードの幸せな公爵子息時代を知る人は、オレをクロードの人生の汚点だと考えて、オレに近づいてこないからな。
「クロード様は、優しくカッコよく、どこにいても、何をしていても、誰といても絵になって、ずべし。
公爵様と公爵夫人と公爵領内の至るところにお出かけされて、領民の生活を視察されておいでで、ずべし。」
と王女様。
王女様は、クロードに会って直接話したことはなくても、遠目に姿を見ることはあったんだな。
この地で。
ケレメイン公爵領で。
オレがくる前から。
オレは、今、一つの可能性に思い至った。
オレが日本からこの世界に来て、ケレメイン公爵の伴侶として、公爵領の立て直しを相談されるまで、公爵領の人は、クロードという公爵家当主不在の中で、ぎりぎり持ちこたえてきたと聞いている。
どうやって、持ちこたえてこれたんだ?
自国の国王陛下から危険視されて背中から刺されるかもしれない事態に陥っていたケレメイン公爵クロード。
オレがこの世界に来たときのクロードは、マウンテン王国の貴族社会で孤立無援だった。
マウンテン王国の国王陛下は、ケレメイン公爵であるクロードにケレメイン公爵領の復興の指示を出す時間を作らせなかったんだろうな。
ケレメイン公爵クロードを追い込むために。
意図的に。
公爵とはいえ、自国の国王陛下に睨まれ、貴族社会から総スカンのケレメイン公爵家に援助する人が、オレが来る前のマウンテン王国にいたかな?
マウンテン王国にはいなかったと思う。
オレは、一人も思いつかない。
ケレメイン公爵クロード自身が、ケレメイン公爵領の状況を把握していなかったからな。
ケレメイン公爵家の使用人は、マウンテン王国の国王陛下の妨害で、ケレメイン公爵クロードに連絡をとることができずにいた。
ケレメイン公爵領の救世主は、どこからやってきた?
答えは、オレの目の前にある。
サーバル王国だ。
サーバル王国の王女様がケレメイン公爵領の救世主。
オレの目の前では決して涙を流すまいと、涙をこらえているサーバル王国の王女様が、ケレメイン公爵領への援助の手配した。
国境を越えて。
だから、公爵家にいた使用人は、王女様を信頼している。
マウンテン王国のケレメイン公爵家が、ケレメイン公爵領が困っていたときに、助けてくれたのは、サーバル王国の王女様。
王女様たった一人の意思で、援助がなされたわけじゃない。
王女様の支援の後ろには、サーバル王国の国策があるんだろうけれど。
援助にどんな意図があっても、王女様が動いたから、ケレメイン公爵領への援助は実現した。
オレが、公爵の伴侶として、ケレメイン公爵領に来たときも、王女様は、ケレメイン公爵領にいたかもしれない。
オレと王女様がかち会わないように、ケレメイン公爵領の担当者がオレの行き先をコントロールしていても、不思議じゃない。
オレは、公爵の伴侶として公爵領内の産業の立て直しの政策を打ち出した。
でも、政策を打ち出しただけでは、実行に移せない。
政策のための予算は、どこから捻出した?
当時のオレは、予算について指示をしていないんだ。
人とモノが動くときは、お金が動く。
あのときのオレは、政策を打ち出して、実行を担当者に丸投げしていたけれど。
お金のことは、頭になかった。
今のオレが、お金の問題に気付いたのは、今だから。
大公妃予算を横領されて、お金の使い方を突き詰めて考えるようになったからだ。
「王女様が知っているクロードは、どんな男だったのかな?」
オレの知らない、公爵子息だったクロード。
クロードの公爵子息時代を知る人で、オレに公爵子息時代のクロードの輝いている姿を語る人は、今、オレの周囲には一人もいない。
クロードの幸せな公爵子息時代を知る人は、オレをクロードの人生の汚点だと考えて、オレに近づいてこないからな。
「クロード様は、優しくカッコよく、どこにいても、何をしていても、誰といても絵になって、ずべし。
公爵様と公爵夫人と公爵領内の至るところにお出かけされて、領民の生活を視察されておいでで、ずべし。」
と王女様。
王女様は、クロードに会って直接話したことはなくても、遠目に姿を見ることはあったんだな。
この地で。
ケレメイン公爵領で。
オレがくる前から。
オレは、今、一つの可能性に思い至った。
オレが日本からこの世界に来て、ケレメイン公爵の伴侶として、公爵領の立て直しを相談されるまで、公爵領の人は、クロードという公爵家当主不在の中で、ぎりぎり持ちこたえてきたと聞いている。
どうやって、持ちこたえてこれたんだ?
自国の国王陛下から危険視されて背中から刺されるかもしれない事態に陥っていたケレメイン公爵クロード。
オレがこの世界に来たときのクロードは、マウンテン王国の貴族社会で孤立無援だった。
マウンテン王国の国王陛下は、ケレメイン公爵であるクロードにケレメイン公爵領の復興の指示を出す時間を作らせなかったんだろうな。
ケレメイン公爵クロードを追い込むために。
意図的に。
公爵とはいえ、自国の国王陛下に睨まれ、貴族社会から総スカンのケレメイン公爵家に援助する人が、オレが来る前のマウンテン王国にいたかな?
マウンテン王国にはいなかったと思う。
オレは、一人も思いつかない。
ケレメイン公爵クロード自身が、ケレメイン公爵領の状況を把握していなかったからな。
ケレメイン公爵家の使用人は、マウンテン王国の国王陛下の妨害で、ケレメイン公爵クロードに連絡をとることができずにいた。
ケレメイン公爵領の救世主は、どこからやってきた?
答えは、オレの目の前にある。
サーバル王国だ。
サーバル王国の王女様がケレメイン公爵領の救世主。
オレの目の前では決して涙を流すまいと、涙をこらえているサーバル王国の王女様が、ケレメイン公爵領への援助の手配した。
国境を越えて。
だから、公爵家にいた使用人は、王女様を信頼している。
マウンテン王国のケレメイン公爵家が、ケレメイン公爵領が困っていたときに、助けてくれたのは、サーバル王国の王女様。
王女様たった一人の意思で、援助がなされたわけじゃない。
王女様の支援の後ろには、サーバル王国の国策があるんだろうけれど。
援助にどんな意図があっても、王女様が動いたから、ケレメイン公爵領への援助は実現した。
オレが、公爵の伴侶として、ケレメイン公爵領に来たときも、王女様は、ケレメイン公爵領にいたかもしれない。
オレと王女様がかち会わないように、ケレメイン公爵領の担当者がオレの行き先をコントロールしていても、不思議じゃない。
オレは、公爵の伴侶として公爵領内の産業の立て直しの政策を打ち出した。
でも、政策を打ち出しただけでは、実行に移せない。
政策のための予算は、どこから捻出した?
当時のオレは、予算について指示をしていないんだ。
人とモノが動くときは、お金が動く。
あのときのオレは、政策を打ち出して、実行を担当者に丸投げしていたけれど。
お金のことは、頭になかった。
今のオレが、お金の問題に気付いたのは、今だから。
大公妃予算を横領されて、お金の使い方を突き詰めて考えるようになったからだ。
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