《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

327.クロードと結婚したオレと、クロードと結婚したかったサーバル王国の王女様。王女様の感情の火薬庫に火がつきました。

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オレの『王女様は、結婚式に詳しいのかな?』
は、王女様の感情の火薬庫に火を付けた。

爆発した、王女様が。

男の庇護欲を誘うか弱そうモードでも、下々に相対する王女モードでもない、鬼女が降臨した。

うん、オレの言葉選びがまずかった。

ごめん。

国の行事になる、愛こんにゃく家とこんにゃくの結婚式を格式高い式にするために。

どういうポイントを外さない結婚式にすればいいか、目の前にいる王女様は詳しそうかもしれないな、と考えていたら、結婚式について聞きたいという気持ちで、ストレートに言葉に出してしまった。

他人の金で結婚式の準備をする王女様だけどさ。

結婚式の準備をしたのに、結婚式が行われることはなくなった女性にかけるにしては、配慮にかけた言葉だったな。

「結婚式にかける情熱がどれほどか理解できない男など、結婚するものではない、ずべし。

結婚式をあげてこそ、正式な夫婦になる、ずべし。」
と怒れる王女様。

うん?

この世界では、入籍と結婚式は、同日なのかなー?

結婚式で祝福されながらの入籍って、ロマンチックだなー。

オレは、入籍してから、結婚式をあげたぞ。

結婚式の途中で、マウンテン王国からの邪魔者を見つけて、予定した式典が変更になったりしたなー。

懐かしい。

オレとクロードが結婚式をあげることにしたのは、結婚式も済ませていないのに、初夜はしない、とオレがクロードとの初夜を引き延ばしたからだからなー。

オレにとっての結婚式は、夫婦生活の解禁の序章。

清らかな関係に終止符を打ち、オトナの時間へようこそ、みたいな。

クロードもオレも、結婚式というきっかけがなければ、互いに一歩踏み出せなかったから、結婚式はして良かったな。

「結婚式の出来栄えは、その先に続く花嫁の人生を左右する、ずべし。」
と鬼気迫る表情の王女様。

花嫁の人生を左右する?

「王侯貴族の結婚式は、社交なのかな?」

「結婚式は、人生最大の社交ずべし。

どんな家のどんな相手と、どのような結婚式を挙げたかは、女性の社交で語り継がれる、ずべし。」

今さらながら、オレとクロードは、ケレメイン公爵領で、ケレメイン公爵と公爵の伴侶としての結婚式を挙げておいて、正解だったんだな。

オレが、オレとクロードの結婚式を思い出していると。

「娘を持つ親は、娘が物心つく頃から、結婚式について娘自身に考えさせる、ずべし。」
と王女様。

一瞬。
王女様は、全ての感情を押し殺したかのように静かになった。

「わたくしは、クロード様との結婚のお話に心を踊らせ、サーバル王国の王女として、人々の記憶だけではなく、歴史に名を残すほどの結婚式を挙げるために、結婚式の研究を重ねた、ずべし。

クロード様と結婚式を挙げる日まで首を長くして、手抜かりがないように準備した、ずべし。

それなのに、わたくしの結婚式は、ずべし。

わたくしは、このような姿に成り果て、ずべし。

わたくしのクロード様に、わたくしは、花嫁として一度も認められないまま、ずべし。」
と王女様は怒り、潤む目から、涙がこぼれないように、何度も瞬きをした。

おおう。

クロード以外との結婚を目指していたら、王女様はその研究をお披露目する場があったな、きっと。

オレが、この件で王女様に言葉をかけるのは、お門違いだから、オレは何も言わない。

オレは、涼しい顔で、王女様に対峙する。

クロードと王女様が一緒になることは、万が一の可能性もない、と理解して、王女様自身で踏ん切りをつけてほしい。

王女様は、ケレメイン大公国に入国して、初恋の人だったクロードに会えるのを心待ちにしていたんだろうな。

女神様の裁定が下った後も、クロードが、王女様に会いに来る希望を持ち続けてきたんだよな、今日まで。

王女様に囁く言葉を携えたクロードは、ついぞ、姿を見せなかった。

初対面からずっと、クロードが、王女様を歓迎しなかった。

王女様のケレメイン大公国滞在中、クロードは一度も王女様に会いに来ず、ご機嫌伺いの使者も来ない。

とどめに。
クロードに望まれて伴侶になったオレが、非公式だと言って、一人で王女様に会いに来た。

王女様は、クロードへの初恋が実らないのは不条理だと怒りながらも、初恋が実らないことを理解したんだ。
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