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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
325.オレは、覚悟がないまま、決断するのを避けたいんです。為政者として権力を持ち、その権力を行使し、人の命を左右する覚悟がまだないのです。
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腹に一物どころじゃない、サーバル王国の人達を前に、オレは考えあぐねている。
日本で生きてきた経験と常識を捨てて、この世界の常識で物事を判断することに、今のオレは抵抗がある。
日本にいたときも、殺人は起きていた。
日本では、殺人は、良くないこと、という認識で、人の命は、簡単に失って良いものじゃなかった。
従わない相手、邪魔な相手を消してしまうことを、目的を達成するための最短で最善だとする考え方に、オレは慣れることができていない、今はまだ。
この先、慣れることができるか、も、定かじゃない。
でも。
覚悟がないオレのままで、人の命を左右する決断をするのは避けたい。
覚悟がないまま、決めてしまったら。
きっと、オレは言い訳を探し続けてしまう。
時間が経ってから。
オレ自身の判断を反省することになるのは、アリ。
判断したときの状況と、時間経過後の状況に齟齬が出ないことの方が貴重だと思うんだよな。
先見の明があったと自慢していいくらいのさ。
今のオレは、大公妃として手探りで仕事をしている。
軌道修正を繰り返しながら、望むところへ持っていく。
人の命は、決断したら、取り返しがつかない。
オレは、ケレメイン大公国の大公妃として、権力を持っている。
オレは、権力者だ。
オレが権力者として振る舞わない選択肢は、オレにはない。
ケレメイン大公国の大公妃という地位をオレ自ら下げることはしない。
今のところ、世界各国とは、ぎりぎりの均衡状態を保っている状態。
各国の駆け引きと、英雄クロードが国主として君臨していることで、ケレメイン大公国の独立は保たれている。
ケレメイン大公妃であるオレが、ケレメイン大公妃の地位を下げるような振る舞いをすれば、危うい均衡はすぐに崩れてしまう。
均衡を崩さないために。
オレは、どんなときも、ケレメイン大公妃として当然でござい、という顔で、堂々と振る舞う必要がある。
命を狙い続けてくる者を消せば、命を狙われないという理屈は理解できても、オレに人を殺せるか、間接的にでも、直接的にでも、人を殺す決断をして、オレが平気でいられるか、は、別物なんだよな。
どんな人でも、その人の命を消す行為をしてしまえば、今のオレは平気でいられない。
人に狙われるのは嫌だけど、人の命をとるのも嫌だなんて、綺麗事だと、自分でも思う。
でも。
オレ自身で気をつけていかなきゃといけない。
オレ自身の判断の甘さで、オレの心のバランスを失う事態は、なんとしても避けたい。
オレが倒れたら、クロードが一人で立つことになるからな。
オレは、絶対に倒れるわけにはいかない。
為政者のくせに。
為政者だから。
大公妃であるオレの発言には力がある。
一度、口から出した言葉は、取り消せない。
一度、口から出した言葉は、実現されなくてはならない。
権力を持ち、権力を使うこと。
人の命を支配下に置く覚悟が、今のオレには、まだ足りない。
だから。
サーバル王国の人を前にして、人の命をとらないで解決する方法がないか、と考えている。
口に出してしまえば、決定事項だから。
何か、思いつきたい。
日本で生きてきた経験と常識を捨てて、この世界の常識で物事を判断することに、今のオレは抵抗がある。
日本にいたときも、殺人は起きていた。
日本では、殺人は、良くないこと、という認識で、人の命は、簡単に失って良いものじゃなかった。
従わない相手、邪魔な相手を消してしまうことを、目的を達成するための最短で最善だとする考え方に、オレは慣れることができていない、今はまだ。
この先、慣れることができるか、も、定かじゃない。
でも。
覚悟がないオレのままで、人の命を左右する決断をするのは避けたい。
覚悟がないまま、決めてしまったら。
きっと、オレは言い訳を探し続けてしまう。
時間が経ってから。
オレ自身の判断を反省することになるのは、アリ。
判断したときの状況と、時間経過後の状況に齟齬が出ないことの方が貴重だと思うんだよな。
先見の明があったと自慢していいくらいのさ。
今のオレは、大公妃として手探りで仕事をしている。
軌道修正を繰り返しながら、望むところへ持っていく。
人の命は、決断したら、取り返しがつかない。
オレは、ケレメイン大公国の大公妃として、権力を持っている。
オレは、権力者だ。
オレが権力者として振る舞わない選択肢は、オレにはない。
ケレメイン大公国の大公妃という地位をオレ自ら下げることはしない。
今のところ、世界各国とは、ぎりぎりの均衡状態を保っている状態。
各国の駆け引きと、英雄クロードが国主として君臨していることで、ケレメイン大公国の独立は保たれている。
ケレメイン大公妃であるオレが、ケレメイン大公妃の地位を下げるような振る舞いをすれば、危うい均衡はすぐに崩れてしまう。
均衡を崩さないために。
オレは、どんなときも、ケレメイン大公妃として当然でござい、という顔で、堂々と振る舞う必要がある。
命を狙い続けてくる者を消せば、命を狙われないという理屈は理解できても、オレに人を殺せるか、間接的にでも、直接的にでも、人を殺す決断をして、オレが平気でいられるか、は、別物なんだよな。
どんな人でも、その人の命を消す行為をしてしまえば、今のオレは平気でいられない。
人に狙われるのは嫌だけど、人の命をとるのも嫌だなんて、綺麗事だと、自分でも思う。
でも。
オレ自身で気をつけていかなきゃといけない。
オレ自身の判断の甘さで、オレの心のバランスを失う事態は、なんとしても避けたい。
オレが倒れたら、クロードが一人で立つことになるからな。
オレは、絶対に倒れるわけにはいかない。
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為政者だから。
大公妃であるオレの発言には力がある。
一度、口から出した言葉は、取り消せない。
一度、口から出した言葉は、実現されなくてはならない。
権力を持ち、権力を使うこと。
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だから。
サーバル王国の人を前にして、人の命をとらないで解決する方法がないか、と考えている。
口に出してしまえば、決定事項だから。
何か、思いつきたい。
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