《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
321 / 667
第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

321.サーバル王国の王女様は、首振り人形じゃないようです。オレは、嘘つき扱いされています。オレは女神様の裁定理由に含みを持たせたいんです。

しおりを挟む
ここらで、ジャブをうってみるかな。

「王女様。
オレとクロードがいる前で、サーバル王国の国王陛下夫妻を代表とするサーバル王国の外交団と王女様が、ケレメイン大公国の地に足をつけたときのことを思い出せ。

オレとクロードは、初めましての王女様に、王女様を招待していないこと、呼んでいないから速やかに帰国するように、と王女様自身に伝えたよな。

なぜ帰らなかった?」

オレは威圧的にならないように気をつけながら、王女様に問いかけた。

「わたくしを招待していないなどと、まだそんな嘘をつく、ずべし。」
と王女様。

王女様は、サーバル王国の同行者からのトスがあがりそうにないことを察して、自身の言葉で話すことにしたようだ。

打ちひしがれて、か弱そうだった風情は、すっかり鳴りをひそめている。

「嘘は、一つもないんだけどなー。なんで嘘だと思うのかな?」

サーバル王国の人は、王女様も含めて、オレが嘘つきだと思っているようだぞ。

嘘つきなオレの言うことは信用できないから、女神様の出方をうかがっていたんだなー。

失礼極まりない。

女神様がオレの話を否定しないことから、オレが、嘘をついていないと察したサーバル王国の同行者は、今後のプランを構築中かな?

オレの話したことは、
『サーバル王国の王女様の押し売りは勘弁してください。

王女様には面と向かって、お宅は不要だよ、お引き取りください、と伝えましたよね。

女神様の結んだ縁があるから、ケレメイン大公クロードと王女様の結婚は、王女様が、ケレメイン大公国に来ても来なくても、最初からなかったんです。

断っているのに、自信満々に居座った王女様に対して、ケレメイン大公夫妻はドン引きしていました。』
だからな。

オレの狙いは、女神様とオレとクロードへの印象のズレを利用して、女神様が、裁定を下した理由に、含みを持たせること。

サーバル王国の人には、女神様が結んだクロードとオレの縁を、人が人の都合で切り離そうとしたから女神様の裁定が下ったんだ、と認識してもらいたいんだよなー。

女神様の真実は、女神様のお気に入りの英雄クロードへの扱いが気に食わないから裁定を下した、なんだけどさ。

「わたくしを呼んでいないなど、そんなあからさまな嘘が、いまだに通用するなど、ずべし。

クロード様と結婚し、この国の国母になるわたくしが、クロード様の初めての外交の場に居合わせないなど、あってはならないこと、ずべし。」
と王女様。

王女様は、理由もわからず、神輿に乗せられていたわけではないんだな?

帰れと促されて、頑なに帰らなかったのは、王女様の意地と信念と勝利を疑わない傲慢さのなせるわざかな?

今後のことを考えると、王女様の意思がはっきりしている方が、オレは助かる。

正直なところ、誰かの首振り人形の王女様だったら、ケレメイン大公国として、王女様に友好大使は任せられない。

友好大使は、名誉職だからな。

王女様の下につく実務担当は、ケレメイン大公国の柴犬人。

部下の勤労意欲を低下させるのが、上司の王女様、とか洒落にならない。

柴犬人は、王女様を評価していた。

王女様には、柴犬人の評価を裏切らない仕事をしてもらいたい。

柴犬人は、クロードのご両親が信頼していた使用人だからさ。

柴犬人は、裏切らなければ、一生をケレメイン大公クロードに捧げていてもおかしくなかった使用人だ。

ケレメイン大公家の使用人の中でも、重要な使用人を部下にしている王女様の友好大使としての仕事の成果が、ゼロやマイナスだったら、采配したオレの手腕も問われる。

任命責任で、足を引っ張られるのは、避けないとな。

任命責任を問われないくらいに盤石な地盤がないオレは、地固めが大事。

「オレとクロードは、ケレメイン大公夫妻として、国王陛下ご夫妻をはじめとする既婚者のみを外交団として招待した。

未婚者は誰であろうとケレメイン大公国への入国を断る、という内容にサーバル王国が合意したから、外交団を受け入れた。

大公妃であるオレが直接帰れと言っているにも関わらず、クロードにすり寄ってくる王女様。

王女様を止めない国王陛下ご夫妻。

外交団の団員を既婚者に限定したのに、サーバル王国から来た外交団の団員は、未婚者の方が多かった。

サーバル王国の対応は、ケレメイン大公国を馬鹿にしている、というレベルじゃないぞ。

クロードの初めての外交にいないなんてあり得ない、というのが、ケレメイン大公国に押しかけた王女様の動機なら。

サーバル王国は、ケレメイン大公国を、サーバル王国の属国にしたつもりだったのかな?」

さて、王女様。

オレが王女様の口から聞きたいのは、自己弁護じゃないぞ。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

どうしてこうなった?(ショートから短編枠にしたもの)

エウラ
BL
3歳で魔物に襲われて両親を亡くし、孤児院育ちの黒髪黒目で童顔のノヴァは前世の記憶持ちの異世界転生者だ。現在27歳のCランク冒険者。 魔物に襲われたときに前世の記憶が甦ったが、本人は特にチートもなく平々凡々に過ごしていた。そんなある日、年下22歳の若きSランク冒険者のアビスと一線を越える出来事があり、そこで自分でも知らなかった今世の過去を知ることになり、事態は色々動き出す。 若干ストーカー気味なわんこ系年下冒険者に溺愛される自己評価の低い無自覚美人の話。 *以前ショート専用の枠で書いてましたが話数増えて収拾がつかなくなったので短編枠を作って移動しました。 お手数おかけしますがよろしくお願いいたします。 なお、プロローグ以降、途中まではショートの投稿分をまるっと載せるのでそちらと重複します。ご注意下さい。出来次第投稿する予定です。 こちらはR18には*印付けます。(でも忘れたらすみません)

嫌われものの僕について…

相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。 だか、ある日事態は急変する 主人公が暗いです

どうも、卵から生まれた魔人です。

べす
BL
卵から生まれる瞬間、人間に召喚されてしまった魔人のレヴィウス。 太った小鳥にしか見えないせいで用無しと始末されそうになった所を、優しげな神官に救われるのだが…

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

処理中です...