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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

311.カズラくんと、カズラくんにハリセンチョップされるのが好きな男の人の関係は?会えていない?カズラくんも向こうも、今は忙しいから?今は?

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クロードをおいて、カズラくんに会いに行った。

クロードは、土台を固めて堅実に。

オレは、要所、要所でのファインプレー狙い。

オレは、あくまで大公妃。

統治者は、大公のクロード。

クロードには、クロードの言うことを正しく聞く人がいる。

クロードのために、ケレメインのために、という大義名分を唱えない人はちゃんといた。

声は大きくないけれど、クロードのために、力を尽くしてくれる人達のところへ、クロードは会いにいっている。

カズラくんに差し入れをしながら、サシ飲み。

「お疲れ様。カズラくんは、最近、ハリセンチョップされたい男の人と会えてるかな?

カズラくんには、王女様を離さないでいてくれた件で、臨時ボーナスというか謝礼というか、特別手当を考えている。

カズラくんの希望はあるかな?

完全に希望に添えるとは限らないけれど。」

「ぼくも彼も、今は忙しいときだから。」
とカズラくん。

「カズラくんが忙しいのは分かるけど、ハリセンチョップされたい彼は、何の仕事している人?」

「とある国のスパイだよ。」
とカズラくん。

カズラくんは、平然としている。

「ん?ん?はあい?」

驚き過ぎて、語彙が飛んだぞ、カズラくん。

「カズラくんは、知っていて、付き合い始めたのかな?」

後出しジャンケンじゃなく?

「そりゃ。彼氏の身元くらいは、調べるよ。
彼氏の身元も知らないうちは、デートに行かない。二人で会わない。基本中の基本。」
とカズラくん。

カズラくんらしい、といえば、カズラくんらしい。

カズラくんは、自分を利用させないために万全を期す。

「スパイだって、彼氏から聞いた?」

「違うよ。そろそろ、告白してくるとは思うけれど。」
とカズラくん。

カズラくんが調べて、彼氏がスパイだと判明した?

カズラくんが優秀。

「え?転がしている感じ?」

悠長に構えているけど、カズラくんは、どこまで考えているのかな?

「国に引き上げるタイミングで、ぼくに告白して誘ってくると思うよ。」
とカズラくん。

「誘って、て?」

「ケレメイン大公国を出て、母国で一緒に暮らそうっじゃない?」
とカズラくん。

「それ、受けるのかな?」

カズラくんを縛る気はないけど、カズラくんは、ケレメイン大公夫妻の友人という肩書きだから。

外交的な調整がいる。

オレ個人は、頼れる相手が減るけど、彼氏がスパイと知りつつ付き合っているカズラくんだから、百パーセントの信頼は、なかなか難しい。

カズラくん自身も、オレやケレメイン大公国から頼りにされないように、情報をコントロールして、適正な距離をはかっている。

「受けないよ。
でも、ぼくは彼がほしい。
好きなんだよね。
ぼくに優しくて、仕事ができる男は、貴重。
ぼくの労働の対価として、ヒサツグは、彼を引き抜いてくれる?」
とカズラくん。

カズラくん。オレの顎が外れそうだぞ?

今、各国から派遣されているスパイは、出来るスパイだからな?

裏切りは期待できない。

だから、堂々と真正面から引き抜いてこい、と。

大公妃が、友人のために、友人と恋仲になった外国のスパイを引き抜き。

アリ?アリなのかな?

オレから、特別手当と言い出した手前、カズラくんの彼氏を引き抜かないわけにはいかない案件。

次の外交先は、カズラくんの彼氏の国で決定したなー。

カズラくんには、クロードと王女様の輿入れという密約がなかったかどうかや、ミーレ長官の件など、聞きたいことがてんこ盛り。

頭を切り替えて、話を聞いていこうかな。
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