《本編 完結 続編開始》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第8章 29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、英雄公爵に溺愛されています。

227.オレ、好々爺のお医者さんに説教されました。オレは、自主的に引きこもっているわけではありません。

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オレは、憔悴している。

寝室監禁が始まってから、クロードに会っていない。

今日も会えなかったら、十日目。

二日目に、徹夜向きでないオレの体は、悲鳴をあげた。

三日目、四日目、と寝て過ごした。

クロードは、寝込んでいるオレの様子を見にこなかった。

女神様に会ったオレが寝込んでいたときは、オレが来るなと言っても、扉の前をうろついていたクロード。

なんで、会えるときには、来ないんだ?

五日目のオレは、体調は戻ったものの、会いにこないクロードに文句を言っていた。

心の中で。

部屋に使用人が常駐しているので、心の声を口に出すことはしない。

三人は、オレ付きと話していたけれど、オレが、三人を求めたわけじゃない。

三人をオレにつけると決めたのは、クロードだ。

オレは、使用人がいなくても困らない。

オレの居場所に、他人がいると落ち着かない。

オレは、使用人がいない方が、快適に過ごせる。

クロードは、オレが使用人を使いたがらないことを知っていた。

今まで、オレに、秘書以外の固定の使用人がついていなかったのは、オレが、不要だと押し通し、クロードが、オレの使用人を決めなかったから。

オレは、元の世界では、身分制度に縁がなかったから、自分のことは自分でしないと落ち着かない、と、説明してある。

オレの本音は、誰にも話したことがない。

オレは、大家族の最愛の末っ子と婿入り婚をして義家族と同居している心構え、で、暮らしている。

オレは、身一つで、クロードと結婚した。

オレのいる場所は、日本がない異世界。

オレの家族、友達など、無条件でオレの味方をしてくれる人は、こちらにはいない。

クロードは、マウンテン王国のケレメイン公爵家の若き当主だった。

現在は、ケレメイン大公国の若き大公殿下。

クロードの周囲にいる人は、クロードの味方。

オレが、クロードの伴侶として、クロードを介して会う人は、クロードがオレの味方だから、オレを尊重してくれる。

クロードとオレが蜜月のときは、問題ない。

でも、今回のように。

クロードとオレの意見が対立した場合。

オレの周囲に、オレの味方はいない。

オレの味方になる理由がないから。

クロードの意向を無視してオレの意見を通す人は、いない。

オレが、クロードの言いつけに背かないか、監視しているんじゃないだろうか。

オレ付きの使用人というていで。

そう考えてしまうから、毎日、気が重い。

気が滅入る。

クロードは、待てど暮らせど、帰ってこない。

オレは、毎日、体を磨かれて、夜着を着て、帰ってこないクロードを寝室で待っている。

嫌だ、もう。

こんな生活をするくらいなら、どうにかして、日本に帰ってしまいたい。

オレの元に帰ってこないなら、クロードは、オレがいなくても、暮らしていけるんだろう?

オレがここにいる意味はある?

クロードに会えないのに。

オレは、ここにいなくても、いいんじゃないかな。

オレは、日本に帰っても、いいんじゃないかな。

オレが、クロードの言いつけに従わないと、罰を受けると言うなら、罰を受けてでも、日本に帰ってしまいたい。

罰を受けるなんて、不本意だけど。


クロードに会えないでいるオレに、面会希望者がやってきた。

お医者さんプレイルームを作るときに、監修してくれた好々爺の医者だ。

クロードに会えないことに落ち込んで、元気をなくしていたオレを、好々爺の医者が診察したから、互いに知った仲ではある。

十日目になると、オレは、日本に帰る気持ちを固め、元気を取り戻しつつあった。

好々爺の医者は、元気を取り戻しつつあるオレに会うなり、説教を始めた。

「クロード様にわがままを言って、クロード様を困らせて、クロード様一人に負担をかけるのは、良くありません。
夫婦は、支え合わないとやっていけません。」
と。

はい?

オレが、わがままを言っていると言っているのかなー?

オレが、オレの意思で引きこもっているとでも言いたいのかなー?

そんなわけ、あるかー!

責任者、呼んでこい!
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